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地下鉄!?登山列車!?路面電車!?有人なのに自動運転!?トリビアだらけの変わった電車「京阪京津線800系」の魅力

2020.09.18

Go To トラベルキャンペーンもスタートからしばらく経ち、少しずつだが観光地にも人の姿が戻ってきた。秋といえば、紅葉! 紅葉といえばやっぱり京都?

今回は定番な京都の魅力はいったん置いておいて、京都とお隣、滋賀県にちょっと変わった「電車」が走っているので、みなさんにご紹介したいと思います……。

今回の主人公は京阪京津線800系だ!

バラエティー豊かな京阪電車!

大阪、淀屋橋と京都の出町柳を結ぶ京阪電車。どちらもJRの大阪駅、京都駅には接続してはいないが、大阪、京都側ともに街の中心地にアクセスしやすい駅が多く、淀屋橋は地下鉄御堂筋線、出町柳は叡山電車に接続しており、ビジネス、観光地への足としても便利だ。

さらに主に特急で使用される列車の一部には、追加料金なしで利用できる2階建て車両にワンコイン程度の追加料金で特急列車のようなリクライニングシートが並ぶ指定席「プレミアムカー」を連結していたりと、サービス面でも非常に充実している鉄道だ。

京阪電車というとこの淀屋橋~出町柳を走る京阪本線のイメージが強いが、実は滋賀県にも京阪電車は走っている。それが今回紹介したい京津線だ!

京津線は京阪本線とは直接接続しておらず、御陵駅から京都市営地下鉄東西線に接続している。

ちなみにこの「御陵駅」は難読駅としても有名で、思わず「ごりょう」と読みたくなるが、正しい読み方は「みささぎ」。地下鉄東西線とは直通運転も行っており、太秦天神川駅まで乗り換えなしで行ける。

京津線の旅は地下鉄の難読駅から始まるぞ

一方、滋賀県側はびわ湖浜大津駅が終点で、その駅名のとおり琵琶湖のすぐそばに駅がある。

終点びわ湖浜大津駅のすぐそばには琵琶湖が!

地下鉄? 登山列車? 路面電車?

さて、この京津線。短い路線だが鉄道ファン的には見どころ満載の路線なのだ。京津線で活躍している車両は「800系」という列車で、一般的な列車よりはひと回り小さいのが特徴。

でもこの800系、実はものすごい車両なのだ。

というのも、京津線は途中、京都と滋賀を隔てている「逢坂山」を超えるため、鉄道としては非常にキツイ急坂を上る。

奥につづく電柱や横の道を見ると京津線の急坂がよくわかる

さらに沿線は急カーブが続き、びわ湖浜大津駅付近では「併用軌道」と呼ばれる路面電車のような区間を走る。

路面電車のような光景が見られるびわ湖浜大津駅付近。車両はほぼ直角に曲がって駅から出てくる。

その一方で、乗り入れ先の地下鉄線では、運転士さんが乗務しているのに自動運転で高速走行を行うという、お互いに相反するような路線状況になっているのが特徴だ。

その全てに対応するため、800系にはいろいろな装備があるわけだが、「地下鉄、急カーブ、急坂、路面電車」とここまで多彩な路線を走るのは、全国的に見てもこの京津線だけだ。

必見! 傾かない駅のベンチ!

JR京都駅から京津線へアクセスするなら京都市営地下鉄に乗り込もう。地下鉄京都駅から「国際会館行き」に乗って烏丸御池へ。その後東西線ホームで、「びわ湖浜大津行き」の列車を待てばOKだ。

交通系ICカードも各種利用可能。御陵駅を出ると地下鉄東西線と分岐していよいよ京津線に入る。

しばらくは軽快に走っていくが、それでもすでにきつめの上り坂が始まっている。

追分駅を過ぎるといよいよ逢坂山越えが始まる。この付近は今も昔も交通の要所で、現在では京津線のほか、国道1号線、名神高速道路が並んで通っている。

そんな山道の途中にある「大谷駅」でちょっと途中下車してみよう。ここにはある変わったベンチがホーム上に設置されている。列車が出発したら反対側のホームのベンチをじっと見てみてほしい……

