日本における最強のクルマは何か? 最強という意味は人それぞれだが、個人的には、四季があり、雪国があり、ウインタースポーツやオフロード走行&アウトドアを楽しむ人がいて、なおかつ、日本が地震、災害大国という現実を加味すれば、SUV=オフローダーの電動車、PHV(PHEV)ということになるのではないかと思っている。
最低地上高に余裕ある、4WDのSUVであれば、悪路や雪道も安心して走れ、一歩先まで踏み込める走破性を備えている。災害時には車内外でAC100V/1500W電源を使うこともできるし、自宅への給電さえ可能。特にペットと暮らす家庭では、災害時、避難所の中に入ることも、ほとんどの場合、ままならないから、自宅駐車場の車内をマイ避難所として活用できる安心感も大きな魅力、アピールポイントとなりうる。
そんなSUVのPHV(PHEV)は、これまで三菱アウトランダーPHEVの独壇場であった。三菱ならではの4WD性能、走破性に加え、給電の可能な電源車としての価値は唯一無比だったわけである。ただし、その1台だけでは、選択肢という点では、ちょっと寂しかったのも事実。
が、そうした、日本における”最強の”クルマがもう一台、仲間入りしたのである。それが、2019~2020年日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞の、歴代最強の走行性能、走破性、先進機能を備えたトヨタRAV4に加わったRAV4 PHVである。
内外装デザインは、より上級なあしらいを持たせている以外、ガソリン車、HVのRAV4と大きくは変わらないが、実は、2.5Lエンジン、177ps、22.3kg-m、フロントモーター182ps、27.5kg-m、リヤモーター54ps、12.3kg-m、システム最高出力306psの強大なパワー、トルクに対応するため、GA-Kプラットフォームは北米で売られている、RAV4より上級のハイランダーのものをベースにしている。
実際の動力性能、環境性能もすごい。0-60マイル加速は6秒とスポーティカー並みで、より実燃費に近いWLTCモード燃費はRAV4 HVの20.6km/Lに対して22.6km/Lと向上しているのである(公称航続距離1300km!!)。
改良型2.5Lダイナミックフォースエンジンにアドオンされるリチウムイオンバッテリーは、アウトランダーPHEVの総電力量13.8kWh、EV走行可能距離65kmに対して、RAV4 PHVは総電力量18.1kWh、EV走行可能距離95kmと大きく上回るスペックで登場。実質、約65~70kmのEV走行をこなしてくれるというわけだ。
駆動方式は、さすがにRAV4のアドベンチャーグレードのダイナミックトルクベクタリングコントロールではなく、進化させた電気式4WDのE-FOURとなるものの、4WDの統合制御AIMに加え、スタックからの脱出モードとなるTRAILモード、ヒルスタートアシストコントロールなどを完備。もちろん、ドライブモードも備え、エコモード、ノーマルモード、スポーツモードからその場その場での最適な走りを選択でき、走行モードとしてモーターのみの走行を可能にするEVモード、モーターとエンジンによるスポーティな走りができるAUTO EV/HVモード、電力を温存できるHVモード、電力を使い切った際に、外部充電することなく、自力で発電するバッテリーチャージモードを完備。
こうしたPHVを所有するとしたら、自宅に充電設備を設けるのが理想だが、配線工事不要の100V/6Aなら充電時間は約27時間、200V/16Aの充電設備があれば約5時間30分で満充電が完了する。もちろん、外出時の充電スポット検索も、スマホアプリMy TOYOTAから行えるから安心だ。
RAV4 PHVには、RAV4などでもおなじみのDCM(au製SIM=DCM車載通信機)が完備され、T-CONNECTナビによるオペレーターサービスや緊急時のエアバッグの展開と連動するヘルプネット(SOSコール)も利用できるから、万一の際も安心そのものだ。
では、パッケージ的に、RAV4との違いはあるのだろうか。前後席空間は、より上級、高級な素材の違い、細かい装備差こそあれ、広さ的には同一だ。ラゲッジスペースを覗いても、違いはないように思える・・・のだが、ラゲッジスペースに関しては、ここだけの話、微妙に異なる。実は、RAV4に対してRAV4 PHVのラゲッジフロアは、リヤ部分のPHV化による構造上、前端で約35mm上がっているのだ。それが自然なスロープで実現しているため、見た目にはほとんど分からないのだが、そのため、後席を倒した時にRAV4よりフラットなスペースが出現するのだから、結果オーライだろう。そもそも後席よりラゲッジスペースを重視したパッケージを持つのがRAV4であり、ラゲッジスペースの広さ、使い勝手においてはPHVでも文句なしと言っていい。
改めてRAV4 PHVのエクステリアを眺めてみれば、フロントグリルやバンパー、ホイールアーチモールなどが、ワイルドな樹脂むき出しではなく、高級感溢れるブラックの艶あり仕上げ(ピアノブラックというべきか)になっているのが分かる。インテリアでも、シート地などはステッチが入る、より上級なものに変更されているのだ。もちろん、トヨタ最新の先進運転支援機能のトヨタセーフティセンスがフル搭載されている。
そんなRAV4 PHVを走らせれば、当然、出足から無振動のモーター走行、強大かつジェントルな加速力をウルトラスムーズにもたらす電気自動車状態である。乗り心地はバッテリーなどの重量増もあって、荒れた路面でもしなやかで快適そのもの。そしてあるSUVのカタチをした高級サルーンと言えるハリアーを凌ぐ車内の静かさをも実現しているのである。
が、そうしたジェントルさは、RAV4 PHVの真の姿ではない。アクセルペダルを深々と踏み込めば、モーター駆動によって瞬時に強大なトルクが立ち上がり、強烈な加速Gを伴う、システム最高出力306psの胸のすく加速力を、絶大なる快適感、安心感、さらには絶妙にコントロールしやすく頼りがいあるブレーキ性能(回生ブレーキを含む。スポーツモードで回生が高まる)をも伴って、存分に見せつけてくれるのだ。
冒頭で、日本における最強のクルマ・・・の個人的定義を述べさせてもらったが、試乗後は、それにSUVとして「最強の動力性能」の持ち主、という一文を、加えさせていただきたい。となれば、完璧な1台ではないか。
最後に価格だが、RAV4のHV G、4WDに対して約80万円高となる469万円からの価格とはいえ、装備差によって実際の価格差は縮まるはずだ。個人的にも今、喉から手が出るほどにほしい1台だが、現在、RAV4 PHVはバッテリーの生産能力を大幅に上回る注文を受けているため、注文を一時停止している。今後の生産状況については、改めて案内するそうだが、注文したくてもまだ注文できていない人は、注文再開に向けて、購入準備を進めておくべきだろう。おそらく、注文再開後も、争奪戦になる可能性があるからだ。
トヨタRAV4 PHV
https://toyota.jp/rav4phv/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。