花き業界が、コロナ禍により打撃を受けている。花が廃棄される社会問題「フラワーロス」やデジタル格差などの現状を受け、花き業界応援プロジェクトの「with Flowers Project」がアドビ社と花屋向けにセミナーを実施するなど、問題解決に取り組んでいる。そこで今回は、花き業界の厳しい状況やデジタル化の可能性、with Flowers Projectの取り組みを紹介する。
コロナ禍での花き業界の厳しい状況
with Flowers Projectは、2020年4月に株式会社STARMINE PLANNING 代表 長井ジュン氏が発起人となり、有志メンバーによって始まったプロジェクトだ。目的は、新型コロナウイルスによるフラワーロスの問題を解決することと、花とともに暮らす生活を提案することにある。
コロナ禍により、いま、花き業界はどのような状況にあるのか。長井氏は次のように話す。
「with Flowers Projectは、緊急事態宣言後すぐに、知り合いの花農家さまや市場の方に事情を聞き、危機感を持って取り組ませていただいたプロジェクトになりますが、現状は世の中全体が花農家を助ける動きを取ったり、STAY HOMEの中で癒しの効果がある植物を取り入れたりして、だいぶ現状は回復していると聞いております。
ただ、第二波が来て、また緊急事態宣言が出た場合、ウェディングがさらに延期されたり、駅前の商業施設がCLOSEしたりする可能性もあるため、変わらず危機感は持っておくべきだと感じています」
花屋はこれらの課題をどのように対策しているのだろうか。
「多くの花屋さんは、レジカウンターにビニールシートを取り付けたり、並ぶ際は床にシールを貼ったりといった店頭での対策を行ってお客さんに安心感を持ってもらおうとしていたり、ECにおいて農家応援価格で商材を売ったりしています。農家さんの中には、産地直送の花をECサイトで販売したりなど、新たな販路を築く努力をされている方もいます」
ECにおいては、喜ばしい結果が出ている。例えば、2020年度調査で、母の日ギフトの購買先を聞いたところ、花屋での購買が約10%だったものの、オンラインでの購買は約30%となった。
このオンラインでの可能性から、花屋のデジタルシフトは急務といえそうだ。
デジタル化をサポートするオンラインセミナーを実施
しかし、これまでリアルでの販売が主だった花屋にとって、ECに取り組むだけでも大きなチャレンジ。そこでwith Flowers Projectは、花屋のデジタル化のサポートも行っている。
花き業界は他業界以上に「デジタル格差」が深刻であり、若いオーナーは積極的にオンライン化を進める一方、多くの花屋は「小規模経営化」や「オーナー高齢化」が進んでいる場合が多く、積極的なデジタル活用になかなか踏み出せていないのが実状だという。
こうした背景を受け、アドビ社と共同で、2020年8月6日(木)に全国の花屋へ花の撮影・画像加工法やSNS活用をレクチャーするオンラインセミナーを実施した。
参加した花屋は80名近くにも上り、多くの人々がデジタル化のために勉強に励んだ。
SNS活用法のセミナーでは、エージェント株式会社の榎本真太郎氏が、Facebook、Twitter、Instagramのビジネスアカウント登録法や投稿方法、SNSの効果的な使い方などをレクチャーした。
例えば、Instagramの投稿TIPSとしては次のようなことが紹介された。
●統一感のある商品の写真を並べることで、ユーザーに印象付けしやすい。ブランディングの意味でもおすすめ。
●ハッシュタグを使用することで、多くのユーザーから見つけられやすくなる。できるだけ多くつけることで、ユーザーに発見してもらいやすい。
ハッシュタグについては、どうしても毎回、同じものを羅列してしまうという悩みの声も挙がった。効果的なハッシュタグの付け方について榎本氏は次のように教えた。
「ハッシュタグはそれぞれ投稿件数が出てくると思いますが、その件数が多すぎるものをつけてしまうと、ユーザーに検索してもらっても自分の投稿が流れてしまうんです。かといって少なすぎてもよくないので、ビジネスのボリュームに合った件数、100以上~1000くらいまでを狙っていきましょう。
ハッシュタグは一投稿につき30個までつけられるので、多い件数のもの、少ない件数のもの、混ぜながら運用していくのがいいですね。
ターゲット選定をしっかり行い、その人がどういうキーワードで調べるかを想像してそれを設定するのをおすすめします。毎回、なんとなく同じようなものをつけるのではなく、一つ一つの投稿ごとに考えることが必要になってくるかと思います」
帰省の代わりに花を贈る「#花で帰省しよう」
コロナ禍で大型連休中の帰省ができない今、代わりに実家へ花を贈るwith Flowers Projectによる企画「#花で帰省しよう」の第2弾が、このお盆や夏休みの時期に開催されている。
特設サイトには、賛同花屋のリンクがあり、それぞれの花屋サイトから“自分の代わりに帰省させる”花を購入し、メッセージカードと共に、実家に花を届けてもらうことが可能だ。
今年のゴールデンウィーク中に実施された第1弾では、全国の花屋で予想を上回る注文につながり、延べ12万人以上に利用された。例えば、参画した花屋「BOTANIC」は特設サイトにSNSアカウントを掲載したことで、前年比約2.5倍の売上を達成した。
第2弾では60店舗を超える花屋から、お盆にぴったりな花を実家に帰省させることができる。花屋にとっても大きな商機となりそうだ。
今後、どのような構想があるか尋ねたところ、長井氏は次のように話した。
「もし秋や冬などに緊急事態宣言が出るようなことがあった場合、ウェディング需要や秋の花々が出てくる時期、冬のクリスマスイベント、お正月の帰省などもできなくなると予想されます。その場合には、状況に応じて、何か対策を打てたらと考えております」
これからの季節、花が必要なシーンは意外と多くある。花き業界にとってそのチャンスをつかむためには、いかにデジタルシフトを勧められるかがカギをにぎっているといえそうだ。
【参考】
「#花で帰省しよう」
https://with.flowers/
取材・文/石原亜香利