緊急事態宣言が解除された後も、外出時間を減らし、極力遠出を控えている人は多いのではないだろうか。長引く巣ごもり生活のストレス解消として人気が急上昇しているのが、自宅の庭やガレージ、ベランダを使って楽しむ〝家キャンプ〟だ。このトレンドに乗り、編集部では狭小だが庭のある家でキャンプにチャレンジしてみた。だが、ネットでポチッた初テントがサイズオーバーで庭に収まり切らず、いきなりハミダシテントでの家キャンデビューに。気を取り直し、音楽をかけながらBBQをはじめたところ、「ニオイと煙がひどい!」と、まさかの隣人乱入にションボリ……。もっと快適に家キャンプできないの!? 教えて、家電王!
「くらしのラボ」で家キャンプの問題をスッキリ解決!
今年バーベキューを行なった場所
上のグラフから見て取れるように、庭やガレージなどでキャンプする人は非常に多い。しかし、先の編集部員のように不慣れな人が家キャンプをすると、テント問題や隣人問題が発生する。一体どう解決したらいいかーー。〝家電王〟ことTEPCO社員の中村剛さん(右)と、〝チュンチュン〟の愛称で知られる人気アウトドアコーディネーターの小雀陣二さん(左)に協力を依頼。家電王とアウトドア王の豪華なコラボによる、近隣にも配慮した快適な家キャンプのノウハウを教えてもらうことにした。
庭やベランダ、部屋でキャンプをする際のテント選びのポイント
中村:長引くコロナ禍で、遠出をせず、ベランダを使ったベランピングや庭先でのBBQなど、自宅で楽しむ〝家キャンプ〟が盛んになってきましたね。
小雀:徐々にキャンプ場にも人が戻ってはきていますが、三密回避策もあり、かつてのにぎわいには程遠い状況です。私の仲間内にも、家族や友人と自宅でキャンプを満喫しようという動きは広がっています。
中村:私は猫を飼っているので、家族揃ってのキャンプ泊はなかなか難しいのですが、家キャンプなら毎週でもできます。ペット好きにも適したレジャースタイルですね。
小雀:本格的キャンプと違い、ミニマムな装備で、しかもキャンプ経験がなくても気軽にスタートできることも魅力です。
中村:必要な道具はテントぐらいですか?
小雀:そうですね。中に敷くシートやマット、調理道具は家にあるものをそのまま流用できますから。
中村:家キャンプでは、どんなテントを選んだらいいですか。
小雀:経験レベルにもよりますが、ビギナーなら、杭として地面に打ち込むペグや、張り綱を使わなくても設営できる自立式が便利ですね。中でも袋から出すとバネの力で自然に展開してテントになる、設営と撤収が簡単な「ポップアップ式」をおすすめします。ベランダや家の庭先であっても、テントの中でゴロゴロするだけでキャンプ気分が盛り上がりますよ。
中村:袋から出すだけでポンと広がる、ポップアップ式は確かに便利ですね。
小雀:ただ幅や奥行きには要注意です。サイズをよく確認しないで購入すると「庭やベランダのスペースに収まらない」「設営はしたものの、入り口の向きが合わず中に入れない」ということにもなりかねません。
中村:まずはどこに置くかをはっきり決めてからスペースのサイズを測ることが大事なんですね。
小雀:テントを設営できない狭小スペースの方もいらっしゃるはず。そんな場合はタープを張るだけでも、キャンプらしくなります。わざわざ買い足さなくても、家にある布やシーツ類で代用してもいいですよ。
中村:室内にテントを設置する場合も、タープがあれば日を遮るので、窓を開放し部屋を換気しながらキャンプを楽しめそうです。
●クレイジークリーク 『ポップアップシェード』9680円
収納袋から取り出すだけで設営ができるポップアップテント。フレームにはワイヤースチールを使い、耐水圧は1000mm。テント内は幅2m、高さ1.4mと大人2~3人で寝られる広さを備える。サイズは約幅198.5×奥行き149.5×高さ142cm(使用時)。約2.17kg。9680円
