■茂木雅世のお茶でchill out!
「東京紅茶」「東京緑茶」
初めてその名前を聞いた時、東京でもお茶が作られているのかと驚いた。
更に、飲んでみて、驚いた。
紅茶はインドやスリランカなどの紅茶とは、全く違うしっとりとした美しさと華やかさを。
緑茶は飲みやすく、どこまでも爽やかでクールな雰囲気をまとっていた。
どこか、世界中の人が想像する「東京」の雰囲気にぴったりな気がして、すっかり心を奪われた。
東京都東大和市。
狭山丘陵の南側に位置するこの地で、昭和24年に創業した「木下園製茶工場」の三代目木下修一氏が東京紅茶・東京緑茶の生みの親だ。
聞けば、以前は農家も多かった土地だというが、近年、急速に都市化が進み、市内でお茶を作る農家は9件もあったが3件までに減ってしまったという。
しかし、その一方で、木下さんのつくる「東京産のお茶」はここのところ、様々な形で目にする。
2018年には、国内で製茶された紅茶の味を競う「国産紅茶グランプリ」でプロダクツ部門の金賞を受賞。2015、16年と名だたる産地の紅茶の中でも高い評価を得た。
様々な企業からのお声掛けもあり、コラボレーション商品も次々に販売。
東京・町田の牧場とコラボし、東京緑茶や紅茶を使用した「東京ジェラート」
東京紅茶入りの「東京パンケーキミックス」
東京緑茶を使用した「東京コーラ緑茶」etc…
2020年2月には「東京緑茶」(※期間限定・地域限定)のペットボトルのお茶も発売されている。
こうした新しい試みを次々に仕掛け続けていることについて木下さんに伺うと
「楽しくやれないと意味がないと感じているんです」と語る。
周りが住宅地の為、肥料や消毒のタイミングなどにも気を遣うなど都市型農業だからこその苦労もある。
収穫量がものすごくたくさんあるというわけでもない。
だからこそ木下さんは楽しくお茶をつくること、そして地域の人達に買って頂き、地産品で喜んでもらうことを大切にしているという。
「東京ジェラートも値段の設定を色々考えたが、子供たちが買えない値段になっちゃうのはちょっと…って思って。東京緑茶や東京紅茶を知ってもらう宣伝の一つになればと、思い切ったんです」
ちなみに、私は東京緑茶・東京紅茶に続き、「東京コーラ緑茶」にもドはまりした。
いわゆるご当地コーラのようなものなのだが、冷やして飲むととてもおいしい。
グリーンの色味がとても美しいことに加え、駄菓子屋さんで飲んだような、どこか懐かしい甘さと微炭酸。
「緑茶」と思って飲むと、甘いので違和感を抱く人もいるかもしれないが、疲れた時などに一気飲みしたい童心に帰ることができる味わいなのだ。
「東京にも農業があるのだということを知ってもらいたいんですよ」
その言葉を聞いた時、木下さんにとって、“楽しむ”ということはきっと自らの作るお茶と向上心を持って向き合いながら、その可能性を信じて挑戦し続けることなのだろうと感じた。
先代から受け継いだ計3000坪程の茶畑を守りながら、東京という地で日々、進化し続ける木下さん。
木下園のパンフレットに書かれた「東京も実は、延々と続く隠れたお茶処」の一文を愛でながら、東京緑茶・東京紅茶を飲む夜はしばらく続きそうだ。
木下園→https://tokyotea.official.ec/
文/茂木雅世(もき まさよ)
お茶好きが高じて、2009年仕事を辞めてお茶の世界へ。2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまい始め、現在はお茶にまつわるモノ・コトの企画・商品プロデュース・コラム執筆やメディア出演などの活動を行っている。
ゆるっとお茶を楽しもうが合言葉の“ゆる煎茶部”代表。
FMyokohama「NIPPON CHA茶CHA」では最新のお茶情報を毎週発信中。
煎茶道 東阿部流師範/日本茶アーティスト/ティーエッセイスト
オフィシャルサイト:https://ocharock.amebaownd.com/
Twitter:https://twitter.com/ocharock