坂の途中にある大谷駅。奥のほうがやや高い。

かなーり不思議な感覚になる「座面が傾かないベンチ」

写真が傾いているのか駅が傾いているのか、ちょっと不思議な光景に出会う。大谷駅は急坂の途中にあるため、ホーム自体もやや坂道になっている。そこに普通のベンチを設置してしまうと、座り心地がよろしくないということで左右で脚の長さを変えて座面が水平になるように工夫されているのだ!

大谷駅を降りるとお昼時ともなればどこからともなく香ばしい匂いが漂ってくる。周囲にはうなぎの名店があり、大きな卵焼きとともにうなぎがのった独特のスタイルのうな丼が味わえる。もう少し先には「逢坂山関址」があり、往事の光景に思いを巡らせることができる。

大谷駅の周囲にはうなぎの名店が!

レールに散水? そのワケは?

京津線の旅を続けよう。

大谷駅からしばらく進むとトンネルに入るが、この辺りがちょうど上り坂のピーク。そこを過ぎると琵琶湖畔を目指して一気に山を駆け降りる。

大谷駅を出てトンネルをくぐればここからは琵琶湖めがけてダウンヒル!

が、山道ということもあり、急カーブが続く。この区間は急坂、急カーブと鉄道車両にとっては非常につらいシチュエーションが続くが、専用に設計された800系は難なく走り抜けていく。

車両の端も急カーブで干渉しないように少し欠けたような形をしている。

途中カーブの手前で線路に水を撒いている箇所がある。これはレールと車輪の摩擦を軽減する目的で撒かれている。鉄道路線によってはグリスを塗布している場所も多いが、京津線は急坂があることから水が用いられている。

急カーブの摩擦対策として設置されている散水スプリンクラー。よく見るとスプリンクラー部分だけ草がよく育っていた

上栄町駅を過ぎると最後に登場するのが路面電車のような「併用軌道区間」。周囲の車に注意しながらびわ湖浜大津駅を目指して最後の坂を下っていく。

自動車と一緒に走ってラストスパート。この区間もなかなかの坂だ。

終点びわ湖浜大津駅では石山坂本線と接続しており、こちらの路線も多種多様なカラーリングの車両が走っていて楽しい路線だ。

いろいろなカラーが走っている石山坂本線も楽しいぞ!

こんなユニークな京津線だが、鉄道ファンとして楽しめるだけでなく、京都市営地下鉄を含めて沿線に点在する観光地へのアクセスも便利。

いろいろと周ってみるのではあれば「京都・びわ湖チケット」がお得で便利だ。京都市営地下鉄の全線、京阪京津線・石山坂本線全線が一日乗り放題だ。価格は大人1300円で購入可能箇所はこちらで確認しよう。京都駅からびわ湖浜大津駅まで乗り通すと片道でも530円なので、2回程度途中下車すれば往復するだけも元が取れる計算だ。

また、関東圏からなど「そろそろ遠出したいな……」と考えている人もきっと多いはず。関東から京都に向かうなら東海道新幹線を利用すれば早くて快適だが、7月にデビューした最新鋭のN700Sも9月中には6編成が導入される見込みで最近では乗車チャンスもぐぐっと増えた。N700Sで運転される列車は日替わりで、当日東海道新幹線各駅またはJR東海テレフォンセンター(050-3772-3910)で確認しよう。

そして、今回の京津線の旅のような王道の京都・志賀観光ではなく、ちょこっと「ずらした旅」が現在、JR東海の特設サイト「#ずらし旅」で公開中!こちらは旅情報の公開だけでなく、自身の「ずらし旅」のアイディアも募集中なのでぜひ応募してみよう。(募集期間9月25日~10月25日)

新しいスタイルで楽しむマニアック? であなただけの旅をさがしてみよう。

取材・文/村上悠太

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