■連載/Londonトレンド通信
日本でも、この7月からレジ袋が有料化された。一足早く、2015年から有料化されているイギリスでは、現状どうなっているのか。
結論から言うと、プラスチックごみの削減には、さほど役立っていない。“一生使えるバッグ”なるものが登場したにもかかわらずだ。魔法のバッグ?順を追って説明しよう。
2015年10月5日から、大手各社を対象に、無料だったレジ袋を5ペンスで売ることが義務付けられた。現在のレートは1ポンド=130~140円あたりなので、5ペンスは7円弱だが、感覚としては日本の5円と変わらない。
まもなく、チェーンのスーパーマーケットでは、Bag for Lifeと銘打った袋もレジに置くようになった。価格は10ペンスで、無料から5ペンスになった従来のレジ袋より、しっかりしている。それぞれ多少の違いはあるが、一辺40~50センチほどの四角形で、上部に持ち手、底にマチがついている。
しっかりしているとは言え、しょせんプラスチック袋で、いずれは破れるが、破れたら無料で新しいものと交換してもらえる。それで、Bag for Life、一生使えるバッグというわけだ。
当初、5ペンスのレジ袋と10ペンスのBag for Lifeが並んでレジに置かれていたが、次第にBag for Lifeに一本化された。
10ペンスで一生使えるとは素晴らしい!と思うのは、消費者目線で経済的側面しか見ていない。最後はプラスチックごみになることには変わりなく、エコロジカルな側面からはそこまで素晴らしくはない。
だが、従来のレジ袋より丈夫なのは確かで、繰り返し使えば、買い物する度にもらっていたレジ袋より、プラスチックごみの削減につながるはずだ。
ところが、繰り返し使う気のない人がいるのだ。5ペンスのレジ袋とBag for Lifeが並んでいた頃、5ペンスのレジ袋を選ぶ人がけっこういた。
ほぼ、エコバッグも持たず、財布などポケットにねじ込んで、手ぶらで買い物に来る層だ。そんな人たちは、5ペンス袋無き後、どうなったか?買い物の度に、やはり手ぶらで来て、10ペンスのBag for Lifeを買うようになった。
一方、レジ袋が無料だった頃から、エコバッグを持参していた層は、やはり変わらずエコバッグだ。時折、エコバッグに入りきらなかった分を、Bag for Lifeを買って、入れているのを見る。
要は、レジ袋がBag for Lifeに替わっただけなのだ。5年前まで無料で使っていたレジ袋を、10ペンス支払ってBag for Lifeに代用させているということだ。ペラペラのレジ袋より厚い分、プラスチックごみが増加することになってしまう。
Bag for Life持参で買い物に来る人は、あまりいない。10ペンスの一生ものを有難がる人は意外に多くなかったようだ。
という観察結果を得ていたところに、「Plastic waste rises as 1.5bn ‘bags for life’ sold, research finds」という記事があった。「Bag for Life1.5ビリオン売り上げてプラスチックごみ増加、リサーチで判明」ということだ。
記事には、Bag for Lifeが功を奏した例もあがっている。お隣のアイルランド共和国だ。70セントにしたところ、90%の売り上げ減少となったそうだ。
2019年11月28日付の記事なので調査結果はコロナ禍以前のものだが、コロナ禍以降、人々の購買行動は変化している。
買い物の回数が減り、計画的になった。大きい意味では感染予防のためだが、目先のことで言えば、並ばされるのを避けるために、そうなっている。
スーパーでは、店内人数が一定数に達すると、店の外に2メートル間隔で並ばされ待たされる。順番を待って入店した後、支払う際にまたレジで2メートル間隔で並ばされる。結果、なるべく混んでいない時間帯を選んで、まとめ買いする人が増えた。希望的観測だが、Bag for Lifeの消費量も減っているのではないか。
いずれにせよ、人の行動を変えるには、エコ意識に訴えるより、それなりの金額を払わせたり、並ばせたりする方が簡単と言えそうだ。
文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com