「放し飼い」から「室内飼い」へのチェンジを、一発で成功させる方法
放し飼いしていた猫を完全室内飼いにする場合、猫が外に出たがって、飼い主がノイローゼ状態になる、という話をよく聞きます。
猫はとてもなわばり意識の強い動物ですが、放し飼い状態は、なわばりが外と家の両方にまたがっています。その一部が遮断されてしまうので、家にいても常に外のなわばりが気になり、大きなストレスとなります。ですから、放し飼いの猫を室内飼いに切り替えるのは、かなり難しいのです。
また猫は、一度身につけた習慣についてはかなり頑固な動物。知り合いの保護ボランティアの方に聞いた話ですが、飼育破壊した劣悪な環境から保護した猫が、快適で安全な保護施設から脱走し、元の場所に戻ろうとすることさえあるとか…。ですから、外の世界を知っている放し飼いの猫が、慣れ親しんだ外に出ようとするのは、当然のことといえます。
切り札は「引っ越し」
こうした「自分のなわばり」への未練を断ち切る特効薬となるのが、引っ越しです。動物行動学の専門家によると、これは猫のなわばり感覚に基づいた科学的な方法であり、猫に大きなストレスをかけることなく成功させられる方法なのだとか。コツは、引っ越したら新しい家に着いた時から、絶対に外に出さないこと。
猫は、新しい家に引っ越すと、そこで新しい縄張りを作ろうとします。つまり「なわばり感覚」がリセットされるのだそうです。こうした「なわばりのリセット」は、自然界でもよくあること。なわばりの中にあるいい餌場は、強くて大きな他の猫に狙われることも多く、侵入者に追われた猫はそこから新しいなわばりを作りなおさなければなりません。そのストレスに比べたら、おいしいフードと安全が保障されている家を新しいなわばりに認定することなど、はるかに負荷が少ないことなのです。
そういわれてみれば、わが家の猫は2代続けて保護猫ですが、どちらも全く外に出たがりません。今気が付いたのですが、どちらの猫の時も、ノラ生活から保護してくれた保護主さんの家からわが家はかなり離れているのです。おそらくわが家に引き取られた時点で、過去のなわばりが完全にリセットされたのでしょう。
現代の猫は、「家」にではなく「人」に付く
ではなぜ、昔の人は「犬は人に、猫は家に付く」と言ったのでしょう。これは、昔の飼育環境に原因があります。放し飼いで人間の残飯しか与えられていなかった猫は、家の中のネズミや家の外の虫、鳥などを食べて、生きるために必要なタンパク質を補給していました。いわば家は、猫にとって命をつなぐ大切な「猟場」だったのです。
ですから引っ越したとしても、放し飼いにされていたのであれば、獲物が確実に獲れ、しかも慣れ親しんだ自分のなわばりである元の家に戻ろうとするのは当然のこと。元の家が遠く離れていれば、新たな猟場を探すために遠征し、戻れなくなることもあったでしょう。そこから、「猫は家に付く」という言い伝えが広まったのです。
でも現代では、飼い主のいる家こそが最も確実な「猟場」。獲物を求めて外を何時間も歩きまわるのではなく、ニャーニャーおねだりをするのが現代の室内飼い猫流の「狩り」であり、外に出たがる傾向は少ないといわれています。
ちなみに生まれた時から室内飼いの猫も、窓から外を眺めるのを好みます。でもこれも「外に出たがっている」というよりは、自分のなわばり(=家)に侵入する敵がいないか、見張っているだけなのだとか
文・桑原恵美子(PETomorrow編集部)
参考資料:「猫好きが気になる50の疑問」(加藤由子著・サイエンス・アイ編集部編・ソフトバンク クリエイティブ刊)「オスねこは左利き メス猫は右利き」(加藤由子著/ナツメ社)
構成/inox.
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