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「6G」のネットワークはどんな技術が注入されるのか?日本では2030年頃ニーズが高まると予想

2020.08.17

 5Gのさらなる進歩と6Gの研究開発を目的に、NTTドコモは「5G Evolution & 6G Summit」を7月29日、30日にオンラインで開催しました。そこから見えてきた「6G」の技術について、先取り紹介します。

無線ネットワークのオープン化、仮想化が進む

 すでに世界中ではじまった、無線ネットワーク技術「5G」。データ通信の高速大容量化や低遅延、多数接続が実現されますが、2030年頃から始まると考えられている6Gでは、そのニーズがさらに高まると予想されます。

 NEC ネットワークサービスビジネスユニット ワイヤレスアクセスソリューション事業部 事業部長代理 大神正史氏は、NECが考える2030年の世界観を紹介しました。

 2030年頃の日本は、ビッグデータを使った精度の高い将来予測が可能になり、情報インフラが整備され、地方と都市のギャップが消失。また、遠隔技術が進化し、自動化、効率化が社会全体に広がって持続可能な社会が実現すると予想しています。

 持続可能な社会を実現するためには、例えば自然災害の被害を最小限に抑える予兆対策もしっかりしなくてはなりません。

それを実現するためのモバイルシステムは、超低消費電力や超多接続、上り通信の大容量化、低遅延、十分なエリアカバレッジなどが不可欠。もちろん、これらはリーズナブルに実現されなくてはなりません。

 そのため、サブ6GHz帯の周波数を使ったエリアや、さらに上の周波数帯を使う非常に小さなエリアなどを利用する無線ネットワークが開発され、それらは複雑に重なりあっていきます。

 もちろん、光ファイバー網との連携も行われ、統合制御されることでしょう。

 大神氏は6Gのネットワークを実現するために重要な3つのポイントを紹介しました。

 1つは、「Open RAN」です。RAN(Radio Access Network=無線ネットワーク)のオープン化が進めば、無線基地局などを作るベンダー同士の機器接続が可能になり、しかも低コストでできるようになります。

 ネットワークの完全仮想化も見えてきています。プロセッサの性能改善と併せてソフトウエアによるコントロールが進むとみられています。

 2つ目は「アプリケーション品質保証」です。6G時代のモバイルネットワークは、刻々と変化するネットワークの負荷を最適化する自動制御が必要になります。NECはリアルタイムでモニタリングし、自動化やAIを使った最適制御を目指しています。

 3つ目は、「100GHz以上のミリ波帯の活用」です。6Gでは100GHz以上の周波数帯が使われそうです。この周波数帯は大容量化が見込めますが、実際に使うとなると様々な課題を克服しなければなりません。NECは150GHz帯の送受信モジュールをすでに試作。研究活動を進めています。

さらに高い周波数帯、複数の無線システムを制御

 NTTは2019年5月に「IOWN(アイオン)構想」(Innovative Optical and Wireless Network)を発表しています。

 これは光(フォトニクス)を中心とした革新的技術を使って、今まで以上の高速大容量通信を可能にする構想です。2030年の実現を目指して研究開発を始めています。

 このIOWN構想と6Gの方向性は同じだと、NTT アクセスサービスシステム研究所 無線エントランスプロジェクト プロジェクトマネージャー 鬼沢 武氏は語っています。

 6Gでは100GHz以上のミリ波帯、さらにはテラヘルツ帯といった未知の領域がターゲットです。鬼沢氏は高い周波数と同時に、低い周波数帯の再利用も含めて考えていく必要があるとしています。

 高い周波数帯の電波はあまり長い距離を飛ばないので、多くのアンテナ、無線装置が必要です。そこで分散アンテナや、A-RoF技術(Analog-Radio over Fiber/高周波数帯無線システム間で無線設備を共用する)が注目されます。

 6Gでは、新たに登場する様々な無線システムが併存するはずです。それを実現するのが「マルチ無線プロアクティブ制御技術=Cradio(クレイディオ)」。ネットワークの変動予測にAIも活用されることでしょう。

 無線ネットワークを、通信以外で使う研究も進んでいます。例えば「無線センシング」。AIや機械学習も使って、人がいる/いない、モノや動物の動きなどを把握できるようになります。

 6Gでは陸上の基地局だけでなく、低軌道衛星やHAPSと呼ばれる、携帯電話の基地局を載せて高高度を飛ぶ無人飛行機も使う予定です。

 そこで導入が検討されているのが「低軌道衛星MIMO技術」です。低軌道衛星に複数のアンテナを載せて、日本の上空へ衛星が来た時、一気にデータをダウンロードする……そんな使い方ができるかもしれません。

 すでにNTT研究所はJAXAと共同研究を推進しています。2022年度に試験衛星の打ち上げが予定されるとのことです。

どこでも電波を届ける柔軟なネットワーク

 富士通 未来ネットワーク統括部 先行技術開発室 シニアマネージャー 伊達木 隆氏は、5Gや6Gに向けた無線技術を紹介してくれました。

 6Gでは「サイバー・フィジカル」システムが広まると予想されています。

 サイバー・フィジカルとは、現実世界とサイバー空間の連携や融合が進み、AIや情報技術により価値あるデータが現実世界にフィードバックされることです。

 すでに一部は実現されています。例えば、中国ではサイバー空間を歩き回り、機器の状態を把握できる遠隔監視システムがすでにあるそうです。

画像は中国で運用されている遠隔監視システム

 これが将来、高度化されることで、遠隔地へ人間が行かずに済むようになり、無人機やロボットの活躍が増えていくでしょう。

 3Dやホログラムといった高精細の映像表現については、今でもかなり進んでおり、将来的には、映画『スター・ウォーズ』のようなホログラムを使ったコミュニケーションも普通にできるようになるかもしれませんね。

 6Gでは、高速大容量、低遅延といった基本性能のブラッシュアップとともに、高精度な測位やセンシング、多彩なユースケースをサポートするための柔軟性が非常に重要になるようです。

 そのため、「高周波ミリ波やテラヘルツ帯を使った通信」「柔軟な無線ネットワークトポロジー」技術に注目していると、伊達木氏は紹介してくれました。

 高周波ミリ波やテラヘルツ帯の周波数を使った高速大容量通信は、ホログラムなど高度な映像技術実現のほか、モバイルフロントホールでの活用も考えられています。富士通は、ミリ波のレーダーや5G対応機器などを開発した過去の経験を活かし、研究を進めていくとしています。

 柔軟な無線ネットワークトポロジーとは、「電波をいかに届けるかという技術」(伊達木氏)だといいます。

将来、わたしたちの周りには今とは比較にならないほど、多くの通信デバイスが取り巻いているでしょう。6Gでは、データを安定して届けられる柔軟な無線ネットワークが必要です。扱いの難しい高い周波数帯の電波を届ける、使いこなす技術開発が急がれます。

 日本では2020年から5Gが始まりましたが、今後も5Gを進化させながら6Gの準備が進むことでしょう。伊達木氏は、2024年あたりで6Gの標準化に注目が集まり、実用化に向けた技術開発が行われると予想しています。

 ネットワークの専門家はすでに6Gの世界を予想し、それを実現するネットワーク技術と課題を把握。研究を進めています。さらに高い周波数帯の活用や、複数の無線システムをシームレスに使える柔軟なネットワーク、AIの活用など多くの技術革新が望まれます。

 それらを使って6Gがどんな無線ネットワークになり、どんなサービスが提供されて社会が変わっているのか……10年後の2030年が楽しみですね。

取材・文/房野麻子

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