寝る前のワンポーズで心身が変わる
コロナ禍が始まって以来、今まで施設に通ってやっていたフィットネスやヨガなどのエクササイズを、自宅でするという人が増えている。
これで問題になるのが、モチベーションの維持だろう。トレーナーや仲間の目がないから、ついついさぼってしまいがち。「気づけば、何もしなくなっていた…」と、ひそかに自己嫌悪に陥っている方々におすすめしたいのが「ねるヨガ」だ。
ねるヨガは、就寝前に布団の上で行うヨガのこと。ポーズは簡単で、一度にたくさんの種類を行う必要もなく、終わったらそのまま寝てしまえる。モチベーションがあまりない人も、とにかく忙しいという人でも続けられるのが大きなメリットだ。
例えば、「子犬の休息(パピーレスト)」というポーズ。基本的には、布団の上にうつぶせになり、左手で床を押して、右の手の平を上回きにして脇の下に差し込み、2~3分静止し、その感覚を観察するというもの。デスクワークやストレスで緊張した肩・腕のコリを緩める効果があるという。
ヨガとマインドフルネス瞑想の相乗効果も
ねるヨガのもう1つの特徴は、マインドフルネス瞑想も兼ねている点。ヨガとの相乗効果で、例えば以下のような大きな効果が期待できるという。
・心身の安定と調和
・ストレスが減る
・脳、体、肌のアンチエイジング
・睡眠の質がよくなり、自然治癒力が高まる
・人生の意義と目的が見えてくる
このメソッドを生み出したのは、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の代表理事、吉田昌生さんだ。吉田さんは、以前は「身体が硬く、足腰が冷え、気分の浮き沈みが激しく」なるなど、心身の不調をかかえていたものの、ヨガと出会って克服。人生が変わるのを実感するほどであったという。
そんな吉田さんが、ヨガに多少は関心があっても「身体が硬い」とか「めんどくさそう」といった理由で敬遠している人でもできるメソッドとして、ねるヨガを編み出し、1冊の書籍『ねるヨガ』(フォレスト出版)として公開した。
ねるヨガを実際にやってみよう
本書は理論的な話にも多くのページが割かれているが、最初からすべてを理解する必要はなく、また、完璧なポーズができなくてもかまわない。吉田さんによれば、「自分にとってちょうどいいポイント、負荷を見つけ、その感覚に気づいているなら、それでOK」だいう。そして、どれか1つのポーズから始めるくらいのゆるさでいいとも。
例として、本書に掲載のポーズを紹介するので、試しにやってみよう。
【スフィンクスのポーズ】
1. うつぶせになり、肘を肩の下に置く。
2. 余裕があれば手の平で床を押して上体をそらす。
3. 3~5分間この姿勢を保つ。
4. ゆっくり戻る。
5. うつぶせで余韻を味わう。
これは、ねるヨガの初心者向けプログラムに含まれるポーズの1つで、主に背骨と腰回りを緩める効果があり、腰痛の改善にもなるという。腹圧と腰の伸びを意識するのがポイント。また、スフィンクスのポーズに限らず、どのポーズにも共通する注意点として、柔らかすぎるベッドは身体が沈みこんでしまうので避ける。この場合は、ベッドの横にヨガマットを敷いて行う。
【ワニのねじりのポーズ】
1. 仰向けで横になり、右脚を伸ばし、左ひざを引き寄せる。
2. 息を吐きながら、右側を下にして横になる。左脚が浮かないように右手で左脚を押さえる。
3. 息を吸いながら左手を伸ばし、右脚を突っ張って体を縦に伸ばす。
4. 息を吐きながら上体を左にねじり、左手を左へ、顔も左に向けてリラックス。
5. 3~5分キープしたら反対側も同様に行う。
これは、背骨に適度な刺激を与えることで、心身の緊張を解くとともに、腰痛緩和・便秘解消にも効果があるポーズ。背骨が下から順に螺旋を描くイメージで、胸を開くのがコツ。
朝の起床時に行う朝ヨガ
ねるヨガには、朝起きてから、あるいは日中にするのがベストなポーズもいくつかある。朝のねるヨガ(朝ヨガ)は、寝起きの身体を覚醒させ、ポジティブな感情に気づきやすくなるなどの効果があり、寝る前のポーズとセットで行えば相乗効果を得られる。その1つが、こちら。
【バッタのポーズ】
1. うつぶせになって両足を腰幅程度に開いて、両手は体側に置く。
2. 息を吸いながら両手、両足を穏やかに伸ばした状態で持ち上げる。
3. 首の後ろ側を長くし、両腕は床と平行にして、指先まで伸ばしていく。
4. 呼吸をしながら30秒~1分キープする。
5. 吐く息でリリースしたら、うつぶせになって余韻を味わう。
これには背筋を強化し、自律神経を整え、疲労を回復するなどの効果があるという。腹圧と背筋を使って、そるというよりは伸びる意識をもって行う。
「ねるヨガは、簡単すぎて効果は薄いのでは?」といった心配は無用。実践している人からは、「睡眠の質が劇的に改善されました」、「慢性的な肩こり、腰痛が消えて、身体がラクになりました」など、うれしい声が届いている。ヨガにちょっと興味があるレベルでもかまわないので、短時間で心身を整えたいという方は、本書を読んでトライしてみるとよいだろう。
吉田昌生さん プロフィール
一般社団法人マインドフルネス瞑想協会代表理事。20代で精神的にバランスを崩し瞑想に出逢う。瞑想のメンタル調整効果に感動し、世界中の指導者を訪ね、様々な瞑想、ヨガを実践する。2015年『1日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門』を出版。現在は石垣島に移住し、執筆活動のほか、オンラインサロンの運営や、石垣島でのリトリートの開催、マインドフルネス瞑想講師の育成に力を入れている。
公式サイト:https://www.masao-mindfulness.com/
本書内イラスト:Hama-House
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)