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中秋の名月の食べ物というと、団子を想像する人が多いのではないでしょうか。しかし、その他にもさまざまな食べ物があります。子どもと一緒に楽しく手作りできるものや、食事に合うメニューもあるため、中秋の名月に家族みんなで味わってみませんか?
中秋の名月にはお供え物を準備しよう
さまざまな食べ物がある中秋の名月には、お供え物をする習慣があります。お供え物をする理由やお供えの仕方を知り、中秋の名月の飾り付けを楽しみましょう。
日本でお月見に旬の食べ物を供える理由
美しい月を楽しむ中秋の名月のお月見ですが、単なる観月の行事というわけではありません。豊かな実りの象徴である月に、『秋の収穫を感謝する』意味合いがあるのです。
そのため、里芋・大根・ブドウなどの秋の味覚を中心に、月に似せて作った丸い団子などの食べ物をお供えします。
また、神様が宿る依り代といわれている『ススキ』も一緒に飾るのが一般的です。ススキをお供えすることで邪気を払い、翌年の豊作を願っているともいわれています。
中秋の名月は、旬の里芋に由来して『芋名月』と呼ぶことがあるそうです。この呼び名からも、秋の恵みに感謝するものであることが分かります。
野菜やススキなどと一緒に月見台に飾り付け
用意した旬の食べ物は、『月見台』と呼ばれる月を眺められる場所に飾ります。月へのお供え物なので、家の中で最も月がきれいに見える場所がベストです。出窓の張り出しや窓辺、ベランダ・庭などにテーブルをセットして飾ってもよいでしょう。
日本には古来より『左上位』という考え方があります。これは、左に自然界のものを、右に人工のものを飾る風習です。月見台の場合には、月から見て左に旬の果物や野菜・ススキなどを、右に団子を配置します。
中秋の名月にお供えした食べ物は、下げたらおいしくいただくのが習わしです。月にお供えした食べ物をいただくことで、神様のご利益を得やすくなると考えられています。
秋の七草を飾るのもおすすめ
中秋の名月を楽しむ際に、秋の七草を飾るのもおすすめです。秋の七草とは、萩(はぎ)、尾花(おばな・ススキの別名)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)の七つの植物を指します。
これらは日本の秋を代表する草花で、古くから親しまれてきました。花の美しさや季節感を楽しむだけでなく、名月の夜をより風情あるものにしてくれるでしょう。お供え物と一緒に、これらの花々を飾ることで、より一層豊かな中秋の名月を迎えられます。
中秋の名月といえば月見団子
『月見団子』は、中秋の名月に欠かせない食べ物です。なぜお月見をしながら団子を食べる風習ができたのでしょうか?月見団子の由来や、月見団子にまつわる風習を紹介します。
月見団子を食べる理由や由来
さまざまな旬の食べ物をお供えしてお月見をする中秋の名月は、平安時代に中国から伝わった『中秋節』という行事がもととなり根付いたものです。最初は宮中行事として貴族の間で行われていましたが、江戸時代頃には庶民の間にも広まりました。
月見団子をお供えするようになったのは、『農作物の収穫を感謝して豊作を願う』ことから始まったといわれています。そのため、秋に収穫する米で月に似せた丸い団子を作ってお供えしたのです。
月の神様である『月読命(つくよみのみこと)』は農耕の神様でもあるため、ご利益を願いお供えし始めたとされています。
団子を盗む「月見泥棒」の風習も
月見団子がお供えされる中秋の名月は、子どもたちにとっても楽しいイベントでした。
その理由の一つが、『月見泥棒』です。中秋の名月には、『月見団子を盗んで食べてよい』といわれています。そのため、長い棒に付けた針金で、遠くから月見団子をそっと盗むのです。
子どもたちは月からやってきた使者と考えられているため、団子が盗まれると縁起がよいとされています。盗まれてご利益を得るために、できるだけ子どもたちの盗みやすい場所に月見団子を飾っていたそうです。
現在では、子どもたちが地域の家を回り「お月見ください」「お月見泥棒です」といった声かけをしてお菓子をもらう形で、月見泥棒の風習が残っている地域もあります。
月見団子のアレンジレシピ
丸い形をした白い団子という印象のある月見団子ですが、アレンジ次第でさまざまな楽しみ方ができます。かわいくおいしい月見団子で、中秋の名月をお祝いしませんか?
