今年の夏も暑くなりそうだ。今から暑さに対抗するために丈夫な身体づくりは欠かせない。熱中症対策も必要だ。熱中症対策の正しいやり方は国からも告知はあるが、今回はプロサッカー選手の暑熱対策をもとに、ビジネスパーソンの対策を探る。
日本サッカー協会(JFA)のサッカー日本代表のチームドクターにインタビューし、プロのサッカー選手の暑熱対策とともに、素人でも応用できることを聞いた。
水分補給は「自分が飲みやすいペットボトル約1本を練習前に」
JFAの公式ページのニュース記事では、サッカー日本代表選手の暑熱対策を知ることができる。練習や試合中に喉が乾いたら手遅れとし、ペットボトル約1本を練習前や試合前に飲むのが理想だという。
ぜひこれは真似したい。一般ビジネスパーソンが外を歩くなどして汗を大量にかく夏場は、事前にどのくらいの水分補給が必要だろうか?
「夏の暑熱下で、避けたいのは脱水症状です。『喉が渇いた』『水がほしい』と身体が感じたときには、すでにかなり脱水状態が進んでいるといわれています。夏の日中は、少しの徒歩移動でも大量の汗をかくため、出かける前に500mlのペットボトル1本を飲んでも多すぎることはありません」
素人にとっては、どんなドリンクがおすすめだろうか?
「水、お茶、スポーツドリンクなど、何を選んでも水分補給につながるので、まずは自分が好きなもの・飲みやすいものを飲むことが大切です。気温が28度以上で湿度が高く、風のない日はとくに要注意。汗をかいても蒸発しないため、気化熱が生じず体温が下がりません。水分補給が足りていても熱中症になることが多いため、体内を一気に冷やすシャーベット状の飲み物やシャーベットアイスを口にしてもいいでしょう」
●スポーツの際におすすめの飲料
プロサッカー選手はどんなドリンクを推奨しているのだろうか?
「JFAでは選手に対して、経口補水液やスポーツドリンクを推奨しています。
大量の汗をかくと水分とともにナトリウムなどミネラル分が奪われるため、これらを補えるドリンクがおすすめです。とくにナトリウム不足は足の攣(つ)りを起こすなど身体への悪影響が大きいため、いち早く血管内に吸収される飲み物が理想です。
経口補水液は、より体に吸収されやすいためおすすめです。自宅で簡単に作ることもできます。ただ、甘さがないと飲みにくいという方もいるでしょう。その場合は、ブドウ糖が多く含まれたスポーツドリンクと、水やお茶を併用するなど、好みを優先して良いと思います」
「身体冷却」の方法も
暑熱対策や熱中症対策には、水分補給だけでなく、「身体を冷やす」方法も重要とされる。
また別のJFAのニュース記事によれば、ヒトの手のひらや足の裏には体温調節のための特殊な血管があることや、体幹部と比べて、腕や脚が身体の熱を効率よく外に逃がす構造となっていることが、これまでの研究で分かっているとされる。
そこで、選手たちが行っているのが、手のひらや腕(前腕部)をバケツに張った氷水に浸水して冷却する方法だ。こうしてトレーニング中の熱ストレスを軽減しながら日々のトレーニングに励んでいるという。
特に暑い日には、ビジネスパーソンもパフォーマンスを下げないために冷却方法は重要なのか。チームドクターは次のように述べる。
「体温冷却のポイントは『送風』と『身体の表面を冷やすアイシング』です。
私たちの体温は、汗をかき、それが蒸発する際に熱を奪われることで下がります。風がない場所では蒸発がむずかしいので、常に扇子やミニ送風機などを携帯するのも一つの方法です。
また、濡らしたハンドタオルで肌をアイシングしてから風を当てると気化熱を生じやすくなりさらに効率的です。顔を洗えるとよりいいですね。また、水分をとるだけではなく、冷たいペットボトルを手に持っているだけでも、手のひらのアイシングになるでしょう」
プロサッカー選手が実際に行っている暑熱対策を紹介してきた。彼らがパフォーマンスを下げないための努力は、ビジネスパーソンにも応用が効くはずだ。ぜひ水分補給と身体冷却を行い、この夏のパフォーマンスを最大限に高めよう。
公益財団法人日本サッカー協会(JFA)
https://www.jfa.jp/
取材・文/石原亜香利