外科手術の分野において、医師の目や手として働き、精緻で安全な手術を行える『手術支援ロボット』が注目されている。
『手術支援ロボット』を使った手術において、公的保険の適用範囲が順次拡大していることに加え、世界市場を席巻する米インテュイティブ・サージカル社製『手術支援ロボット』ダヴィンチの特許切れを契機に、国内外の多くの企業等が『手術支援ロボット』の開発を急いでいることが、背景となっているという。
そんな「手術支援ロボット」について、三井住友DSアセットマネジメントがマーケットレポートを公開したので紹介しよう。
注目される『手術支援ロボット』
『手術支援ロボット』は腹・胸腔の内視鏡手術で使用され、医師が内視鏡の画像を見ながら、ロボットアームに取り付けた手術器具を操作する。
従来の手術と比べ、手ぶれをコンピューターが補正するため精度に優れており、手術時間は短く、手術中の出血量も少なくて済む。
『手術支援ロボット』は元々、米軍の医療技術が民間に移転されたもので、1999年に米インテュイティブ・サージカル社がダヴィンチの名称で初めて製品化した。現在、ダヴィンチが世界シェア7割と圧倒的な地位を固めている。
日本では2000年にダヴィンチが初めて導入された。『手術支援ロボット』を使った手術は、2012年以降順次、公的保険の適用範囲が広がっており、日本でも本格的な普及期を迎える素地が整いつつある。
また、ダヴィンチの基本特許の多くが2019年に期限切れとなり、国内外での開発競争が熱を帯びている。
ダヴィンチの特許切れを機に、国内外企業が開発を急ぐ
産業用ロボットを手掛ける川崎重工業と医療機器メーカーのシスメックスが共同出資し設立したメディカロイドは、今年8月に厚生労働省から製造販売承認を取得し、国産初の『手術支援ロボット』ヒノトリを発売すると発表した。
日本人の体格に合うようにロボットを小型化し、国内生産で価格を抑えている。
東京工業大学発のスタートアップ「リバーフィールド」は、ロボットアームの駆動システムに空気圧を使用し、「手で触れている感覚」を伝える『手術支援ロボット』エマロを開発中だ。
また、米ジョンソン&ジョンソンが、グーグルの親会社である米アルファベットと共同開発を行い、内視鏡世界トップのオリンパスも国立がん研究センターなどと組み開発を急いでいる。
【今後の展開】更なる発展が期待される『手術支援ロボット』
現在の『手術支援ロボット』は、配線で医師のコックピットとロボットが接続されているが、高速通信システム5Gが普及すれば、遠隔地から医師がロボットを操作することも可能になる。
また、AI(人工知能)開発が更に進めば、『手術支援ロボット』をAIで制御することによって、熟練医師の高度なテクニックを再現することが可能になるなど、今後の発展が期待されている。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
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構成/DIME編集部