焼酎などのお酒を作るには、酒税法に基づいて酒類製造免許を受ける必要があります。つまり私たちは、簡単に焼酎を作ることはできないのです。そのため、その作り方を知っているという人は意外と少ないのではないでしょうか。しかし、焼酎の作り方を知っていれば、より自分の好みに合った焼酎を見つけられるかもしれません。
焼酎を作るには、製造の過程で「蒸留」をする必要があるのですが、この蒸留の方法によって、焼酎の味わいが変わってくるのです。そこで今回は、焼酎の作り方を乙類(単式蒸留焼酎)を中心に紹介してきます。
【参照】国税庁酒類製造免許関係
乙類焼酎の作り方!
それではさっそく乙類焼酎の作り方と、常圧蒸留と減圧蒸留の違いを見ていきましょう。なお、ここで紹介している作り方はあくまで一例です。銘柄や酒類によってその工程は多少異なる可能性があります。Webサイトなどで、作り方を詳しく紹介している酒造もあるため、その違いに注目してみても面白いかもしれません。
1:麹原料となる麦や米などを蒸煮します。
2:麹菌を加えてしばらく寝かせると麹ができます。
3:麹に水と焼酎酵母を入れて発酵させ(一次発酵)、一次もろみを作ります。
4:主原料となる芋や麦などを蒸煮します。
5:一次もろみに水と一緒に主原料を入れて発酵させ(二次発酵)、二次もろみを作ります。
6:単式蒸留器に二次もろみを投入し、1回蒸留します。
7:蒸留が終わった原酒に水を加えるなどして(割水)、アルコール度数を調整します。
8:風味を増すため貯蔵し、熟成させます。
9:多くの銘柄は熟成した原酒をブレンドし、風味を安定させます。
10:最後に瓶や紙パックなどの容器に詰めて完成!
最終的な品質チェックを行った後、酒造から出荷されます。
焼酎の作り方! 常圧蒸留と減圧蒸留の違いは?
乙類焼酎の製造過程である「蒸留」には2つの方式があります。これが「常圧蒸留」と「減圧蒸留」です。
常圧蒸留
二次もろみを蒸留器に入れ、90℃〜100℃ほどに熱してその蒸気を集めます。その蒸気を冷やして液化させる蒸留方法が常圧蒸留です。この方法は日本では500年以上前から行っていたとされる、オーソドックスな方法で、通常の気圧のもと行われます。
常圧蒸留で作った焼酎は、原料がもつ本来の甘味・旨味・香りが濃く残ります。また、熟成効果が高い点も特徴の1つです。
減圧蒸留
一方で減圧蒸留とは、蒸留器の中の気圧を下げて蒸留する方法です。気圧が低いため、40℃〜50℃程度の熱で沸騰でき、その蒸気を集めて冷やして、液化させる方法となっています。
減圧蒸留で作った焼酎は淡麗な味わいが特徴。軽やかな口当たりは飲みやすく、米焼酎や麦焼酎などに多く使われているようです。
濱田酒造の代表的な焼酎の1つ「赤兎馬」。常圧蒸留で作られており、割水には「冠岳」の伏流水が使われています。淡麗かつ重厚な味わいが特徴です。
【参照】薩州 赤兎馬
銘柄別! 焼酎の作り方
ここまでは乙類焼酎の作り方を紹介してきました。ここからは、芋・黒糖・甲類焼酎を作っている各酒造メーカーの焼酎の作り方を見ていきましょう。
芋焼酎・黒霧島でおなじみ! 霧島酒造の焼酎の作り方
芋焼酎の黒霧島で有名な「霧島酒造」の焼酎の作り方は、以下のとおりとなっています。
【参照】霧島酒造 黒霧島
1:手作業で主原料となる芋(黄金千貫)を選別します。
原料の芋を選別している様子
2:麹と霧島裂罅水(キリシマレッカスイ)に酵母菌を加えて酵母を培養し、一次もろみを作ります。
酵母を培養している様子
3:一次もろみに芋蒸機で蒸した芋と霧島裂罅水を混ぜ、二次もろみを作ります。
蒸した芋を連続芋蒸機で冷ましている様子
4:二次もろみを蒸留機に入れ、蒸留して原酒を取り出します。
江夏式横型蒸留機「E-II型」
5:原酒を貯蔵し、熟成させます。
貯蔵に使われているステンスレススチール製のタンク
6:熟成させた原酒をブレンド・または加水し、味を仕上げます。
ブレンドをしている様子
7:最後に瓶・パックに詰めて完成です。
黒糖焼酎はどうやって作られる? 朝日酒造の焼酎の作り方!
続いては朝日酒造の黒糖焼酎の作り方を見ていきましょう。
【参照】朝日酒造 朝日
1:洗米して水に浸した米の水気を切り、蒸した後、適温まで冷まし、種麹を混ぜて米麹を作ります。
2:タンクに水と酵母を入れて、米麹を加えて一次もろみを作ります。
3:黒糖を水に浸して蒸気で溶かし、適温まで冷まします。
4:一次もろみに溶かした黒糖の液体を加え、二次もろみを作ります。
5:発酵した二次もろみを蒸留器に入れて蒸溜します。
6:検定した後、タンクに貯蔵して熟成させます。
7:最後に瓶詰めをし、出荷されます。
【参照】朝日酒造 焼酎ができるまで
甲類焼酎の作り方
乙類焼酎のようなクセがなく、酎ハイやサワーなどのベースに多く使われる甲類焼酎の作り方は、以下のとおりです。
【参照】オエノングループ 合同酒精株式会社 グランブルー20%
1:蜂蜜などの原料に水と酵母を加えて発酵させます。
2:工程1で造った、発酵後のもろみを連続式蒸留器に投入し、連続して蒸留を行います。
3:水を加え度数調整を行い、ブレンドした後、貯蔵します。
4:貯蔵後、瓶などの容器に詰めて完成となります。
【参照】日本蒸留酒酒造組合
※データは2020年8月中旬時点での編集部調べ。
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文/髙見沢 洸