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『暖簾に腕押し』は、覚えておくと便利なことわざです。さまざまなシーンで使用可能なので、語源や意味を知り、正しく使えるようになりましょう。似たような意味のことわざもいくつか紹介するので、状況に合わせて使い分けてみてください。
暖簾に腕押しの意味と使い方
ことわざを正しく使うためには、まず意味をきちんと理解することが肝心です。意味と同時に、使用する際に気を付けたい点についても解説します。
読み方
暖簾に腕押しは、『のれんにうでおし』と読みます。
意味は「手応えがないこと」
手応えがない、反応がない、張り合いがないという意味です。
自分の言動に対して、相手からのリアクションがなかったり、薄かったりする場合に使えることわざです。相手の予想外なリアクションのなさや反応の薄さに、どこか虚しさや諦めの気持ちを感じているようなニュアンスがあります。
「人事異動願いを提出したが、暖簾に腕押しだった」や「勤務中に私語が多い新入社員に注意したが、暖簾に腕押しでどうしようもない」のように使えます。
プライベートでも、「気になる女性にアプローチしているが、暖簾に腕押しでかわされている」や「子どもにゲームの時間を減らすように言っているが、暖簾に腕押し状態だ」など、使えるシーンが多いでしょう。
暖簾に腕押しの語源
語源には二つの説があります。それぞれの説について解説すると同時に、暖簾がどのような物なのかも紹介しましょう。
そもそも暖簾とは?
飲食店の入口に掛かっている、店名やロゴが書かれた布が暖簾です。多くの飲食店では、開店時に暖簾を掛けて閉店時に片付けており、営業中であることを示す役割も兼ねています。また、暖簾を裏返しにすることで、閉店を示すお店もあります。
『暖かい』と『簾(すだれ)』という漢字を組み合わせた暖簾は、もともと暖気を逃さないようにする目的で使用されており、日よけや人目避けなどの役割も果たしていました。鎌倉時代から室町時代になると、現在のように店名やロゴを入れて看板のような役割も兼ねた形へと変化したとされているのです。
近年は本来の目的とは異なり、部屋のインテリアとして用いられることも増えています。棚に暖簾を掛けて中が見えないようにしたり、部屋の仕切りとして使用したり、さまざまな利用方法で愛用されているようです。
語源は二通りの説がある
語源には二通りの説がありますが、どちらの説も暖簾の特徴と関連しています。
一つめの説は、暖簾は布が下げられているだけで、くぐるときに何の抵抗もなく簡単に布を押し上げられることから、手応えや張り合いがないという意味として用いられるようになったといわれています。
もう一つは、腕押しが腕相撲だとする説です。何の抵抗もしない暖簾と腕相撲をしても勝負にすらなりません。そのため、手応えや張り合いがないという意味で使われるようになったというものです。
暖簾に腕押しの使い方と例文
では、具体的にどんな場面で使える表現なのでしょうか。
マイナスな表現なので使用時は要注意
暖簾に腕押しは、否定的な意味合いのため、使う際には注意が必要です。例えば、同僚に「上司に新企画のプレゼンをしたが、暖簾に腕押しだ」と話したとします。すると、「上司にやる気がない」「上司に言ってもらちが明かない」というニュアンスで伝わってしまう可能性があるのです。
たとえ「企画が通らなかったけど、次は頑張ろう」とポジティブな意味合いで言ったつもりでも、受け取る側にはマイナスの印象を与えてしまうこともあるため、注意しましょう。
例文
・何度も提案を出したが、上司は全く興味を示さず、まるで暖簾に腕押しだった。
・彼にいくらアドバイスをしても聞き入れられず、暖簾に腕押しのような気持ちだった。
・クレームを言い続けても、カスタマーサービスからの反応は薄く、暖簾に腕押しだと感じた。
・子どもに勉強を教えても、理解しているのかどうかわからず、暖簾に腕押しのような状況だった。
・新しいアイデアをチームに提案したが、誰も関心を示さず、まるで暖簾に腕押しだった。
暖簾に腕押しの類義語
暖簾に腕押しと似た意味を持つことわざは、複数あります。その中でもよく使われているものを紹介しましょう。
ぬかに釘
ぬかは、ぬか漬けを作るときに野菜を漬ける『ぬか床』のことです。ぬかは柔らかいペースト状のため、いくら釘を打っても意味がありません。そのことから、効果がない、手応えがない、意味がないというような意味で使われています。
相手に何かを働きかけても、何の効果や変化がない状況を表現するときに最適です。例えば「健康のために運動をするように勧めたが、ぬかに釘だ」というように使えるでしょう。
馬の耳に念仏
馬の耳に念仏は、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?馬にいくら念仏を唱えても、馬は理解できないためありがたみがないという意味です。
人の貴重なアドバイスや提言などを全く聞き入れない様子を表現しています。初めからかたくなに聞き耳すら持たないという状況の場合に使える言葉です。「子育てに悩む友人に自分の経験を話したが、馬の耳に念仏だったのが残念だ」といった使い方ができます。
暖簾に腕押しとは、少しニュアンスが違うことに注目しましょう。暖簾に腕押しは、アドバイスを断固拒否するというよりも、心に全く響かないというようなニュアンスで使います。
豆腐にかすがい
かすがいは、主に建築に使用されるコの字型の釘です。いくら豆腐にかすがいを打っても全く手応えがないという意味です。相手のためになると思ってアドバイスなどをしても、効果がないときに使います。
「毎年、夏休みの宿題は計画的にやるように言っているが、豆腐にかすがいで、いつもギリギリになってから取り掛かる」や「彼にどのような忠告をしても、豆腐にかすがいなので、同じ間違いを繰り返している」などと言えるでしょう。
構成/編集部