国内旅行の需要喚起を目的とした「Go Toキャンペーン」が実施されてるとはいえ、新型コロナの新規感染者数はいまだ増え続けている。梅雨が明けてどこかへ遠出してレジャーを楽しみたいけど、今の時期は怖い……という人も多いのではないだろうか。
そんなときに注目されているのが、近くて低い山を楽しむ ”ご近所登山” だ。
今回、登山アプリ・Webサービス「YAMAP」を運営する株式会社ヤマップが、全国の登山者20,000名を対象に実施した「全国一斉登山トレンド調査2020」によると、コロナ禍の今、登山者の間で”ご近所登山” がスタンダードになりつつあることがわかった。
以下に調査結果の詳細を紹介していく。
緊急事態宣言下での登山。多くの登山者が「活動を自粛」も 、約3割が「近場の山に登った」と回答
今年の大型連休期間中における登山活動については「行かなかった」71.5%と、多くの登山者が活動を自粛し、感染拡大を防止する行動をとっていたことがわかった。
一方、「近場の山に登った」と答えた方は27.3%、「遠出をして山に登った」方はわずか1.2%と、遠征登山を控える動きがあった。また、状況に応じて様々な工夫・対策がとられていたこともわかる。
■緊急事態宣言下における登山活動時の工夫・対策(一部抜粋)
・「マスクでの予防に加え、人のいないルートを選び、可能なかぎり短時間で行動した。」(愛知県・50代男性)
・「自宅から車で30分以内で行けて、歩きやすい登山道がある里山を選び、寄り道もトイレも借りなくて済む距離や時間で終わらせた。」(福岡県・40代女性)
・「県内の中でもマイナーな山を登った。また、駐車場に車が多ければ他の山に変えた。」(福井県・20代男性)
・「人の少ない時間、場所を選んで散歩した。規制されている山には行かず、町内の里山に登った。 」(岐阜県・40代女性)
YAMAP活動日記トレンドにみる登山行動の変化
YAMAPユーザーの動き(活動日記トレンド)からも、登山行動に変化がみられた、下の図は登山者の移動距離の変化を表したのもの※だ。
※算出方法:「YAMAP」を起動し「初めて位置情報の取得を許可された地点 [推定在住地域]」と「実際に登った山(最高地点)の座標」を用い、その移動距離の増減を都道府県別に可視化
緊急事態宣言に伴う外出の自粛要請が求められる以前(2月vs.3月)と以後(3月vs.4月)を比べると、(10km以上500km未満の)移動距離が長いケースについては関東地方を筆頭に減少傾向がみられた。
移動距離が長いケース(2月vs.3月)
移動距離が長いケース(3月vs.4月)
一方で(10km未満の)移動距離が短いケースについては全国的に大幅な増加傾向が確認された。
移動距離が短いケース(2月vs.3月)
移動距離が短いケース(3月vs.4月)
遠征登山を控える動きと時を同じくして「移動距離を減らした登山(≒標高が低い山への登山)」が増加した。さらに、散歩などの「軽度な運動」(登り50m以下移動距離1km以上)に着目しても関東地方を筆頭に全国的な増加傾向が確認されている。未曾有の社会的背景が、登山者の行動意識に大きな影響を与えていることがうかがえる。
今年の登山活動、やめない人が88.8%
では、緊急事態宣言解除後となる現在から、これからの登山活動が、どのように変わっていくのか。登山者の意向を聞いた。
引き続き感染拡大防止に向けた取り組みが続き、これまでの登山活動とは大きく状況が変わりうるとはいえ、今年の登山活動を「やめる」と答えた人はわずか1割(11.2%)だった。登山活動の再開そのものは、引き続き多くの登山者が望んでいる。
野外アクティビティである登山に、密集・密接・密閉の「三つの密」はほとんどない。しかし、人と接触する機会は少なからずある。人とすれ違う際、適切な距離を保つことに配慮する登山者は多く、新しい生活様式と同様に、ソーシャルディスタンスを意識した登山活動が求められている。
マスクの着用意向、登山中は低く、登山前後に高い
登山者同士、ソーシャルディスタンスに十分な注意を払いながらも、移動時や宿泊時など、“三密”に繫がりやすい場面もある。
“三密”場面での感染対策として代表される「マスクの着用」について、その意向を聞いてみると、登山活動中については着用意識が低く、さらにはマナー違反といった批判意識も低いことがわかった。
しかし一方で、登山前後(特に「公共交通機関」と「山小屋」)については非常に高くなっている。屋外/屋内での大きな意識差をみれば、決して「終始着用すること」が求められているわけではないようだ。
登山志向は「個人(ソロ)/少人数」×「日帰り」×「近場」にシフト
「ソーシャルディスタンスを意識した登山活動」と「マスクの携行(必要に応じた着用)」に加え「個人(ソロ)/少人数」での「日帰り」登山も、強く求められていることがわかった。
さらに「遠方の山」よりも「近くの山」に行く機会を「増やしたい」と答えた登山者が15.8%多く、登山活動は、物理的に近しい山と自然を楽しむことから再開されていくように見受けられる。
緊急事態宣言下では「遠征登山を控える動き」に合わせ「移動距離を減らした登山活動」が増え、解除後引き続き「ソーシャルディスタンスを意識した登山活動」と「マスクの携行(必要に応じた着用)」など対策をしながらの登山行動が強く求められていることがわかった。
また、「個人(ソロ)/少人数」×「日帰り」×「近場」での登山志向も総じてみると『近接する人々への心遣いを常にもちあわせながら、近くて低い山と自然を楽しむ』山の楽しみ方 “ご近所登山” がこれからの登山のスタンダードになっていくものと考えられる。
ご近所登山は、登山活動に慣れ親しんだ方でなくとも比較的始めやすい登山の形だろう。しかし、あまりにひと気のない里山や標高1,000メートル以下の低山の中には、たくさんの道があちこちに入り組み、本来歩むべき登山道が分からず「道迷い」に繋がりやすいところもある。
実際、警察庁の調査※によると「道迷い」による遭難事故は全遭難者のうち約4割を占め、例年の最多要因になっていることからも、十分に注意が必要だ。(※ 警察庁生活安全局「平成30年における山岳遭難の概況」)
”ご近所登山”ならこの山!全国の登山者が選ぶ【都道府県別】おすすめの“ご近所登山”ランキング
最後に、全国の登山者20,000名に「眺望の良さ」「混雑可能性の低さ」「往復5時間以内を目安に」という3つの基準に照らし合わせて「これからの登山にお薦めの山※」を教えてもらった。
※本ランキングは、アンケートに基づく山選びの目安であり、実際の混雑状況等は山ごとに異なる。新型コロナウイルスの感染拡大の予防に努めながら、その時々の状況に応じて必要な行動をとっていただくようお願いしたい。
出典元:株式会社ヤマップ
構成/こじへい