雷が落ちたとき、パソコンやテレビへの影響を心配する人は多いでしょう。瞬停(瞬間的な停電)だけなら被害はほとんどありませんが、『雷サージ』が起こると家電の故障を招くこともあります。雷サージとは、一体どのような現象なのでしょうか。
雷サージとは?
家電に被害をもたらす雷サージは、落雷により高圧電流が発生する現象をいいます。雷によって一時的に高い電圧が発生し、通常ではありえないほどの電流が流れるのです。
雷による近年の被害の状況や、家電への影響について解説します。
雷による被害は年々増加傾向
日本国内での雷による被害は、増加傾向にあるといわれています。その理由は、増え続ける雷の発生回数です。雷の被害が増加しているのは、雷を伴うことが多いゲリラ豪雨が増加しているからと考えられているそうです。
1時間の降水量が50mm以上のゲリラ豪雨の回数は、1976~1985年に226回程だったのに対し、2010~2019年には327回程に増加しています。およそ40年の間に、1.4倍も増えているのです。
また、雷が増えているのは日本だけではありません。気候変動の影響により、世界中で落雷の回数が増えています。そのため、世界規模で雷の被害は増加傾向にあるのです。
出典:気象庁 | 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
家電への被害は意外と多い
雷の被害というと、落雷による火災や感電を思い浮かべるかもしれません。しかし、それよりも多く発生しているのが、『雷サージによる家電の故障』です。
雷により発生した電流が、電線・アンテナ線・電話線・LANケーブルなどを通して一気に流れ込むと、家電が壊れてしまいます。
特に、パソコンやテレビなど、機器の制御に電力を使う『弱電家電』と呼ばれる種類は、高電圧に弱く壊れやすいのです。昔と比較して、家電の種類が増えたことも、被害増加の原因といわれています。
また、避雷設備があったとしても、雷サージの発生は避け切れません。加えて、電線や電話線を通して遠い場所まで被害が及ぶため、家電への被害は発生しやすいのです。
雷サージの種類と仕組み
家電の故障を引き起こす可能性がある雷サージには、種類があります。それぞれ、どのような仕組みで発生し、どのようにして家電に悪影響を与えるのでしょうか。
誘導電によって発生 誘導雷サージ
誘導雷サージとは、誘導電によって発生する雷サージです。直接の落雷ではなく、近くにある樹木や建物への落雷により、その周辺にも高い電圧が発生します。
その際、電圧が高くなっている範囲内に電線や電話線があると、その内部に誘導電が発生し、高圧電流が流れるのです。
衝撃の強さとしてはそれほど大きくない誘導雷サージですが、『広範囲に影響が出やすい』という特徴があります。電線や電話線を通じて数km離れた場所で起こった落雷の影響を受けるケースもあるそうです。
対象を直撃する 直撃雷サージ
限定された場所に大きな衝撃を与えるのが直撃雷サージです。その名の通り、雷が電線や電話線などの『電気が流れるものに直撃すること』で起こります。
雷サージに備えて電気設備などを保護していたとしても、被害を完全に防ぐことは難しいほどの威力です。
アースを通って逆流する 逆流雷サージ
電気の事故を防ぐために、家電から電気を逃す役割を持つアースですが、これを通して大きな電流が流れることがあります。これが逆流雷サージです。
アースは地面につながっているため、近隣の樹木や建造物に落雷があると『落雷電流の一部がアースに流れ込む』ことがあります。それにより、家電が壊れてしまう可能性があるのです。
日頃からできる雷対策は?
家電の故障は日常生活に支障が出やすいです。不便を避けるためにも、雷対策について日頃から意識しておきましょう。できることから取り組むことに意味があります。
データのバックアップを小まめにとる
雷対策でまず取り組んでおきたいのは、データのバックアップをとることです。完璧に防ぐのが難しい被害に対しては『万が一のときに対応できる体制』を作れていると安心できます。
例えば、パソコンのデータはモバイルストレージに保存すると便利です。雷サージでパソコンが壊れたとしても、モバイルストレージであれば他のパソコンでデータを使用できます。
加えて、バックアップは常に最新の状態にしておくことが理想です。本体に保存すると同時に、モバイルストレージへの保存もしておきましょう。常に新しいデータを使用できるため、困ることがありません。
また、DVDレコーダーに録画している番組は、気に入っているもの、よく見るものを小まめにDVDに保存しておくと安心です。
分電盤や電源タップで雷対策
分電盤を『避雷器の付いたもの』に変えることで、雷サージの侵入を抑え込めます。落雷によって高い電流が流れ込んできても、避雷器が食い止め、電流を小さくして地面へ逃せるのです。
引っ越しやリフォームを考えている場合は、分電盤の交換も一緒に検討するとよいかもしれません。
より手軽に対策をするなら、雷サージ対策機能の付いた電源タップを導入します。特に、パソコンやテレビなど『雷に弱い家電』には、『高い対策機能の付いた電源タップ』を選ぶのが正解です。
火災保険の見直しや加入
火災保険は、雷による被害も補償の対象です。今契約している火災保険の内容が『十分な補償』になっているか、確認しておきましょう。現時点で加入していないなら、加入を検討するとよいかもしれません。
契約内容によっては、補償の対象が建物だけ・家財だけということがあります。家電の補償が主目的であれば『家財のみ』、落雷による建物の被害を補償するなら『建物のみ』でも構いません。
充実の補償内容を希望する場合には、建物も家財も補償されるプランを契約するのがぴったりです。
また、家財といっても、契約内容によって対象となる家電や家具には違いがあります。具体的にどのようなものが補償の対象なのか確認しておくと安心です。
雷注意報が出たら?
住んでいる地域に雷注意報が出たら、どのような対策ができるでしょうか?雷サージから家電を守り、感電を避けるために、すぐにできることを紹介します。
コンセントから電源ケーブル類を抜く
家電の電源ケーブルをコンセントに差しっぱなしにしていると、落雷が起きたときに電源を通して高い電流が流れ込む可能性があります。そのため、雷注意報が出たら、電源ケーブルは抜くのが正解です。
物理的に抜けば、雷サージによって家電が壊れるのを防げます。高電圧が流れる可能性があるのは、電源ケーブルだけではありません。LANケーブル・アース線・電話線なども抜いておくとより安全です。
既に雷鳴が聞こえる状態の場合には、雷サージが発生する可能性があります。電源ケーブルを抜くときに感電する可能性も考えられるため、ゴム手袋を着けてからケーブルを扱うと安全確保しやすくなるはずです。
感電しないよう金属部などを避ける
雷鳴が聞こえてきたときには、雷サージによる家電への被害はもちろん、自分自身や家族が感電する可能性もあることを頭に入れて行動します。
室内であっても、窓のサッシといった金属部分に触れていると感電する恐れがあるからです。万が一のことを考え、金属部分には触れないようにします。
また、雷の高電圧が水道管を通って室内へ入り込むこともあるため、水回りからも離れておくと安全です。
構成/編集部