人類が生き延びることができたのは犬がいたから?
ペットが安心して眠れるのは、安心できる環境の証だから…?
犬や猫が、警戒心ゼロで、安心しきって眠っている…。その姿を見ているだけで、飼い主も平和な気持ちになりますよね。なぜ、愛するペットの眠っている姿が、これほどまで心を和ませてくれるのでしょうか。
そのルーツは、ペットとしての犬の成り立ちにある、という説があります。今から1万5千年~3万年前、人間がまだ洞穴で生活をしていた時に、たまたま人なつこいオオカミが洞穴に住み着いたのが、ペットとしての犬の祖先と考えられています。
犬はやがて、番犬としての役割を果たすようになっていきます。人間の1億倍ともいわれる嗅覚、人間の数倍の周波数を聞き分けられる聴覚によって、近くにいる外敵のかすかな気配も察知し、人間に知らせることができたからです。
私たちの祖先は、犬が安心して寝ている時は、近くに外敵がいない証なので、安心して眠ることができました。現代の私たちにも原始時代の記憶が残っていて、ペットの寝姿に安心感を抱くのかもしれません。
犬と暮らさなかった原始人は、絶滅した?
飼い犬の祖先は、単に番犬として飼われていたわけではありません。食料を手に入れるための狩猟の、頼れる相棒としても欠かせない存在でした。「人類が生き延びることができたのは、犬と暮らしていたから」という説さえあるほどです。
猿が人に進化する過程で、ネアンデルタール人と、私たち人類の祖先であるホモ・サピエンスが同時代に存在していました。しかし、肉体的に屈強だったネアンデルタール人が絶滅して、弱かったホモ・サピエンスが生き残ったことは、人類学上の大きな謎とされています。
多くの仮説がありますが、そのひとつが「ホモ・サピエンスは犬と暮らしていたから」というもの。犬とともに狩猟をすることで狩りが効率化され、食料に不自由しなかったため、厳しい氷河期を乗り越えることができたというのです。事実、最も古いと推測される飼い犬の骨は、マンモスの化石のそばで発見されることが多いのだとか…。一方、ネアンデルタール人の骨の近くからは、犬の化石は見つかっていません。
犬と暮らしていた祖先だけが生き延びることができた…そう仮定すると、犬は人類の恩人(恩犬?)であり、私たちはみんな、古代の愛犬家の子孫ということになります。
人類と共に働き続けた犬、ネズミ獲り以外に仕事がなかった猫
ちなみに、犬は家畜の中でも特に品種が多いのですが、これは、いかに犬が人間といっしょに仕事をすることが多かったかという証。猟犬だけでも、獲物に吠えかかって隠れ家から追い出すことに特化して品種改良された犬など、目的別に細分化されて品種改良されています。そのほか、牧羊犬、牧畜犬、作業犬なども種類は多数。犬にやって欲しい仕事の数だけ品種改良がおこなわれたのであり、それだけ人間は歴史上、犬に仕事の一部を依存してきたのです。
これに対して、猫はネズミ退治以外の仕事は期待されていなかったため、ほったらかし。ごく近代まで、積極的な品種改良は行われませんでした。それでも、犬とともにこれだけペットとして飼育され続けているということは、今も昔も「猫は、そばで眠っている姿を見せてくれているだけでいい」と思う人が多かったからなのかもしれません…。
文・桑原恵美子(PETomorrow編集部)
参考資料:「ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた」(パット・シップマン著/河合 信和訳/原書房) 「オスねこは左利き メス猫は右利き」(加藤由子著/ナツメ社)
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