オリンパス「PEN F」のオールドレンズを富士フイルムのミラーレス一眼「X-E3」に装着してわかった絶妙な描写力
2020.09.21■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
ハーフサイズ専用の交換レンズを発掘!
銀塩カメラ時代に異彩を放っていた、小型軽量の一眼レフシステムがあった。それが世界でも類を見ないハーフサイズの一眼レフ「OLYMPUS PEN F」である。35mmフルサイズフィルムを半分だけ使って2倍の撮影枚数を稼ぎ、フィルム代を節約する。それがハーフサイズカメラだ。普通に構えると縦位置に撮れる。ヨコ位置に撮るにはタテに構えるのだ。有名モデルに「OLYMPUS PEN」、RICOH「AUTO HALF」などがある。
これを発展させて一眼レフにしたのが「OLYMPUS PEN F」で、18本もの交換レンズが発売された。このレンズはマウントアダプターを使えばミラーレスで活用できる。本家本元のOLYMPUSのミラーレスを使ってもいいのだが、焦点距離が2倍以上になってしまうため、今回はFUJIFILM「X-E3」で撮影した。
PEN Fのレンズはミラーレスと相性抜群
それではPEN F用の交換レンズは、どこで手に入れればいいのか。日本なら「ヤフオク!」あるいは中古カメラ販売店、海外でもいいなら「eBay」がオススメだ。今回、使ったレンズは「メルカリ」で不動品のPEN Fに付属していた交換レンズ3本セットを使用。これは送料込みで1万5000円のバーゲンプライスだったのでレンズが目的で購入した。「eBay」なら38mmF1.8など、安いレンズは約7000円から、一般的なものは1万円台で見つけられる。超広角などレアなモデルは3万円以上で取引されている。かなり古いレンズなので外見よりもレンズにカビやゴミの少ないものを選びたい。どのレンズも金属をたっぷり使っているので存在感は抜群だ。オールドレンズ入門にも最適で小さいので収納場所もとらない。
撮影に使用したマイクロフォーサーズ用とFUJIFILM Xマウント用のマウントアダプタ。
OLYMPUS「OM-D E-M1」に装着してもバランスはいい。
F.Zuiko AutoS 38mmF1.8
開放絞り値がF1.8と明るいが、約7000円から出品されているハイコスパな単焦点レンズ。絞りリングがレンズ先端にあり使いやすい。絞り開放では逆光に弱く、全体的にフワッとした柔らかい描写、場合によっては霞がかかったように写る。色も薄くハイキーな印象を受ける。絞り込むと色ノリがよくなり、解像力も向上した。X-E3に装着した時の焦点距離は55mm相当(35mm換算)で標準レンズとして使えそうだ。
今回はFUJIFILM「X-E3」に装着して絞り優先AEモードで撮影した。
絞り開放ではオールドレンズらしい味わいを発揮。淡い色合いで柔らかい描写、そしてグルグルボケに近いボケ味が得られた。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto S 38mm F1.8」FUJIFILM X-E3 1/2900sec、F1.8、ISO200
絞り込むと現代レンズにも負けないシャープな描写に変身する。背景のボケも自然だ。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto S 38mm F1.8」FUJIFILM X-E3 1/1100sec、F5.6、ISO200
街角で見かけたヒンドゥー教の神様ガネーシャ。日向と日陰でコントラストの強い被写体だが、暗部がつぶれずに再現された。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto S 38mm F1.8」FUJIFILM X-E3 1/200sec、F5.6、ISO200
オールドレンズらしく、逆光下では虹のようなフレアが見られた。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto S 38mm F1.8」FUJIFILM X-E3 1/4400sec、F2、ISO200
F.Zuiko AutoT 100mmF3.5
望遠レンズと言えばズーンと太いのが一般的だが、100mmF3.5は細身で短め。焦点距離は144mm相当(35mm換算)ぐらいに感じる。開放からシャープで絞り込むとさらにシャープになるが、現代のレンズと比較すれば、柔らかい描写と言える。ポートレートを撮りたくなるレンズだ。
スリムなレンズが新鮮に見える。このレンズも絞りリングがレンズ先端近くにある。
工事現場にあったドライフラワー。鮮やかな色が違和感を際出せていた。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto T 100mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/550sec、F8、ISO200
絞り開放で西武新宿線の線路際を撮る。独特なボケ味が楽しめる。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto T 100mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/2000sec、F3.5、ISO200
衛星放送のパラボラアンテナがズラリと並んだマンションの屋上。スカパーの文字が鮮明に読めた。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto T 100mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/4700sec、F5.6、ISO200
F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5
60年代には珍しかったズームレンズ。ズーム比は2倍もないがかなり大型なレンズだ。全て金属製なのでズシリとくる存在感がある。70mm~130mm相当(35mm換算)なので望遠側が物足りない感じは否めない。今回撮影した3本はもともとセット販売されてたようなので、38mmと100mmの間を埋めるズームレンズという役割を果たしていたと考えられる。ズーム全域で開放絞り値はF3.5固定。撮影した3本の中で最もシャープネスが高いレンズという印象を受けた。ボケ味も良く、歪みも少なく、オールドレンズということを忘れさせてくれるポテンシャルを持ったズームレンズと言える。
スリムなズームレンズだが鏡胴は金属製で存在感は大きい。絞りリングはレンズ根元にある。ズーミングしてもレンズの全長は変わらない。
広角端で撮影、とは言え70mm相当なので背景はそれなりにボケる。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/300sec、F3.5、ISO200
望遠端の130mm相当で撮影すると、被写界深度はかなり短くなり大きなボケ味が得られる。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/400sec、F3.5、ISO200
空き地にうち捨てられた自転車とソファ。開放からシャープな描写である。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/400sec、F3.5、ISO200
クラシッククロームで撮影した郵便箱。渋い色合いを見せてくれた。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/480sec、F3.5、ISO200
連写で撮影した西武10000系特急レッドアロー小江戸。MFでも発車直後ならピントが追える。
OLYMPUS「F.Zuiko Auto-Zoom 50-90mm F3.5」FUJIFILM X-E3 1/180sec、F8、ISO200
写真・文/ゴン川野