■連載/文具ソムリエール菅 未里の「誘惑文具」
Q:手に合うボールペンがなく、ずっと悩んでいます。いいペンはないでしょうか。
A:今回のご質問に限らず、筆記具と手との相性は、非常に難しい問題です。「手が小さい人には細軸のペンを……」といった一般的なアドバイスはできるのですが、手の大きさや形、好み、ペンを使うシチュエーションは人それぞれですから、結局のところご自分で試していただくしかないのです。
そんなわけで、私もずっと「手とペンの相性問題」には悩んできたわけですが、昨年、画期的なアイテムが登場しました。ゼブラの「マイティグリップ」です。
これはシャープペンなのですが、グリップ部分がテープとして別に添えられていて、持ち主の好みに合わせて巻けるのが特徴です。
テープはウェットとさらっとしたドライとの二種類ありますから好きな方を選べますし、何よりも巻き方を好みに合わせて変えられるのが非常に大きい。こんな感じです。
太軸が好きな方はテープを二枚(あるいは三枚)重ねて巻けば太くなりますし、細いのが好みの方は一枚だけがいいでしょう。それだけではなく、たとえばペン先のほうを太くして根元を細くする、といった細かいチューニングもできるのです。
さらに、テープは三色用意されているので(加えて限定色も2色あります)、ブラックとピンクの両方を使ってペン軸を彩ることもできるのです。
さて、質問者さんはボールペンが欲しいのになぜシャープペンの話を……と思われたかもしれませんが、ここからが本題です。
実は、このマイティグリップのグリップバンド、単体でも発売されているのです。つまり、マイティグリップに限らず、お手持ちのペンの軸に巻くことで握り心地を自由自在に変えられるというわけです。グリップは両端が両面テープになっていますから、ちょっと不格好にはなりますが、一般的なペン軸に巻くことは可能です。私も試しました。
このグリップバンドはテニスラケットに巻くテープを作っているメーカーが製作しているそうですが、テニスプレイヤーが握り心地をテープで調整するように、ペンの握り心地を自分好みに変えられる時代が来たわけです。
もちろんゼブラはマイティグリップ以外のペンに巻くことを想定していないので自己責任にはなってしまいますが、大きな問題はないでしょう。筆記具に付きまとってきた「手との相性問題」の突破口となり得る、実に画期的な商品ではないでしょうか。
文/菅未里
構成/佐藤喬