ビタミンDとカルシウムのサプリに、めまい再発の予防効果
ビタミンDとカルシウムのサプリメントの摂取が良性発作性頭位めまい症(BPPV)の再発リスクを低下させる可能性を示すデータが報告された。
ソウル大学(韓国)のJi-Soo Kim氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」8月5日オンライン版に掲載された。
BPPVは頭を動かしたときに突然、回転性のめまいが生じる疾患。BPPV患者の86%は、めまいのために仕事を休まざるを得なくなるなど、日常生活に支障を来すような経験をしているという。
医師の指示に従って頭を特定の順序で傾ける運動により症状が改善することが多いが、再発傾向がある。これに対しKim氏らは、ビタミンDとカルシウム摂取によるBPPV再発予防効果を、多施設共同無作為化比較試験で検討した。
2013年12月~2017年5月に、8カ所の病院におけるBPPV患者約1,000人を、介入群と観察群に二分し、介入群に割り当てられた患者のビタミンDレベルを測定。20ng/mL未満だった患者には、ビタミンD400IUとカルシウム500mgを含むサプリメントを1日2回摂取してもらった。
一方、観察群に割り当てられた患者と、介入群のうちビタミンDレベルが20ng/mL以上だった患者は、サプリメントを摂取せずに過ごしてもらった。
平均1年の追跡期間中のBPPV再発回数は、介入群のうちサプリメントを摂取していた患者は0.83回だったのに対し観察群は1.10回で、サプリメント摂取者の再発率比は0.76(95%信頼区間0.66~0.87)と有意に抑制されていた。
介入群の中でも特にビタミンDが不足している患者ほど、より大きな再発抑制効果が認められた。具体的には、ベースラインのビタミンD値が10ng/mL未満だった群での再発率が45%低下した一方、10~20ng/mLだった群の再発率は14%の低下にとどまった。
追跡期間中に再発した患者は介入群37.8%、観察群46.7%で、介入群が有意に少なかった(P=0.005)。再発患者を1人減らすために必要な治療患者数(NNT)は3.70(95%信頼区間2.50~7.14)だった。
今回の結果についてKim氏は、「BPPV再発予防のシンプルかつリスクの低い方法として、ビタミンDとカルシウムのサプリメントの摂取が有用であることが示された」と、米国神経学会(AAN)のプレスリリースの中で述べている。
Kim氏らの報告について、米ノースウェル・ヘルスのAnthony Geraci氏は、「50歳以上の成人によく見られる疾患であるBPPVに対し、店頭で市販されている一般的な製品が安全で効果があることを示した良質のエビデンスだ」とコメントしている。
またGeraci氏は、「ビタミンDとカルシウムを積極的に摂取することにより、心血管系や骨の健康の改善、高齢者の転倒予防などのメリットも期待できる」と説明している。
米レノックス・ヒル病院のSami Saba氏も、「BPPVの標準治療は、内耳の中で剥がれた耳石の結晶を元の位置に戻す体操だが、その体操を行っても、たびたび再発する。
しかもこれまで再発予防の有効性が示された治療法はなかった」と指摘。「ビタミンDとカルシウムのサプリメントが打開策になる可能性がある」と期待を示している。
Saba氏によると、内耳の結晶成分には炭酸カルシウムが含まれており、「カルシウムの代謝にはビタミンDが不可欠であることを踏まえれば、ビタミンDとカルシウムのサプリメントによるBPPV治療は理にかなっている」という。(HealthDay News 2020年8月5日)
Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://n.neurology.org/content/early/2020/08/05/WNL.0000000000010343
Press Release
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/3811
構成/DIME編集部