
暑さに備えた身体づくりは「熱中症対策」にもつながる
暑さに備えた身体づくりの代表的な方法として、運動で汗をかくことが挙げられる。しかし、感染症予防の観点から屋外で運動をすることが難しい今、屋内で汗をかく手段を利用したいものだ。
日常生活の中で手軽に汗をかくことができる入浴により汗をかき、暑さに対する身体の適応(暑熱順化)を身につければ熱中症対策につながると考えられる。
そこでバスクリンは、健常人男性を対象に40℃15分のさら湯での2週間連浴が発汗機能や皮膚血流量等の熱放散反応にどのように影響するか検討した。
研究方法
健常な男性に本研究の趣旨について十分な説明を行い、同意を得られた15名(42.2±11.2歳)を対象に試験を行った。
さら湯全身浴40℃15分間の入浴方法を2週間継続することで身体に熱負荷をかけ、試験前後の発汗機能、皮膚血流量、舌下温等の熱放散反応を検討した。入浴試験は2019年5月から7月に実施。研究結果は、平均値±標準偏差で示し、統計処理にはIBM SPSS Statistics version 25を使用し、危険率5%未満を有意差ありと判定した。
研究結果
1. 継続的な入浴の温熱負荷は、皮膚血流量を高める
40℃15分間の全身浴を2週間継続することで、入浴中の皮膚血流量は、試験開始時と比較し、試験終了時(2週間継続後)において有意に高まることを認めた。(ANCOVA)
※図1~図3中の表記については下記を表す。
試験開始時:2週間継続入浴試験前
試験終了時:2週間継続入浴試験終了後
2. 継続的な入浴の温熱負荷は、発汗の開始時間を早める
40℃15分間の全身浴を2週間継続することで、発汗を確認するまでの時間が有意に短縮したこと確認した。これは、熱による発汗の確認がわずかな体温変化で認めたことになった。なお、入浴中の体温変化は、試験開始時と終了時においては有意な差を認めなかった。
まとめ
研究により、継続的な入浴による温熱負荷は、暑熱環境下において皮膚血流量を増加し、発汗までの開始時間を早めることが明らかになった。
さらに、本学会の発表において、冬季に同様な試験を実施した際に、夏季と比較し発汗までの時間は延長したものの、試験前と比較し試験後の発汗開始時間の短縮および入浴中の発汗量の有意な増加を確認した。
季節を問わず、40℃15分間の継続的な温熱負荷は、発汗機能を高めると言える。これらの作用は、日常的な入浴は身体を清潔にするだけでなく、暑熱環境下における身体の適応として、夏季の暑さに備えた身体づくりの手段として有用であることが示唆された。暑さに備えた身体づくりは、熱中症対策にもつながると考えられる。
構成/ino.