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乗ってわかったトヨタの新型クロスオーバー「ヤリスクロス」が売れまくっている理由

2020.09.23

今、大注目、売れに売れているトヨタ最新のクロスオーバーモデルがヤリスクロスだ。これまた超人気、2020年7-8月期に乗用車販売台数No.1の座をライズから奪ったコンパクトカー、ヤリスをベースに仕立てられたヤリスクロスだが、ヤリスのライバルでもあるフィットにあるフィットクロスターとは大きく異なるキャラクターの持ち主だった。

というのも、ヤリスとパワーユニットやCVT、ホイールベースなどを共用するものの、リヤオーバーハングを延長し、アウトドアライフなどで不可欠な大きな荷物を積載可能とする大容量かつ使い勝手のいい荷室を実現。さらに最低天井高170mmとともに、けっこう本格的な4WD機能さえ備えているのである。つまり、ヤリスクロスのライバルはホンダで言えば、かつてのフィットをベースにSUV化されたヴェゼル、日産ではキックス、マツダならCX-30あたりのクロスオーバーモデルになる。しかも、ライズとC-HRの中間となるポジショニングに位置付けられ、価格も必然的にCH-Rよりも安くなるため、ライバルよりグッとリーズナブルな価格設定となっている。ゆえに、この空前のクロスオーバーブーム、SUVブームの中、価格×新鮮度の魅力もあって、売れないわけがない。

ヤリスクロスのボディサイズは全長4180×全幅1765×全高1590mm、ホイールベース2560mm。つまり、全長、全幅は旧デミオベースのCX-3、キックスに近く、1765mmの全幅によって3ナンバーモデルとなる(ヤリスは全幅1695mmで5ナンバー)。

パッケージ的には前席優先のCX-3に近い。後席の居住スペースは身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後に座ると、頭上に120mm、膝周りに115mmというスペースだ。これはCH-R、ヴェゼルの膝周り空間約250mm!!と比べるとかなり狭く感じるものの、シート位置がフロアから高めにセットされ(ヒール段差380mm/ヤリス比で20mm高い)、アップライトかつ自然な姿勢で座ることができ、前方見通し性に優れ、前席下の足入れスペースも十分にあり、何よりもシートクッション長が約500mmと前席並みにたっぷりあるため、ゆったりと座れ、窮屈感を感じにくいというメリットを生み出している。

クロスオーバーモデルはアウトドア、キャンプなどにも使われるケースが多いはずだ。ラゲッジスペースを見てみると、ヤリスクロスは実測で6:4分割&脱着が可能かつ、超便利な2段デッキボード下位置で奥行790mm、幅995mm、最低天井高745mm。ちなみにヴェゼルは奥行790mm、幅1000mm、最低天井高900mmと、全高が高いぶん、高さ方向には余裕があるものの、フロアの広さはほぼ同一。

ヤリスクロスの場合、6:4分割でアレンジできる2段デッキボードを下段にセットすれば、大型スーツケース2個、ゴルフバッグ2個を、後方視界を犠牲にせず、積みこめるのだから、コンパクトクロスオーバーモデルとしての積載性は優秀と言える。ただ、大きな荷物の積載時には、ラゲッジフロア奥にある2段デッキボードの上段を支えるパーツの出っ張り分、奥行方向が制限されてしまうのが惜しい。

そんなヤリスクロスに搭載されるパワーユニットは、ヤリス同様、3気筒の1.5Lガソリンエンジン、120ps、14.8kg-m、WLTCモード最高燃費20.2km/L、およびEVモード付の1.5Lエンジン+2モーターのHV、91ps、12.2kg-m+フロントモーター80ps、14.4kg-m、リヤモーター5.3ps、5.3kg-m、WLTCモード最高燃費30.8km/Lの2タイプ+CVT。ヴェゼルHVのWLTCモード最高燃費が21.0km/Lだから、燃費性能では圧勝と言っていいだろう。ACCの渋滞追従を可能にする電子パーキングブレーキ、一時停止時にブレーキを踏まずに済むオートブレーキホールド機能が付く点にも注目である。

ヤリスクロスはガソリン車の4WD、HVの2WDおよび4WDに試乗したが、まず、ガソリン車は軽快感ある走り、全高、着座位置の高さを感じさせない水平感覚に徹したカーブ、レーンチェンジでのスムーズさ極まる走行性能が好ましかった。一方、動力性能は3気筒感こそほぼないものの、かなり穏やかで、勢い、アクセルペダルを深く踏み込み、エンジン回転が4000回転を超えると、乾いたサウンドではあるけれど、車内にエンジン音が充満。元気、と言えば聞こえはいいが、活発に走ろうとすれば、けっこううるさい。元気に走ろうとドライブモードをパワーモードにセットすれば、確かに元気になり、エンジンレスポンスも高まるものの、うるささは助長されてしまう。そしてG、Zグレードに奢られる18インチタイヤによる乗り心地はけっこう硬め。段差、路面の継ぎ目の乗り越えで、それなりのショックに見舞われた。