収納時は約直径62cmとコンパクト。かさばらずクローゼットの隅にしまっておける。ペグ打ち不要で、家の中でも簡単に設営ができる。
小雀:キャンプ道具というより、家電の枠に入るかもしれませんが、天気のいい日はテント内の温度も急上昇しますので、熱中症や換気対策として、コンパクトな扇風機を用意しておくと重宝します。充電式バッテリーが使えるタイプならコードレスですから、電源のとれない場所にテントを張っても使えます。
中村:寝苦しい夜に寝室で使ったり、風が流れにくいトイレに持ち込んだりできるので、日常生活でもさまざまな使い道がありますね。
●スノーピーク 『フィールドファン(MKT-102)』
工具メーカーの「マキタ」と共同開発した、AC電源とリチウムイオンバッテリー(別売り)両対応の小型扇風機。1.3kgと軽量ながら最大風速は180m/分というハイパワーを備え、サーキュレーターとしても活用できる。首振り、タイマー、3段階の風量調整付き。サイズは幅185×高さ272×奥行き284mm。9900円。
中村さんと小雀さんの対談当日は30度超えの猛暑日だったが、テーブルに置くだけで屋外に居ながらも適度な涼がとれた。首振りは45度まで可能。
家キャンBBQで大事な煙とニオイ問題を解決する家電が欲しい
小雀:今度は私から、べランピングや庭先でキャンプを楽しむための家電製品について質問をさせていただきたいと思います。
中村:最近は充電式バッテリーに対応した製品や、AC電源を搭載したクルマの普及もあり、アウトドアと家電の相性がグッとよくなっている印象です。
小雀:アウトドア道具と家電の境界線もなくなってきましたね。
中村:家族でキャンプに出かける方が増えた背景もあり、携帯性を考慮した便利な製品が次々に生まれています。ただ、アウトドア専用のものですと人によっては使用頻度が少なくなるので、先ほどの扇風機にように、屋外でも家でも使えるハイブリッドタイプを推しています。
小雀:キャンプの大きな楽しみにBBQがありますが、まず始めに、家キャンプで使える注目のBBQ家電を教えていただけますか。
●エムケー精工 無煙ロースター『ヘルシーグリル HG-100K』
赤外線の直接加熱によって、回転プレートにのせた厚みのある肉や魚もムラなくジューシーに焼き上げる。食材の余分な油は油受けトレイに落とすので煙やニオイをシャットアウト。プレートやトレイは丸洗いできる。1~80分までのタイマー付き。サイズは幅360×奥行き445×高さ305mm。約4.8kg。1万2800円。
上部にある赤外線カーボンヒーターで食材を直接加熱。輻射熱でプレートも加熱される「両面加熱」を実現。小雀さんがラムチョップや海老、秋野菜を焼いたが煙はほとんど出なかった。
中村:おいしく焼き上げる性能も大事ですが、家キャンプの場合は、もくもく油煙の出るタイプは近所迷惑になるので避けたほうがいいですね。おすすめは無煙ロースター。食材の余分な油もプレートを通じて下に落ちる設計になっていますから、油が直接熱源に触れず、煙もニオイもほとんどでません。屋内で使えば、油煙による壁の黄ばみも解決できます。
家電王 中村剛さん
東京電力エナジーパートナー勤務。2002年『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝。現在は〝家電王〟として動画マガジン『くらしのラボ』を毎週配信している他、雑誌や新聞などのさまざまなメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類のネコ好き!
