
今年は残暑が厳しい。少し残暑バテを感じている人も多いのではないだろうか。在宅勤務などで自炊が増えている今、が残暑の時期を元気に乗り切るために、自炊で使うのにおすすめの食材やそれを使ったメニュー、外食やコンビニ食の選び方を、管理栄養士の廣瀬直樹さんに聞いた。
残暑バテ対策となる食事のポイント
【取材協力】
廣瀬 直樹さん
管理栄養士、2ッ星栄養コンシェルジュ、スポーツ栄養実践アドバイザー、健康運動指導士。Original Nutrition(株) 統括本部、日本栄養コンシェルジュ協会 評議員・講師、三幸学園 栄養学講師、地域QOL研究所 理事、Dr.トレーニング 栄養アドバイザーなどを務める。
一般社団法人 日本栄養コンシェルジュ協会
https://nutrition-concierge.com/
「夏バテ及び残暑バテの原因はさまざまですが、体温の上昇をいかに抑えるかが重要だといわれています。ヒトは、体温が上昇すると汗をかくことで皮膚表面の温度を下げ、深部体温(体の内部の温度)を低下させることで熱中症や夏バテを防ぎます。冬季のお風呂あがりに身体をふかずに脱衣所にいると、皮膚表面から水分が蒸発することで深部体温が下がり、大変寒く感じるのも同じ原理です。
したがって、残暑バテ対策のためには、(1)発汗のための十分な水分補給、(2)内臓温度低下のために冷たいメニューを選ぶことを意識すると良いでしょう。
また、残暑バテから食欲が低下し、食事量が減ってしまうと身体を動かすためのエネルギーが足りなくなり、体力や気力が低下します。そのため、食欲が低下している場合は(3)エネルギーとなる糖質食品を摂取することを心がけましょう」
まとめると、残暑バテにおすすめの食事面の対策は次の3つとなる。
(1)発汗のために十分に水分補給する
(2)内臓温度低下のために冷たいメニューを選ぶ
(3)エネルギーとなる糖質食品を摂取する
自炊に使うのにおすすめの秋食材とメニュー
そこで廣瀬さんに、自炊で使うのにおすすめの秋に旬を迎える食材と、それを使ったおすすめメニューを教えてもらった。
1.チンゲンサイ
「これから旬を迎えるチンゲンサイ。野菜の中でもトップクラスの水分含量を誇り、微量栄養素(※)や食物繊維も豊富に含む大変優秀な食材です。発汗で失われた水分や微量栄養素も補給できるので、おひたしにするなど上手く取り入れると良いでしょう。また、ビタミンB1が豊富な豚肉と一緒に調理することで、糖質をエネルギーに変換しやすくなるためおすすめです」
※微量栄養素とは…ヒトの体にとって必要なビタミン、ミネラルのこと
2.かぼちゃ(西洋かぼちゃ)
「野菜の中でも“でんぷん”という糖質が豊富なかぼちゃ。私たちの身体を構成する細胞の活動の原動力となるのは、基本的に糖質エネルギーで、不足すると体力の低下、脳や神経の機能低下を招くおそれがあります。残暑バテで食欲が低下している場合、かぼちゃの冷製スープなど糖質エネルギーを補給できるのでおすすめです。ジャガイモ、トウモロコシ、ソラマメなども糖質を多く含んでいるので、かぼちゃの代わりの食材にしても良いですね」
残暑バテにおすすめ外食メニューやコンビニ食
自炊はせず、外食やコンビニ食が多いという人もいるだろう。そんな人は残暑バテ対策として、どんな風に食事を選べばいいだろうか。
1.発汗を促す辛いメニューを選ぶ
「皮膚表面の温度を低下させるために、発汗を促すメニューがおすすめです。外食やコンビニエンスストアでは辛いメニュー、例えば唐辛子が入っている料理などを選び、汗を強制的にかくことも残暑バテ対策に良いでしょう」
2.暑い日は冷たいメニューもおすすめ
「暑い日であれば冷たいメニューを選ぶと体温が下がりやすくなり、食欲が回復します。主要なエネルギーとなる糖質不足を避けるために、冷やしうどんや冷麺など選ぶことで、エネルギー不足から起こる残暑バテを避けることができます。ただし、寒暖差による自律神経の乱れが原因で現れるいわゆる“秋バテ”の場合、暖かい食べ物を選ぶなど工夫が必要です。季節の変わり目で朝晩は涼しくなってきましたので、冷たいメニューは本当に暑いときにとどめて、涼しさを感じてきたら身体を冷やしすぎないようにしましょう」
3.水やお茶を飲みながら水分不足を防ぐ
「体内の水分が不足すると、水分を節約するため発汗作用が抑制されます。汗が出なくなり、体温が上昇していくのです。したがって、発汗のためには十分な水分が必要になるので、水やお茶をしっかりと飲みながら食事を行いましょう」
4.暑さが原因の残暑バテ、食欲低下には「スムージー状ドリンク」を
「暑さが原因の残暑バテの場合、内臓の温度を下げることが重要です。液体と氷が混合したスムージー状の冷たいドリンクを摂取することで、内臓の温度が下がり、血液が冷やされることで主観的温熱感覚が低下します。すると、摂食中枢機能が刺激され、次第に食欲が回復していきます。スムージー状のドリンクが手に入らなければ、食事の15~20分前に氷が入った冷たい水やお茶を飲むことも深部体温低下におすすめです。冷たいドリンクで胃腸の不快感を引き起こす場合、体調と相談しながらとり入れてみてください」
残暑バテの原因は人それぞれ。自分の身体に合った、しっくりくる食べ方や食品・飲料を選ぶことが大切だ。賢く選んで、残暑時期を元気に乗り切ろう。
取材・文/石原亜香利