■連載/阿部純子のトレンド探検隊
香港の飲茶を参考にした“動くブッフェボード”ワゴンスタイル
品川プリンスホテルの「リュクス ダイニング ハプナ」は、1994 年のオープン以来、行列のできるブッフェレストランとして、累計約2000 万人の動員数を誇るが、新型コロナウイルス感染症の影響により、3月以降は休業を余儀なくされた。
「お客様の安全を担保しながらブッフェレストランをどのような形にするか頭を悩ませた。その答えが“New Dining Experience”。参考にしたのは香港の飲茶スタイルのワゴンサービス。ブッフェボード代わりのワゴンが各テーブルを回り、お客様には安全で好きな時に好きなだけ好きなものを召し上がっていただく」(プリンスホテル 専務執行役員 東京シティエリア 統括総支配人 武井久昌氏)
従来のブッフェスタイルから、席の配置や提供方法を一新し、安全・安心を前提にした、ワゴンサービスによる食べ放題のエンターテインメントレストランとして、7月15日より営業を再開した。
プリンスホテルが策定した、新たな衛生・消毒基準の「Prince Safety Commitment」に基づき、テーブル同士の間隔をより広くした新たな座席レイアウトに変更。席数は従来の403席から270席へと減らし、ゆったりとした配置に(下記画像は上が変更前、下が変更後)。
スタッフは就業前の検温、手洗い、うがい、消毒を徹底しマスクを着用。ソーシャルディスタンスを遵守して出迎える。客も入店時には手指の消毒、検温を実施、テーブルごとに消毒液も設置。客の入れ替えごとにテーブル、イス、備品は消毒を行う。
ディナータイムの料理の提供は、オードブル、和食、洋食、中華、スイーツなど7種類のワゴンが客席を回り、オープンキッチンで仕上げた料理を出来立ての状態で運んでくれる。客が自ら取り分けるブッフェボードスタイルではないので衛生面でも安心で、席を立つ必要がなく、以前に比べて食事を楽しむ時間が途切れないというメリットもある。
ワゴンサービスを行うスタッフは、和食は着物、中華はチャイナドレスなど、ワゴンにのっている料理が一目でわかるようなコスチュームを着用し、エンターテインメントとしての演出も。
着席するとドリンクと3種類のアミューズのサービスがあり、その後ワゴンサービスで運ばれてくる、スペシャリテ、オードブル、日本料理、中国料理、西洋料理、スイーツの各ワゴンから、好きなものを好きなだけ選んで、テーブルに着席したままいただく。ドリンクは6種類のソフトドリンク、コーヒー、紅茶をワゴン、もしくは直接サーブして届ける。
〇スペシャリテ
ハプナの人気メニューを揃えたスペシャリテ。目玉は営業再開記念特別メニュー(8月31日までの限定)で、1人1皿限定の「テルミドール」(オマール海老のグラタン)。
「3月以降ハプナは休業を余儀なくされたが、止まることなく新しいメニューの開発や、SNSではハプナメニューを家庭で楽しめる取り組みをしてきた。料理長のスペシャリテとして再開記念メニューのテルミドールを提供する」(ハプナ料理長 小川守哉氏)
「国産牛のローストビーフ」はカッティングをして席まで届ける。オープン以来不動の人気のハプナ名物「茹で蟹」もワゴンでお届け。スタッフの衣装にも注目。
デザートのスペシャリテは温かいスイーツの「パイナップルトロピカルジュビレ」と、冷たい「マーブルジェラート」。
「ハワイアンフェアもあって、普段はあまり食べることのできない『パイナップルトロピカルジュビレ』を開発。マーブルジェラート、焼き菓子と、動くブッフェボードとして、お客様のそばにお届けする。デザートは全16種類で、今までとは全く違った内容でスイーツを考えている。料理同様、スイーツも楽しんでほしい」(プリンスホテル エグゼクティブ シェフ パティシエ 内藤武志氏)
〇オードブルワゴン
コーンムースオマール海老添え、パテドカンパーニュ、生ハムパパイヤサラダ、ジャーサラダなど小分けにして届けるオードブルワゴン。
〇日本料理ワゴン
ハプナ風牛ロール寿司、握り寿司、丼、小鉢などをのせたワゴン。
〇西洋料理ワゴン
現在開催中の「ハワイアンフェア」にちなんだ、ハワイアンガーリングシュリンプ、ハプナバーガー、ハワイアンピザなどハワイを感じられる料理を提供。
〇中国料理ワゴン
熱々のせいろに入った、焼売、小籠包、プチ肉まん、海老蒸し餃子の点心、あんかけかた焼きそばなど。
〇スイーツワゴン
ケーキ盛り合わせ、グラススイーツ、焼き菓子など。ケーキの盛り合わせは、入り口近くにディスプレイされているので、組み合わせをチェックできる。
「リュクス ダイニング ハプナ」ディナー(平日17:30 土・休日17:00~22:00):大人6500円(税込・サービス料別)~、子ども4000円~、幼児2200円~。
【AJの読み】お目当てのワゴンがいつ来るのかわからない
従来のように、いちいちブッフェボードに取りに行かなくても済むので落ち着いて食事ができるのだが、逆に、いつ、どのワゴンがやってくるのかわからないので、どの順番に食べるか、どのくらいの量なのか、わかりにくいのが難点。
試食会でも最初はサラダが食べたかったのでオードブルワゴンを待っていたのだが、一向にやって来ず(結局、最後まで来なかった)、先に来た和食や中華、スイーツを食べてしまって結局お腹がいっぱいに。あらかじめ、テーブルにあるメニュー表を確認し、食べる順番や食べたいメニューを決めて、そのワゴンが来るまで待つといった、計画的な食べ方が求められそう。
ワゴンがやってくると確かにワクワク感があるが、ピーク時はお目当てのワゴンがすぐに来ない可能性もあるので、せっかちや食いしん坊の人はイライラしてしまうかも。香港の飲茶でもあるような、メニュー表から食べたいものチェックして注文するオーダー形式も併用してくれるとうれしい。
文/阿部純子