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米焼酎と日本酒の製法の違いとは?覚えておきたい蒸留酒と醸造酒の作り方

2024.05.23

昔から私たちに愛されてきたお酒「米焼酎」と「日本酒」は、どちらもお米から作られるお酒です。同じ原料から作られる2つのお酒ですが、この2つはそれぞれ「蒸留酒」と「醸造酒」と呼ばれる、別の種類のお酒なのです。今回はそんな2種類のお酒に注目し、その違いを見ていきましょう。

お米を使う米焼酎と日本酒の違い

注がれる日本酒

それでは早速、米焼酎と日本酒の違いを見ていきましょう。2つのお酒の大きな違いは「蒸留酒」か「醸造酒」か、という点に尽きますが、それだけではわかりにくいかもしれないので、詳しく見ていきます。

国税庁によると、焼酎は以下のように規定されています。

【焼酎に関するもの】
酒税法では、焼酎は次のように定められています。
アルコール含有物を蒸留した酒類のうち、
1 連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分36度未満、
2 単式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分45度以下
のもので、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、ジンなどに該当しないもの。
また、1に当たるものを連続式蒸留焼酎、2に当たるものを単式蒸留焼酎に分けています。

米焼酎については次のように規定されています。

【米焼酎】(こめしょうちゅう)
米を主原料とした焼酎で、熊本県人吉地方の球磨焼酎をはじめ各地で製造されています。減圧蒸留による香味が穏やかなものから常圧蒸留による香味が豊かなものまでいろいろなタイプがあります。

続いては日本酒についてです。

【地理的表示「日本酒」生産基準】
「日本酒」は、米、米こうじや水を主な原料として発酵させて、こしたものであり、その原料と製法は、「清酒」として酒税法(昭和28年法律第6号)により規定されています。「清酒」のうち、米と米こうじに国産米を使い、日本国内で製造したものを「日本酒」と呼んでいます。

しかしこれだけでは明確な違いはわかりにくいかもしれないので、続いてはそれぞれの製造方法を見ていきましょう。

米焼酎の作り方「高橋酒造」

それではまず、白岳などの米焼酎で有名な、高橋酒造が紹介している「本格米焼酎ができるまで」を例に米焼酎の作り方を見ていきましょう。

【参照】白岳

1:精米したお米を洗い、水を浸透させて蒸す。

2:蒸したお米に麹菌を入れて繁殖させ、麹をつくる。
3:できた麹に酵母と水を入れて、約6日間熟成させて一次もろみをつくる。
4:一次もろみへ蒸したお米と水を入れて、約15日間発酵させ、二次もろみをつくる。

5:二次もろみを減圧蒸留機で蒸留し、原酒ができる。
6:原酒をタンクや甕、樽などで約3か月貯蔵しガスを抜く。
7:貯蔵した原酒をいくつかの焼酎や水とブレンドする。

以上が高橋酒造の米焼酎の作り方になります。ちなみに行程4で蒸したお米の代わりに芋を加えれば「芋焼酎」に。麦を入れれば「麦焼酎」となるのです。

【参照】高橋酒造 本格米焼酎ができるまで

日本酒の作り方「菊正宗酒造」

続いては、菊正宗でおなじみの「菊正宗酒造」から、日本酒の作り方を確認してみましょう。

【参照】菊正宗 特撰

1:精米したお米を洗米し、水に浸す(浸漬)。
2:浸漬したお米を蒸気で蒸し、麹用・酒母用・掛米用と分け、それぞれ適温まで冷ます。
3:麹用の蒸したお米に麹菌を混ぜ、繁殖させて麹を作る。
4:酒母用の蒸したお米と麹を用いて酵母を培養し、酒母を作る。
5:酒母に麹、蒸したお米、兵庫県西宮市の西宮神社南東側一帯から湧き出る宮水を3回に分けて加え、もろみを作る
6:熟成したもろみを圧搾機に投入し、液体(新酒)と固形(酒粕)に分け、さらに不溶性のタンパク質やデンプンを沈殿させる(おり引き)。
7:清酒をろ過し、雑菌や残存酵素を壊すため約60℃~65℃で加熱処理(火入れ)した後、タンクで約半年間熟成させる。

以上が日本酒の作り方となっています。ちなみに行程2で分けた掛米用のお米とは、直接もろみに使われるお米のことを指します。

【参照】菊正宗酒造 日本酒の作り方

米焼酎と日本酒の作り方! 大きな違いは「蒸留」

2つの酒造でつくられている米焼酎と日本酒の違いを見てきましたが、基本的な流れはいずれもお米から麹を作り、酵母や水を加えて発酵させるというものでした。大きな違いはその後にあります。

日本酒はアルコール発酵によって得られた新酒をろ過し、加熱処理を加えた後に貯蔵するという流れでしたが、対して米焼酎は二次もろみを「蒸留機」に入れて蒸留させ、その後に貯蔵したりブレンドをするという流れでした。

【参照】高橋酒造 本格米焼酎ができるまで

つまり、米焼酎と日本酒の大きな違いは「蒸留」にあるのです。
そのため日本酒は、穀物などをアルコール発酵させたビールやワインと同じ「醸造酒」にカテゴライズされ、焼酎は醸造酒を蒸留させてつくるウオツカやウイスキーなどと同じ「蒸留酒」に分けられるのです。

なお、ここで紹介した米焼酎と日本酒の作り方はあくまで一例です。蔵元によっては同じ米焼酎や日本酒でも製造方法が異なる場合があるため、気になる人はぜひ、お気に入りの銘柄の作り方を調べて、製造方法を比べてみてくださいね。

米焼酎と日本酒のアルコール度数はどちらが高い?

基本的に米焼酎に限らず、焼酎と日本酒を比較した場合、焼酎の方がアルコール度数は高くなります。というのも、焼酎は製造の行程で「蒸留」を行っており、これによってアルコールの度数が高くなっているためです。

銘柄によって異なりますが、だいたい焼酎(単式蒸留焼酎)のアルコール度数は20%〜25%で、日本酒は15%前後となっているようです。ただし、日本酒はそのまま飲むことが多いのに対し、焼酎は水や氷などで割って飲むことが多いため、どちらの方が酔いやすいかなどは楽しみ方によって変わってきます。

【参照】国税庁 焼酎に関するもの
地理的表示「日本酒」生産基準
日本酒(清酒)に関するもの
地理的表示「日本酒」生産基準

製造工程の違いにより、味わいにもそれぞれの個性が!

製造工程が異なる米焼酎と日本酒。味わいにもそれぞれ違った個性があります。

米焼酎の魅力は、蒸留酒ならではの濃厚で力強い味わいにあります。口当たりがドライで、喉越しが良い銘柄が多いのも特徴です。一方、日本酒の魅力は醸造酒らしい軽快でフルーティーな味わいにあります。口当たりはまろやかで、舌触りがなめらかなのが特徴です。

このように、米焼酎と日本酒は、原料は同じでも製法の違いによる味わいの違いがあります。それぞれの特徴を意識しながら飲むことで、これまでよりも楽しみ方が広がるかもしれません。

※データは2020年8月中旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※商品・サービスのご利用はあくまで自己責任にてお願いします。

文/髙見沢 洸

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