■連載/阿部純子のトレンド探検隊
海外では成長期の子ども用カバンとして「AGS」を搭載した商品が注目
自転車通勤の増加や、重い荷物でも運びやすい、両手があくなど、ビジネスシーンでも利用者が増えているリュック。とはいえ、ノートPCや資料などをぎっしりと詰め込むとかなりの重量で、肩の部分に食い込んだり、姿勢が悪くなったりすることも。
中国のメーカーが2017年から販売を始めた「AGS搭載リュック」は、重力に逆らい、リュックの重さが体感で30%軽減される機能が搭載されており、バネのように上下に弾むことで(下記画像の丸印の部分)、肩などへの負担が軽減される。
AGSとは“Anti-Gravity System”の略で、アイディアの元になったのは車のサスペンション。香港と韓国のデザイナーが共同開発し、中国とアメリカの特許、WIPO(世界知的所有権機関)という世界共通の特許を取得している。
スポーツに関するエンジニアリング研究所の「広州体育大学スポーツ支援機器設計工学研究センター」で、AGS搭載リュックと体の疲労の関係性についてテストや研究を実施。体の負担の軽減、疲れ具合、体幹やバランスの崩れの少なさ、リュックを下した後の疲労回復の早さなど、体に負担の少ない設計であることを証明している。
2017年に大人用リュック「JUXILONG(ジューシーロン)」、2019年には子ども用リュック「HELLO DRANGON(ハロー・ドラゴン)」が発売され、子ども用リュックは中国で1日当たり700~800個が売れる人気の商品で、成長期の子ども用カバンとして、AGSを搭載した商品が売り上げを伸ばしている。現在はアメリカ、ヨーロッパ、アジアの15か国に輸出され、中国以外ではメーカーのOEM販売が主流となっている。
日本では輸入販売、EC事業を手掛けている花形設計が、クラウドファンディング(募集は終了)で、大人用、子ども用を販売。日本初登場となった子ども用「HELLO DRAGON」は現在Amazonにて販売しており、ビジネスライン「JUXILONG」も8月23日からAmazonにて販売を開始した。
花形設計の花形理沙さんは、PR会社で大手企業のインフルエンサーマーケティングに携わり、PR会社を退職後、一級建築士であった前代表の事務所のデザイン性と社名を引き継ぎ、母と二人三脚で2019年から新しいビジネスモデルをスタートした。都内9か所の会議室や九十九里で民泊を経営。新事業として輸入販売マーケティング事業を立ち上げ、第1号商品となったのが「AGS搭載リュック」だ。
「成長期の子どもが、教科書がたくさん詰まった重いランドセルやリュックで登校していると首、腰、肩の痛みを伴い、成長を妨げるという調査結果が国内外で報告されています。
世界的には重いリュックでなくカート型カバンで通学させるほうが良いと考える文化もありますが、日本はまだランドセルや学校指定のバッグが主流で、子どもへの負担は大きいと思われます。
どのサイトを見ても、重いカバンの解決策は『自分のサイズにあったカバンを選ぶこと』、『軽量のカバンを選ぶこと』。多少重さの問題が解決されるとはいえ、体への負担は大きく変わりません。
最初にAGS搭載リュックと出合ったのは2019年の展示会でしたが、AGS搭載リュックは、リュックの安定性や、30%の体感重量削減、正しい姿勢を保つことができることから、成長期の子どもへの手助けができるという想いで『HELLO DRANGON』 の販売を開始しました。登校時だけではなく、塾などの習いごとの際にも活用いただきたいです。
また、ビジネスマンもパソコンや資料を持ち歩くためバッグが重くなっていく傾向にあり、特に営業担当の方に使ってもらいたいと思っています」(花形さん)
現在、アパレルブランドなどから問い合わせが来ており、自社でもランドセルに近いような形や素材などでの商品を検討している。ビジネスラインでは、ビジネスマンの需要をふまえながらOEMとして展開を検討中。さらに今後は登山などのアウトドア用、アスリート向け、女性向け、子育て中のママバッグなどの展開も考えているとのことだ。
〇ビジネスライン「JUXILONG(ジューシーロン)」
サイズは縦45cm ×横 33cm ×奥行き16 cm(PC サイズ15.6インチまで対応)、撥水ナイロン素材、BLUE /BLACK /GREY の3 色展開、価格は税込1万5180円。
全面防水ファスナーで、サイドにはUSBポート、サイドポケット、内部はPCポケット、小物収納、背面とベルト部分のパッティングで安定感もあり、キャリーベルト付きで、出張時にもキャリーケースと組み合わせて使える。女性が持っても大き過ぎないサイズ。
〇子どもライン「HELLO DRANGON(ハロー・ドラゴン)」
サイズは縦39cm ×横 28cm ×奥行き13cm、重さ1.1㎏、撥水ポリエステル素材、PINK/NAVY/BLACK の3色展開、価格は税込8500円。
ストラップが肩からずり落ちないように胸で止めるバンドのバックルが、防犯用の笛になっている。内部にもベルトや内ポケットがあり、タブレットも持ち運びできる。
【AJの読み】パッティングによる安定感+AGS機能で姿勢を崩さす重い荷物が背負える
取材時はPCやタブレット、資料、カメラ、充電器、飲料水、化粧品などを詰め込むので、5㎏近いカバンを肩にかけている。帰宅時はさらにスーパーで買った食料も加わるので、駅から家までの帰路はかなり辛い。リュックは肩掛けカバンより楽だが、入れすぎると肩に負担を感じることが多かった。
AGS搭載リュックにノートPCや書類、2ℓのペットボトルなどを入れて、手で持った状態と背負った状態を比較すると、重さの感覚が明らかに違った。階段の上り下りやジャンプをするとよくわかるが、揺れるたびにリュックが上下に弾む。
AGS機能に加え、バック部分のパッティングがしっかりしているので体に密着して、姿勢の崩れもなく安定して背負える。階段を駆け下りてもがたがた揺れず、上下にぶわんぶわんと浮き沈みしている感じ。
AGS機能が付いていると重さが均等にかかるので、特定部分への負担が少なく、軽快に歩けると実感。加えて肩のパッティングもしっかりしているので、ベルトが食い込んだり、肩が痛く感じたりすることもない。
スマートな形なので、女性でもスタイリッシュな感覚で背負えて、スーツでのコーディネートでも違和感がないのもうれしい。今後はOEMでデザインやカラーなどさらにバリエーションが増えることに期待したい。
文/阿部純子