虐待されている猫を見かけたら?
散歩が必要な犬と違い、室内飼育が主流の猫の場合、虐待になかなか気づきにくいもの。
でも例えば「近所の人が、飼い猫を棒で叩いているのを目撃した」「異臭がする家があり、外から見ると多数の猫がいて、明らかに飼育崩壊状態」というような時、被害にあっている猫を助けるために、どんなことができるでしょう?
記事提供元:ペットの役立つ情報が満載のWEBマガジン「PETomorrow」https://petomorrow.jp
動物虐待は、重大な「犯罪」です
まず知っておきたいのは、「愛護動物(人が占有している動物)を虐待したり捨てることは犯罪であり、違反すると、懲役や罰金に処せられる」ということです。
日本では長いこと、動物は法的に「物」として扱われていたため、「飼い主がペットをどう扱うかは自由」という考え方がありました。そのため、動物を虐待したり捨てたりしても、罰則はわずか「3万円以下の罰金または科料(1,000円以上1万円未満の金銭の納付)のみ。でも1999年の動物愛護管理法改正で100万円に増え、その後さらに厳罰化されています。
以下は、動物愛護管理用第44条1項に定められた処罰の内容です。
・愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者
→2年以下の懲役または200万円以下の罰金
・愛護動物に対し、みだりにえさや水を与えずに衰弱させるなど虐待を行った者
→100万円以下の罰金
・愛護動物を遺棄した者
→100万円以下の罰金
虐待の可能性に気づいたら、まず通報を
「確信はないけど、虐待じゃないかな」という疑惑を持ったら、まずは最寄りの自治体の保健所などの担当部署、動物愛護センターに通報しましょう。もし、動物愛護管理法違反で責任を追及すべき悪質な虐待であれば、警察に通報することによって捜査を求めることもできます。
また、虐待の可能性があるペットを保護した場合、獣医師に診察を依頼することも、通報につながります。獣医師は医療行為に際に、「虐待を受けたと思われる動物を発見した場合は、各都道府県知事や警察に通報することに努める必要がある」と定められているからです(動物愛護管理法第41条の二)
通報の際は、できるだけ客観的な証拠を揃えておくこと
虐待している人を告発しやめさせるには、できるだけ具体的な証拠を集めることが必要です。動物愛護団体など多くの人が告発人となり、警察が告訴状を受理して、有罪判決に持ち込んだ事例もあります。警視庁では、2017年に犬・猫・ウサギなどの虐待や遺棄などで、68件を摘発。摘発数は年々、増加傾向にあります。
ちなみに、「愛護動物」ではなく野良猫を虐待した場合も、罪に問えます。その様子をインターネットで投稿した人物が多くの人の通報で告発され、捜査が及んで逮捕され、有罪判決が出た例もあります。
不適切な多頭飼育は、通報により改善命令を出せる
暴力や精神的な苦痛を与える行為だけが虐待ではありません。動物愛護管理法では「飼い主は、動物の種類、習性に応じて適正に飼養する義務がある」と定められているため、必要不可欠な飼育を行わずに衰弱させる「ネグレクト(飼育放棄)もまた、虐待にあたります。
今、大きな問題となっているのは多頭飼育によるネグレクト。そうした状況に気づいたら、保健所などの担当部署、動物愛護センターに通報をしましょう。飼育をしている飼い主に対しては、各都道府県知事が飼い主に対して期限を定めて改善するよう、命令や勧告を出すことができ、違反した場合は50万円以下の罰金が科せられます。
捨てられた犬猫を見つけた場合も、犯人特定のために通報を
平成25年の改正で、動物の所有者の責務として、「動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)」が明記されました。この原則により、愛護動物の遺棄が禁止され、遺棄した場合は100万円以下の罰金が科せられます。
明らかに捨てられたとみられる犬や猫を発見した場合、保護して飼い主を探す、愛護団体に相談するなど、目の前の命を守ることが重要。と同時に、愛護センター、保健所や自治体の担当部署に連絡し、警察にも動物愛護管理法第44条の遺棄違反であることを通報して、犯人特定の捜査を求めましょう。その際、捨て猫のまわりにあった箱やタオル、手紙などの現物を証拠として残しておきましょう。
文/桑原恵美子(PETomorrow編集部)
構成/inox.
参考資料/「ねこの法律とお金」(弁護士・司法書士 渋谷寛監修・廣済堂出版)
環境省「動物の愛護と適切な管理」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/rule.html