「AMH(anti-Mullerianhormone)」とは、卵巣内の前胞状卵胞までの未熟な卵胞のみから分泌されるホルモンで、卵巣の予備能(卵巣に残っている卵子の目安)評価に最も適していると言われている。血液検査で測定可能だ。
今回、ninpathは564名のユーザーの不妊治療データを用いて、AMH(抗ミュラー管ホルモン)値と治療結果に関するデータ分析をした。
分析の結果、AMH値は妊娠率との関連性は示唆されなかったが、妊娠までの採卵回数とは相関が見られており、不妊治療の計画や状況の把握において重要な指標であることが明らかとなった。
AMH値が低いほど妊娠までの採卵回数は多い傾向に
AMH値と妊娠率
「ninpath」に登録された564名の登録データのうち、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値別には妊娠率(妊娠中・出産済み登録数/全登録数)に相関などの関連性は見られなかった。
特にAMH値が1.0未満でも結果としての妊娠率はAMH値が3.0以上の群との差は見られず、AMHよりも年齢等他の要素の方が妊娠率に影響を与えることを示唆している。
AMH1.0~2.99の群の妊娠率が低いのは、該当者の年齢ボリュームゾーンが30代後半~40代と妊娠率が低下する世代であることと関係があると想定される。
AMH値と妊娠までの平均採卵回数
体外受精・顕微授精を経て妊娠中・出産済みとなった群の妊娠までの平均採卵回数を比較すると、AMH値が低いほど採卵回数が多くなっていた(ただし、刺激法等の違いは考慮していない)。
特にAMH値が1.0未満の場合、妊娠に至るまでの平均採卵回数が約6回と多く、治療負担が大きくなることが想定できる。
上記から、AMH値の把握は治療の計画や状況の把握において重要な指標となり得ることがわかった。平均の移植回数については、未検査(3.8回)、1.0未満(4.8回)、1.0~2.99(3.4回)、3.0~5.99(3.3回)、6.0以上(2.7回)となっている。
今回はデータ群全体同士の比較のため参考程度の指標となるが、採卵回数の各中央値は、未検査(2回)、1.0未満(6回)、1.0~2.99(1回)、3.0~5.99(2回)、6.0以上(2回)となっている。
AMH値の分布
年齢が高いほどAMH値が低いという緩やかな相関は見られるものの、個人差が大きいことが示されている。
妊娠中・出産済みを表す赤の●を見ると、AMH値による分布の偏りは見られず、ややグラフ左側に集中していることから女性の治療開始年齢の重要性を示す結果と考えられる。
AMH値と最終治療歴(妊娠中・出産済みの群)
AMH値が低いほど体外受精・顕微授精での妊娠が多い傾向にあった。特にAMH値が1.0未満の群で妊娠に至った登録データは、100%が体外受精・顕微授精の高度不妊治療を経ていた(ただし、AMH値が1.0未満だと必ず高度不妊治療が必要になることを示すものではございません)
AMH検査の受診率
前述の通り、AMH値が不妊治療においてひとつの重要な指標となり得ることが示唆されているものの、実際の検査の受診率は全体でおよそ65%にとどまった。特にタイミング法や不妊検査の段階での受診率は40%と、検査を受けていない人の方が多いという結果だった。
分析対象データ概要
2020年5月21日時点「ninpath」登録データ
サンプル数:564
サンプル数内訳(治療ステータス):妊娠・出産済み(170)、治療中(306)、治療終了・お休み中(88)
サンプル数内訳(治療開始年齢):30歳以下(240)、31~34歳(158)、35~38歳(109)、39~42歳(50)、43歳以上(7)
サンプル数内訳(AMH値)未検査(198)、1.0未満(65)、1.0~2.99(146)、3.0~5.99(101)、6.0以上(54)
構成/ino