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晴れていたのに突然カミナリが…医師が解説する「雷撃傷」の危険性と正しい逃げ方

2020.08.14

医師がすすめるカラダにいいコト! 教えてDr倉田

2020年6月25日インド北部と東部の複数地域で落雷が発生し100人以上が死亡、7月5日には東部ビハール州で10日間に147人が死亡したと、AFP通信により報じられました。

日本では古くから怖いものの代名詞「地震・雷・火事・オヤジ」や

「雷が鳴るとおへそを取られるから、隠しなさい」などと言われてきましたよね。

雷(昔は”神鳴り”とも呼ばれていた)が怖いことは現代でも認識されていますが、「金属製のアクセサリーを外せば安心!? 大きな木の下に雨宿りしていれば安心!?」という間違った思い込みをしている人も多いようです。

外出する機会が増える季節に特に注意したい「雷撃傷」についてご紹介します。

雷撃傷と電撃傷(感電)の違いと共通点?

医学的には、雷の落雷=「雷撃傷」、商用電流(50Hz、60Hzなど)の感電=「電撃傷」と分類しています。

雷撃傷は「数μ秒以内に最高値3万Aに達する高エネルギー衝撃波」ですが、カラダへの通電時間は一瞬です。

一方、電撃傷(感電)は、筋肉が動かず電源から離れられず、通電時間が長くなるので、よりダメージを負いやすい特徴があります。

雷による雷撃傷=「自然由来」、商用電流による電撃傷(感電)=「人工由来」という違いはありますが、「心臓や脳に電流が流れる”電気的ダメージ”」と「通電により体内で発生する”熱のダメージ(ヤケド)”」の2点は共通しています。

「雷撃」は、「潜水艦や航空機が艦船の弱い海面下部分を一瞬で攻撃する」魚雷攻撃を指すことがあり、「気が付いた時はすでに攻撃・打撃を受けた後」という意味で、落雷によく似ています。「電撃」も「戦車の電撃戦(1940年代のドイツ軍の攻撃が非常に有名)」など、素早さを表現する時に使われています。

海上自衛隊の潜水艦(広島県呉市):著者撮影

雷撃傷による事故状況

日本では現代でも毎年20名ほどが落雷で生命を落としています。1960年代から1980年代も毎年20名前後の方が亡くなっていて、生活様式の変化や医学が進歩した現在でも、死者数に大きな変動がありません。

なお日本全国の1年間の落雷数(陸域)は「2019年53万8900回、2018年50万回(フランクリン・ジャパン調べ)」です。

落雷事故は、登山やハイキング・キャンプといった山や海や川、サッカーやゴルフや野球のプレイ中、屋外イベントや農作業中・部活動など、様々な場面で起こっていますが、雷に打たれると約70%が亡くなり、生存した場合も様々な合併症に悩まされることがあります。

それゆえに正しい知識と逃げ方を知っておく必要があるのです。

落雷の種類と正しい逃げ方

落雷は、雷が直撃する(上方から落ちて来る)イメージが強いですが、

「1)直撃雷 2)側撃雷 3)歩幅電圧障害 4)金属から感電 5)お迎え放電」

という5種類があります。

1)直撃雷

周囲に物がない屋外の場所だと、人間が一番高い物体になり、結果的に直撃雷を受けやすくなります。

⇒ 時計や指輪など金属が雷を引き寄せるのではなく、雷の電気がカラダに流れやすくなるので、外す方が安心!

2)側撃雷

雷が直撃しなくても樹木に落ちた雷が、近くの人に飛び移ります。同時に複数人が負傷することにつながっています。

⇒ 樹木の近くでの雨宿りは危険!

3)歩幅電圧障害

落雷点の近くにいると、地表面を流れる電流に感電。

⇒ 地面に座る・寝転がるのは危険!

4)金属から放電

屋外の電線・送電線から屋内の電気機器・電話線に伝わり負傷。

5)お迎え放電

落雷した地面から大気へ放電が起こり負傷する。

落雷の危険性が迫った時は、自動車や金属製の建物の中など屋内に避難することが、最も重要で安全性が高い方法です。

もし屋外で建物が無い時は??

広い場所や屋外で周囲に建物が無く場合には、

1)木などの高い物から約4m離れた場所に移る
2)頭をなるべく低くしてしゃがむ
3)両足を閉じて膝は地面につけない<腹這いにはならないコト!>

このような、『落雷からの被害を最小限に抑える行動をとる』ことが重要です。

雷撃傷でカラダには何が起きている?

雷撃傷は「カラダの内部への通電」と「カラダの表面を流れる電流(沿面放電)」という2種類の影響を与えます。

さらに落雷の衝撃は人間を数メートル跳ね飛ばすほど大きな力があり、頭部外傷や腹部外傷など2次的なケガにつながることもあります。

「カラダの内部への通電」は、雷(強力な電気エネルギー)が脳の呼吸中枢に作用する「呼吸停止」、心臓に作用する「心室細動(不整脈の一種):心停止」を引き起こし、生命に危険を及ぼします。

雷の出す熱エネルギーは非常に大きいのですが、落雷では電流の大部分がカラダの表面に沿って流れ、電流が流れる時間も短く、皮膚表面にダメージを与えやすい傾向があります。

電流が湿ったカラダの表面を流れ、シダの葉状の「雷紋:らいもん、電紋:でんもん」という火花の軌跡<雷によるヤケド>を皮膚表面に発生させます。

時に「目撃者が誰もいない死」とも称される雷撃傷ですが、この「雷紋」が真犯人である落雷の存在を暴き出すこともあります。

雷撃傷では、「骨折、意識障害や錯乱という脳機能障害、睡眠障害・記憶障害、爆傷として鼓膜損傷・白内障」、「雷の音や光に接すると恐怖心で怯えるPTSD(心的外傷後ストレス障害)」など様々な症状が生じます。

落雷事故に直面したらどうする?

雷撃傷は、自分が受傷するだけでなく、家族や友人がケガをして救助を行う場面があるかもしれません。

落雷が起きている天候は、雷の一撃だけで終わらず、二撃・三撃の危険もあります。

まず、救助者が「落雷中は樹木から離れる・落雷地点に不用意に近づかない」など、自身の安全確保を行うことが何より重要です。

救助者が更なる落雷を受けないことが重要で、

雷撃傷を受けた人に、落雷後も電気が流れている(電気を帯びている)」訳ではありませんので、誤解しないで下さいね。<誤解していると結果的に救助の遅れにつながる>可能性があります。

雷撃傷は『通電が一瞬で心臓の筋肉自体への損傷が少ないので、心臓停止時間が長くても蘇生に成功することがあるので、心肺蘇生術を積極的に行う』ことが重要です。

救急隊の到着を待つのではなく、「AED(自動体外式除細動器)」を使い、私たち自身ができる救助活動を始めましょう。

前述の様に、雷撃傷はカラダに様々なダメージを与えますので、詳細な検査が必要です。受傷してしまった時は必ず医療機関を受診するべきでしょう。

現在の日本で雷撃傷を受け、生命を落とす方の人数(年間約20名)は、落雷数(年間約50万回)と比較すれば、必ずしも多いとはいえないかもしれません。

しかし、冒頭のインドでの事故の様に一度に多数の死傷者を発生させる力を持つのが「雷」です。

特に屋外での活動をする方は、雷撃傷についての正しい知識や予防法・対処法を知っておいていただきたいと思います。

取材・文/倉田大輔(池袋さくらクリニック 院長)

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