小雀:私がキャンプで使っているグリルは、火種に炭を使っていますが、鉄板にある穴から油が流れ、下に入れた水に油が落ちて固まるように設計されています。煙やニオイは完全にシャットアウトはできませんが、かなり抑えられます。炭を使うので屋内には不向き。庭先などでは使えるかもしれません。
中村:どうしても炭のニオイは残りますが、そこにキャンプ風情を感じますね。『煙やニオイが遠くに広がるほどではないので、庭やガレージでのBBQには向いていますね。
●アブレイズ『コブグリル』
炒めもの、グリル、スモーク、ベーキングから温めまで、1台で様々な料理を楽しめる南アフリカ生まれの調理システム。肉の余分な油が鉄板に開いた穴から下に溜めた水に流れていくため、燃料となる炭に触れず油煙が出にくい構造になっている。コンパクトで持ち運びも便利なのでアウトドアにも気軽に持ち運べる。1万7930円(参考価格)
小雀さんが調理したチキンとポテトのグリル焼き。大きなフタをかぶせることで内部の温度を一定に保つことで焼きムラもなし。きれいな焼き色も食欲をそそる。
映画や音楽など、近所に迷惑をかけないようにエンタメを楽しみたい
小雀:キャンプにはエンタメ要素も必要ですね。私もキャンプ場ではBGMに音楽をかけていますが、キャンプ場は静かな場所にあるので、夜間はボリュームを下げ、周囲に気を配っています。住宅が密集している中で楽しむ家キャンプでは、音楽は騒音になり兼ねず、日中でもボリュームをかなり絞っています。
アウトドアコーディネーター 小雀陣二さん
アウトドア雑誌を中心に多くのメディアで活躍。アウトドアクッキングの名手としても有名で『ダッチオーブン極楽クッキング』、『3ステップで簡単! ご馳走 山料理』、『キャンプ料理の王様』など多くの著作を上梓。神奈川県三崎町に飲食店『雀家 suzumeya』も展開中。
中村:ワイヤレスイヤホンで聴くという方法もありますが、みんなで楽しむキャンプの性格上、それでは味気ないですよね。そこで使っていただきたいのが、向けた方向にピンポイントで音を届ける「指向性スピーカー」です。
小雀:スピーカーの真正面にいる人にしか音が聞こえないんですね。逆に向けるとまったく音が聞こえてこない。これはユニークですね〜。
中村:何とか2人ぐらいまでは聞こえますので、家キャンプであれば、十分使えると思います。何より周りには音が漏れないので、近隣に気兼ねなく音楽を楽しめます。屋内でもオンライン会議や語学学習に使えそうですね。イヤホンをすると周囲の音がすべて遮断されてしまいますが、これなら例えばお子さんの様子を確認しつつ、音に集中ができます。しかもモードを切り替えれば、普通のブルートゥーススピーカーとして日常的に使えます。
小雀:三脚が付いているので、置き場所にも困りません。今度キャンプに出掛ける時は道具に加えたいですね。
中村:スピーカーと同様、私がキャンプのエンターテイメントとして注目しているのが、モバイルプロジェクターです。最近は単焦点で、スクリーンまで距離をとらなくても大画面で見られるタイプが増えていますから、狭いベランダや庭先でも気軽に大画面で映画を楽しめますね。最新モデルの中には、スマホにつないで写真や動画はもちろん、Android TV機能も付いているから、アプリをインストールすればYouTubeやNetFlix、Amazon Prime Videoといった動画配信サービスも楽しめます。
小雀:屋内であれば壁などをスクリーンに使えますが、屋外だと案外投射するスペースがないので、ハンモックの布をスクリーン代わりに使うのも手です。プロジェクターがあれば夜の過ごし方もリッチになりますね。
●ビーラボ『ジミー・ハロ』
フルハイビジョン画質と、最高800ANSIルーメンの明るさを備えるハイスペックなモバイルプロジェクター。Harman Kardonのスピーカーを内蔵し、1台で高画質と高音質を実現する。Android TV 9.0にも対応しGoogle Playストアの多彩なアプリを楽しめる。1回の充電で約4時間の動画再生が可能。サイズは約幅113.5×奥行き145×高さ171.5mm。1.6kg。9万6800円。
フルハイビジョン画質によって色の階調も鮮明に表現。台形補正にも対応する。30~300インチ以上の大画面を楽しめる。
●シフラス 『3WAY自立式ポータブルハンモック』
組み立て簡単なハンモック・チェア。インテリアに馴染む木目調のフレームを採用することで、室内でも違和感なくキャンプ気分を満喫できる。付属のハンガーロットをスタンドに掛けると、ハンガーラックとしても使えるので便利。サイズは幅2450×奥行き780×高さ840mm。8.5kg。1万8500円。
