「反故にする」という言葉は、どのような意味で使われるのか知っていますか?間違った使い方をすると恥ずかしい思いをするだけでなく、相手に誤解を与えてしまうかもしれません。正しく使うために、言葉の意味や言い換え方についても理解しておきましょう。
反故にするとはどんな意味?
反故にするには、主に二つの意味があります。どちらも似たような意味に思われますが、使われ方は違います。それぞれの意味について、具体的に見ていきましょう。
約束を破ること
『反故にする』は約束を破る、取り消すという意味であり、『打ち合わせの予定があったのに反故にされた』などの使われ方をします。約束を破られた上に、相手が打ち合わせに来なかったときに使える言葉です。
約束だけではなく、すでに決まっていたことが『白紙に戻る』場合にも使えます。一般的には、ネガティブな要素を含んで使われることが多いです。
なかったことにするという意味
『反故にする』という言葉には、『なかったこと・無効にする』という意味もあります。ニュアンスとしては『約束を破る』と近いかもしれません。
例えば、紙や手紙を無駄にしてしまった場合は「書き損じてしまったので、紙を1枚反故にした」という使い方ができます。
『捨てる』という表現の方が分かりやすいですが、意味を知っておくと、実際に使われた場面でもスムーズに意味を把握できるでしょう。
反故の語源とは
反故にするという言葉には、どのような語源があるのでしょうか。語源を知っておくと、その言葉についての理解がより深まり、適切な使い方ができるはずです。ここでは具体的な語源を解説します。
書き損じて無駄になった紙のこと
『反故』の語源は、書き損じた紙や汚れてしまった紙です。それぞれ『反』が「かえる・かえす」「逆の」などの意味で、『故』が「ふるい・むかしの」「もともと」という意味があります。
反故は、元々は書き損じた紙を『裏返して使うこと』という意味で使われていて、現在で使われているような、「約束事を破る」などの意味を持っていませんでした。
しかし、現在では約束事や決まり事に対して使われる場面が多いです。
不要な紙は反故紙と呼ばれる
不要になった紙のことを『反故紙』と呼びますが、昔は、書き損じや不要になった紙であっても使い道がありました。紙は貴重であり、墨書きすることで虫害に強くなるため、ふすまやびょうぶの下貼りに使うなどして、再利用し生活に役立てられていたのです。
これらは、物を無駄にしない先人の知恵ともいえるでしょう。現在では、このような美術文化財に使われた反故紙から当時の生活をうかがい知る資料が発見されていることもあるそうです。
反故紙は、単に不要になった紙に使うことがほとんどですが、言葉の背景を知ることで知識が深まりますね。
言い換えの表現も覚えておこう
『反故にする』という言葉には、ネガティブな印象を抱きがちです。そのため、使うタイミングによっては相手に不快感を与えてしまうこともあります。そんなときのために、類語である言い換え表現も知っておくと便利です。
白紙に戻す
『反故にする』とよく似た使われ方をする言葉に、『白紙に戻す』があります。今ある約束などを新しくする、価値がなくなる、元の状態に戻すという意味です。
『反故にする』よりもネガティブな要素が少ないので、使いやすいかもしれません。表現も柔らかく、スムーズなコミュニケーションが取れるでしょう。
ただし、やや遠回しな言い方であることに注意が必要です。白紙に戻す内容が深刻な場合、この回りくどさが相手に不快感を与えるケースも考えらえます。
より直接的な表現をするなら、「なかったことにする」という言葉を使えばストレートに意思を伝えやすくなります。どちらの表現を使うのがよいかはケースバイケースのため、状況や相手との関係性に合わせて使い分けましょう。
破棄する
紙などを捨てる場合には、『破棄する』という表現を使うのもおすすめです。「破って捨てる」という意味があります。
反故にするという表現を使うのも、用途としては間違いではありません。「コピーした紙を間違って大量に反故にしてしまった」などと使いますが、「紙を反故にする」という内容にピンと来ないこともあるでしょう。
そのため、『破棄する』や『捨てる』などの表現を使った方が、分かりやすいはずです。
また、約束を破ることを『破棄する』と表現することもあります。「あなたとの約束は破棄させていただく」のように使えますので、こちらも言い換え表現として覚えておきましょう。
撤回する
一度約束した計画や意見を反故にする場合は、『撤回する』という表現で言い換えができます。
「前言を撤回する」は『先ほど言った内容はなかったことにする』という意味です。何らかの発言や意見を無効にしたい場合に使います。約束など、双方の合意が必要なシーンでは使いにくいかもしれません。
約束をなかったことにする場合、『取り消す』という表現も使えますが、撤回するとはやや意味合いが異なります。『取り消す』の方は、発言として使うより約束や契約などの場面で使うことが多いです。
状況に応じてうまく使い分けましょう。
構成/編集部