季節の果物と合わせて「栗団子」
秋が旬の食べ物をお供えする中秋の名月には、『栗』を使うのがぴったりです。月見団子にするなら、団子の中に栗を丸ごと一つ入れると、ぜいたくなアレンジができます。
栗は皮が硬く渋皮をむくのも一苦労ですが、甘露煮の栗を使うと手間がかかりません。甘く煮てある甘露煮は、お菓子にぴったりです。
作るときには、まず団子粉で生地を作ります。栗の甘露煮を包んでゆでたら、みたらしあんに絡めて完成です。
みたらしあんと一緒に団子を温めると、団子のもちもち感がより引き立ちます。栗のほくほくとした食感もたまらないでしょう。
うさぎをかたどった「白うさぎ団子」
白い団子を一工夫すれば、『白うさぎ団子』が作れます。通常の月見団子は丸く作りますが、白うさぎにするときには楕円形に作るのです。ゆでたら、つまようじを使いジャムやココアで目・耳を書くだけで簡単にできます。
目の大きさや位置によって表情が変わるため、いろいろな顔の白うさぎ団子を作ってみましょう。丸い月見団子に耳を付けて白うさぎにする方法や、平らに団子を伸ばして皿に絵を配置するように白うさぎにする方法もあります。
粘土のように形作りをしたり、絵を描くようにデコレーションしたりする白うさぎ団子は、子どもも一緒に楽しみながら作れるのではないでしょうか。
おかずにぴったり「肉団子」
月見団子は甘い味付けのものが多いですが、ご飯のおかずにぴったりのアレンジもできます。例えば、『肉団子』はボリュームがあり大満足の一品です。
ひき肉で作った肉団子を、米粉の団子生地で包んで作ります。包んでゆでてから、しょうゆで味付けしたあっさりめのだし汁をかけて食べると、上品な味わいです。だし汁を多めにして汁物に仕立てても、ほっと温まる一品になるでしょう。
その他の中秋の名月に味わいたい食べ物
中秋の名月の定番である月見団子のアレンジを紹介しましたが、他にもさまざまなお祝いやお供えに適した食べ物があります。旬や月をイメージした食べ物で、中秋の名月をお祝いしましょう。
江戸時代は十五夜といえば「里芋」
江戸時代に庶民の間で始まった中秋の名月のお月見では、『里芋』をお供えするのが定番でした。そのため、中秋の名月には前述の通り芋名月という別名もあります。
農作物の収穫を感謝する意味合いのある庶民のお月見は、稲作伝来前に主食だった里芋など芋類の収穫祭がルーツという説があります。特に大切な作物の収穫を祝い感謝したことから、この時期に旬を迎える里芋を月にお供えするようになりました。
そのため、中秋の名月に里芋料理を食べる地域もあります。例えば、皮付きのまま蒸した里芋をむきながら食べる『きぬかつぎ』は、シンプルに里芋を味わえる、中秋の名月の定番です。他にも、里芋の煮物やコロッケといった里芋料理があります。
縁起のいいツル物「ブドウ」や「旬の食材(大根やさつまいもアンド)」
秋に収穫の時期を迎える食べ物の中には、ツル物もあります。例えば、ブドウに代表されるツル物は『神様との縁をつなぐ』という意味合いが込められ、縁起のよいお供え物と考えられました。
他にも、旬の食材やそれらを使った料理は、中秋の名月にぴったりです。枝豆・栗・柿・梨・大根・サツマイモなどが挙げられます。枝豆や栗・サツマイモなどは炊き込みご飯に合いますし、大根やサツマイモで秋の実りたっぷりの汁物や煮物を作ってもよいかもしれません。
満月を模した「月見そば」
美しい月に見立てた卵を落とした『月見そば』も、中秋の名月にぴったりのメニューです。黄身だけを使うと、きれいな月が作れます。
そばつゆと黄身だけのシンプルな月見そばもよいですが、山芋をすりおろしたとろろと合わせたり、ミョウガやネギなどたっぷりの薬味やなめ茸を添えたりしても、おいしく食べられるでしょう。
構成/編集部