スタンドを調整することでハンモックだけではなくチェアとしても利用可能。独自のフックで揺れ心地も快適。
メーカー公式の使い方ではないが、ハンモックの生地を使ってプロジェクターの投影用スクリーンにすることもOK。投射場所がない時の裏技として覚えておこう。
●『SRAY(エスレイ)』
スピーカーを向けた方向だけスポットで音を届ける指向性スピーカー。音が周囲に広がらず、逆に騒がしい空間でも明瞭に音が聞きとれるというメリットもある。ワンタッチで通常スピーカーとしても活用できる。サイズは幅114.5×奥行き20.5×高さ104.0mm。160g。5万4800円。
『エスレイ』で音楽を楽しむ小雀さん。この距離で小雀さんの隣に座っても一切音は聞こえてこない。家キャンプの音問題は大幅に解消されるはずだ。
多種多様なライトから家キャンプに最適なタイプを選びたい
小雀:中村さんはモノを選ぶ際にどこに重点を置いていますか。
中村:一言でいうと機能美ですね。特に商品の性能を引き出すようなデザインにひかれますね。デザイナーが使いやすさを前提にデザインを発想した商品には、ボタンの配置一つとってもそこには意味があるものです。そこをくみ取りながら長く使えるものを選んでいます。
小雀:いわれてみると、今まで紹介された商品は、屋内外で使えるハイブリッド型というだけではなく、使いやすさを考えた機能美を備えていますね。
中村:このLEDランタンは、その最たるものですね。これはヘッドランプ用のケースのように見えますが、そのままランタンとしても使えます。天井に吊したり、地面に置いたりすれば足元の安全を確保するライトとして使えます。家に備えておけば、災害時の非常用ライトとしても機能します。
小雀:かなり明るく、軽いので家キャンプだけで使うのはもったいないですね。通常のキャンプでもしっかり対応できそうですね。
●ペツル『ノクティライト E093DA00』
ペツルのコンパクトヘッドランプを収納するとランタンとして使用できるコンパクトなヘッドランプケース。ヘッドランプを収納したまま、ケースの上からスイッチを操作できるので、テント内の読書灯や移動用ライト、テント周りのフットライトとして役に立つ。ペルツの様々なライトに対応。85g。1980円。
ヘッドライトの収納ケースがそのままランタンになる合理的な発想。テントに吊るした時の見映えも悪くない。
家電王が語る暮らしの中での家電の価値
小雀:中村さんが、家電王として毎週配信しているTEPCOの動画マガジン『くらしのラボ』を楽しみにしています。2017年2月にFacebook上でスタートし、フォロワー数13万人は凄いですね。一つ疑問ですが、ネーミングを「家電のラボ」としなかったことには理由があるんですか。
中村:モノ・コトでいうと、暮らしがコトで、道具である家電はあくまでモノ。暮らしがあるからそこに家電があるという考えからです。いいモノがないといいコトは生まれませんので、生活家電はとても大事だと思っています。
小雀:なるほど。今回も、いいモノがあるからこそ、様々な問題を解決でき、いい家キャンプができるということですね。
中村:そうですね。便利になり過ぎた現代のアンチテーゼとして、「不便さもキャンプの楽しみ」という考えもありますが、テクノロジーで問題を解決し、便利で快適な家キャンプを体験することで、アウトドアに興味を持っていただくきっかけになればと考えています。その後、本格的にキャンプをスタートする人が増えていくといいですね。
小雀:私はアウトドアコーディネーターとしてキャンプの普及活動もしていますが、最近はマナーなどで社会的問題になることも増えてきました。家電の力で、問題が解消されることを望んでいます。
中村: 『くらしのラボ』ではQOL(クォリティ・オブ・ライフ)の向上をテーマにしています。楽しく暮らしていくには、生活に関連した様々な質を上げていく必要がありますが、テクノロジーで向上できることは多く、いい家電を選ぶだけでも生活のクォリティ質が大きく変わり、生活が豊かになります。アウトドアに家電を持ち込むことで、課題解決に一役買う可能性が大いにあると思いますね。
対談を終えて意気投合したお二人。まるで長年の友のようにテントでまったり。
家電のお悩みは「くらしTEPCO web」で解決!
「くらしTEPCO web」の特集ページでも、家電王・中村さんが、テーマ別に、知っているとトクする情報を定期配信中。家電のお悩み解決法やより賢い使い方などを、わかりやすく解説しているので、チェックしてみよう。
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取材・文/安藤政弘 撮影/田口陽介