クロスオーバーモデルということで、HVの4WDにはけっこう期待したが、出足のEV走行によるスムーズさ、モーターアシストによるトルキーな動力性能の余裕、ガソリン車に対して50kgの重量増がもたらす、ガソリン車とは別格の落ち着き感ある乗り心地の良さには感心したものの、電気式4WD=E-FOURのリヤ部分が発しているであろうノイズによるザワついた走行感覚、エンジンを高回転まで回したときの、ガソリン車に近い騒々しさがちょっと気になった。

で、結論から言えば、ヤリスクロスの真打ちというべきグレードと断言したいのが、HVの2WD(G、Zグレード)である。出足のEV走行によるスムーズさ、モーターアシストによるトルキーな動力性能の余裕、大径18インチタイヤを履きながら、重量増がもたらすガソリン車とは別格の角が丸められた乗り心地の良さ・・・はHV 4WDと同質ながら、より静かでHV感が強く、意外なことに、エンジンを高回転まで回しても、それほどうるささを感じないのである。約120km/hまで可能だというEV走行にしても、首都高速での80km/h巡航でさえねばり強いEV=モーター走行を確認。市街地ではさらにEV走行の機会が増えるのである。

ヤリスクロスはそれ以外にもHVを選ぶメリットは絶大だ。何しろ、トヨタの2モーターHVだから、AC100V/1500Wコンセントが、オプションとはなるものの、用意されている(プリウスは最近全車標準装備に)。この機能はアウトドアなどで1500Wまでの家電品が使えるだけでなく、非常給電システムを使うことで、一般家庭の約5日分の電力を供給することが可能になる(ガソリン満タン、消費電力400W時)。つまり、災害時にも大いなる威力を発揮してくれるというわけだ。これは1モーターのヴェゼル、ガソリン&クリーンディーゼルのCX-3ではかなわないことだ。

ちなみに、悪路走破性を重視するなら、4WDでもHVの電気式4WDよりもガソリン車の4WDのほうが有利であることは間違いない。C-HRやライズよりも悪路に向いているのは、スノーモードのほか、マルチテレインセレクトのMUD&SAND、ROCK&DIRTが加わるからである。

とはいえ、特設コースで滑りやすい路面を再現したローラー、バンク、モーグル走行を経験すれば、HVのE-FOURでもなかなかの走破力を見せつけてくれたことも事実。一般ユーザーならHVのE-FOURでも、ちょっとしたオフロードや雪道を一段と安心して走れることは間違いないところだ。

さて、ヤリスクロスのベストグレードだが、上記のレポートからも分かるように、HVの2WDがいい感じである。開発陣に「自分で買うならどのグレード?」と聞いても、多くは同様の答えが返ってきた。HVにはX、G、Zの3グレードが用意されるのだが、全車、AC100V/1500Wコンセント(44000円)がオプションなのはともかく、ポイントは、法人用、レンタカー用と思われるX Bパッケージを除く全グレードにACCを含むトヨタセーフティセンス=先進運転支援機能が備わることを踏まえ(DCM 専用通信機は全車標準、ヘルプネット=SOSコールボタンも用意)、それに含まれない、このクラスのコンパクトカーではめずらしい、しかしぜひ付けておきたい、レーンチェンジなどでの安心・安全に直結するブラインドスポットモニター(49500円)がオプションで付けられるのは、G、Zグレードに限られるという点。また、ヤリスクロスのデザインを際立たせる、魅力的な2トーンカラーもXグレードでは選べない。

よって、個人的には、主に都市部での用途なら、HVのGグレード2WD(239.4万円)にフルLEDヘッドランプをオプション装着(71500円)するのが、シティクロスオーバーモデルとしてなかなかの選択だと考える。Zグレードには運転席パワーシートも装備されるが、通常、前後スライド、リクライニング、ハイトアジャスター用の3個のモーターを用いるのに対して、コストダウンのため、1モーターでクラッチによって動作を切り替えるため、スイッチの配置が特殊で(前後スライドはおにぎり型スイッチによる)、作動音がグイーンとうるさく、微妙。なので不要としたいのだ。

ボディカラーはブラックマイカ×ベージュの2トーンカラーが、シックかつアウトドアにも似合いそうで、お気に入りである。

トヨタ・ヤリスクロス
https://toyota.jp/yariscross/

文/青山尚暉

モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。

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