中秋の名月はいつ見えるか知っていますか? 9月の満月の日だと思っている人が多いのですが、実は満月とは限らないのです。意外と知らない中秋の名月について、由来を紹介します。また、十三夜・十日夜についても知り、お月見を楽しむ参考にしましょう。
中秋の名月とはいつのこと?
中秋の名月とは、具体的にいつのことなのでしょうか?どのように決まっているかや、2020年の日付も紹介します。
十五夜である旧暦8月15日を指す
中秋の名月は『旧暦の8月15日』のことです。この日は新月から15日目のため、十五夜ともいいます。現在の暦と旧暦はおよそ1カ月差があるため、中秋の名月は9月半ばから後半くらいにやってくるのです。
桃の節句・端午の節句・七夕など、伝統的な行事の多くが現在の暦に合わせて行われることが多い中、旧暦に合わせて行われる数少ない行事でもあります。
満月以外の場合もある
旧暦は『太陰太陽暦』という種類の暦です。月の満ち欠けによって日付が決まるのが特徴で、毎月1日は必ず新月で迎えることになっています。15日頃に満月になり、翌月の1日は再び新月で迎えるというサイクルです。
十五夜は旧暦の8月15日のため、満月になる可能性が高い日ですが必ず満月になるわけではありません。それは、月の周期が29.5日であり、満月になる日が14~16日と幅ができるためです。十五夜は、旧暦8月15日と新月から15日目と決まっていますが、満月かどうかは関係ありません。
2020年は10月1日で満月の1日前
2020年の中秋の名月は『10月1日』です。満月を迎えるのは10月2日のため、満月の前日の少し欠けた月でお月見をすることになります。
また、中秋の名月は9月の行事というイメージがありますが、必ずしも9月に行われるわけではありません。旧暦の8月15日に合わせるため、10月に迎えることもあるのです。
中秋とはどのような意味?
美しい月を鑑賞できる日として知られている中秋の名月ですが、『中秋』とは何を意味しているのでしょうか?中秋の意味や、中秋の名月の由来を知り、お月見を楽しむ際の参考にしましょう。
中秋の意味は「秋の中心」
中秋は、文字通り秋の中心を意味します。旧暦では暦を春夏秋冬で分け、さらに季節ごとに孟・仲・季と三つに区切っていました。
秋は旧暦では7~9月とされていたため、7月は孟秋・8月は仲秋・9月は季秋と呼ばれたのです。つまり、中秋の名月の中秋とは、『秋の中心である8月15日』のことを意味します。
また、現在では同じ意味として使われている中秋と仲秋ですが、かつては使い分けがされていました。中秋が旧暦8月15日のことであるのに対し、仲秋は旧暦8月の1カ月間を指す言葉です。
中国の「中秋節」が由来
伝統的な行事として根付いている中秋の名月は、中国の観月の宴である『中秋節』が日本に伝わったものと考えられています。
中国の中秋節では、月に見立てて丸く作られた『月餅』という、まんじゅうのようなお菓子を食べてお祝いしたそうです。そのお祝いが平安時代の日本へ伝わり、貴族の間で定着したのが、中秋の名月のお月見のルーツとされています。
また、江戸時代頃に庶民に広まる際、里芋の収穫を祝う行事として広まったことから、『芋名月』とも呼ばれています。
十五夜以外にも月見を楽しむ
お月見をする風習は、中秋の名月だけではありません。他にも、日本独自のお月見や言い習わしがあります。
江戸時代は十三夜も月見をするのが習わし
旧暦8月15日にお月見をする風習は中国伝来のものですが、日本固有のお月見もあります。それが『十三夜』です。中秋の名月のおよそ1カ月後に行うお月見のため、『後の月』と呼ばれることもありました。
江戸時代には、十三夜も広く行われていました。場所によっては屋台が出て、多くの人でにぎわう人気のイベントだったそうです。中秋の名月で天気が思わしくなく、満足にお月見ができなかった場合でも、十三夜を待つ楽しみがあったのかもしれません。
中秋の名月と同様に旧暦に合わせる行事のため、毎年日付が異なります。栗・大豆・果物など秋の実りや月見団子などをお供えするため、『栗名月』『豆名月』などと呼ばれることもあるのです。
「片見月」は縁起が悪い?
中秋の名月だけお月見をすることを『片見月』といいます。十五夜の月を見たら、十五夜の次に美しいといわれている十三夜も見るのがよいとされているのです。
『片見月は縁起が悪い』といわれるようになったのは、中秋の名月に『収穫を祝う』という側面があるからと考えられます。お月見で豊作のお願いをするだけでなく、実りを収穫することが大切と考えられたため、片見月では不十分とされたのです。
東日本で行われる「十日夜」
東日本を中心に、『十日夜(とおかんや)』という旧暦10月10日のお月見が行われることもあります。この日は田の神様が山に帰る日といわれ、収穫を祝うための餅をついて食べるのです。
稲が育つ間、田んぼを見守っていてくれた、かかしにお供え物をする地域もあります。人だけではなくかかしも労い、お月見をさせてあげるのです。
また、稲の茎を束ねて作る、わら鉄砲・わらづとと呼ばれるもので、地面を叩く習わしが残る地域もあります。地面の神様への励ましや、モグラを追い払う目的があるといわれている風習です。
十五夜・十三夜・十日夜の三つを『3月見』といいます。中秋の名月と十三夜に加え、十日夜にもお祝いをすることで、本来の意味のお月見が成立すると考えられることもあるのです。
構成/編集部