■茂木雅世のお茶でchill out!
もうそろそろ旅行に行きたい…。
そう思っているのは、きっと私だけではないはず。
ちょっとの時間でもいい。日常から脱出できる身近な場所はないものか…
そんなことを考えていた時に、「Medicha」のことを思い出した。
そうだ、Medicha行こう
“メディテーション”(瞑想)
欧米では研修や福利厚生に取り入れる企業も多いと聞くが、日本ではまだあまり馴染みがない言葉かもしれない。
しかし一方で、何にも邪魔されず、自分に余白をつくる時間を過ごしたいと感じている人は多いのではないだろうか。
そんな、何もしない贅沢を味わえる場所。
メディテーションにアートや煎茶文化を掛け合わせたスタジオが東京・南青山にある。
その名もMedicha。
「今、私に必要な場所はここだ!」と思いたち、先日さっそく足を運んでみた。
表参道駅から少し歩いた閑静な住宅街の中に、Medichaはある。
扉を開け、地下へと続く階段を下りていくと、少しずつ静かな空気に包まれていく感覚に…。
靴を脱いで、まずはロッカールームへ。
荷物や携帯を置いて、身軽になり、さっそく日常からの脱出準備だ。
スタジオ内には4つの空間があり、それぞれのステップを経て、自分の心と身体を整えていく。
まずは、五感を開放する「01.Tune In」と「02.Open Up」へ…。
Tune Inは眩しい程に真っ白の空間。Open Upは暗い中に星がまたたく空間。
この正反対の部屋をサウナと水風呂のように自分のペースで行ったり、来たりする。
Tune Inへの扉を開け、一人きりで音と光に包まれると、一瞬、今どこにいるのかわからなくなった。最初はあまりの眩しさに一歩も歩けなかったが、少しずつ慣れてくると日々のモヤモヤが昇華されていくようでとても心地が良い。
しばらくして、Open Upへと場所を移す。
扉を開けると、部屋の温度も少しあたたかく、星空をしばらくぼーっと見上げてしまう程、リラックスできる空間が広がっていた。
大きなクッションがいくつか置かれているので、好きな態勢で過ごしているうちに、全身の緊張がほぐれ、心なしかいつもより呼吸がしやすいように感じる。
この2つの空間を行ったり、来たりしているうちに、まるで遠いどこかへ旅に出かけた時のような気分になっていた。
どれくらい時間が経ったのかも、すっかりわからなくなった頃、3つ目の03.Shiftという空間へと移動する。
竹や木など自然の素材で覆われたドーム型の空間が広がる部屋で、音声ガイダンスに従って、メディテーションを行っていく。
手元にはアーユル・ヴェーダをベースとしたオイルが置かれており、とても良い香りだったので手首につけてみた。
「明日の仕事は…」とか「今日のごはんは…」なんていう雑念が浮かんだ時に、この香りをかぐことで、その時間・場所に戻り、入り込むことが出来る。その体験がとても新鮮だった。
音と香りに集中した約30分間を終え、最後に足を踏み入れるのが04.Alignの空間。
ここでは、自分のためにお茶を淹れ、心に浮かんだ気づきや言葉を和紙に書き綴る時間を過ごす。
部屋の隅に美しい茶碗がずらりと並ぶ棚があり、そこから好きな茶碗を選んで、席についた。
急須は全て現代の煎茶工芸作家の作品。盆、炉、茶合はMedichaのために、新たに考案された作家による逸品だ。
大正時代に創流された煎茶美風流の四世家元である中谷美風氏によって監修されたお茶・茶器・茶道具は、どれも洗練されており、それらに触れ、愛でることで、より一層、外側からも内側からも癒されていくのを感じた。
室内に時計はなく、お茶の横に添えられた、お線香だけが時間の流れを教えてくれる。
お線香が小さくなり、消えていくまで、ゆったりとお茶の味わいと香り、そして自分の心に向き合うことが出来る。
急須を傾け、一杯のお茶に全てを預けているうちに、モヤモヤした思考がすっかり整理されていった。
何もしない時間を過ごす。
“贅沢”という言葉以外見つからなかった。
お茶を淹れて、飲む時。そこがオフィスであろうと、自宅であろうと、ここではないどこかへと連れて行ってくれるように感じることがある。
お茶が持つその力が、様々な演出や上質なコンテンツ、そしてメディテーションが加わることで、こんなにも深く感じられるとは驚きだった。
帰宅している間も、自宅に戻ってからも、ほぐされた五感と心地よい時間が身体に残っており、リラックスして眠りにつくことが出来た。
気軽に旅行へ出ることがためらわれる今日この頃。
日常からちょっとショートトリップしたい…そんな時に、ふらりと訪れてみて欲しい場所だ。
Medicha → https://medicha-jp.com/
文/茂木雅世(もき まさよ)
お茶好きが高じて、2009年仕事を辞めてお茶の世界へ。2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまい始め、現在はお茶にまつわるモノ・コトの企画・商品プロデュース・コラム執筆やメディア出演などの活動を行っている。
ゆるっとお茶を楽しもうが合言葉の“ゆる煎茶部”代表。
FMyokohama「NIPPON CHA茶CHA」では最新のお茶情報を毎週発信中。
煎茶道 東阿部流師範/日本茶アーティスト/ティーエッセイスト
オフィシャルサイト:https://ocharock.amebaownd.com/
Twitter:https://twitter.com/ocharock