シンガポール在住の世界3大投資家の1人ジム・ロジャース氏は、新型コロナウィルス感染症以後の世界株式市場は70%以上の値下がりが予想されると明言しています。その中で同氏が投資しているのが「金」「銀」です。
ジム・ロジャース氏って?
ジム・ロジャース氏は、ジョージ・ソロス氏とともに1973年にクォンタム・ファンドを設立し、10年間で40倍以上もリターンを出しました。このファンドの投資方法として、世界各国経済や金融政策等を全体的に分析して、株式、通貨など様々な資産に投資し、現物だけでなく先物取引やオプション取引も行っていました。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏が現物株式を保有し続け、先物などのレバレッジをかける取引を行わないのとは対照的です。
クォンタム・ファンドを退職した後、現在シンガポールに住んでおり、今でもその発言には影響力があります。
ジム・ロジャース氏が投資している金・銀
新型コロナウィルス以降各国政府は金融緩和により市中の通貨量を増やし、株価が上がりました。
ジム・ロジャース氏によれば、今後は世界各国の債務が膨らみ、通貨量の増加から株価が上がることはあるものの、今後は実体経済の落ち込みから株価も70%以上さがるかもしれない。」と言っています。
同氏は、新型コロナウィルス後の世界を見据えて、有効な投資が金と銀と述べています。それは、今後しばらくは景気が回復することはなく、ここ数年は金・銀の上昇が続くとのことです。
金は、これまで採掘された総量は約18万トンで、現在年間3,000トンペースで採掘されており、地球に残されている金は約5万トン程度で、単純計算でもあと16年で採掘困難となるかもしれません。限られた資源であり希少性が高いこと、さらにドルに代わる安全資産としても保有されています。
昔は、金本位制といって金と交換できる範囲内で紙幣が発行されていました。その後、世界恐慌により紙幣が増刷され金と交換できなくなり金本位制は廃止されますが、今でも金は不変の価値があるものとみなされています。
銀は、これまで採掘された量は100万トンあり、金の約5倍あります。毎年の採掘量も金の約8倍あるため、金より希少性が低く、1g単位の価格が安いのが特長です。加工のしやすさ、熱伝導率の高さから、工業用の用途の割合が高く6割も占めています。
具体的には、食器、通貨、歯科用などの身近なものから、太陽光パネル、電池、化学触媒、医療まで幅広く使用されており、最近では蓄電池、3Dプリンター用インクなど年々その使用量が増加しています。
工業用の割合が大きいことから景気変動の影響を受けやすく、景気が悪化すれば大きく下がる可能性があります。
金よりも希少性が低く安価な銀ですが、銀の地球に残されている埋蔵量は約40万トンで2040年頃には枯渇する可能性があります。銀は加工のしやすさから工業用として必須の資源で、リサイクルが進むと考えられるものの、枯渇すれば必需品となっている銀は価値が高くなるでしょう。
一方で銀は、空気中に存在する硫化水素と反応して硫化銀になる特徴があるため、空気に触れると黒くなってしまいます。磨いたり、専用の洗浄液を使用したりすれば元の色には戻るものの、保管は外気に触れないところでなければなりません。したがって、自宅で現物を保管するには向いていません。
資産分散の一つとして
ジム・ロジャース氏の予想は必ずしも当たっているわけではなく、全面的に信じることはできませんが、金と銀が限りある資源で、いずれは希少価値が上がっていく可能性はあります。
新型コロナウィルス感染症の影響が問題視された2020年3月には世界市場が大きく下落しましたが、各国の大型政府出動や各国中央銀行による金融緩和策により、急ピッチで株価が戻りました。実体経済では失業率の悪化や特に外食・観光・航空産業の業績悪化がみられるものの、株式市場ではそれを横目に大幅に値上がりし、実体経済と株式市場が乖離しているように見えます。
金は、安全資産とされこの新型コロナウィルス感染症の拡大下で価格が最高値付近にあります。
一方、銀は工業用途として使われることが多いため景気に左右されやすく、新型コロナウィルスの感染の第1派の3月のときには大きく下落しました。
しかし、直近は株価同様、銀価格も急ピッチで価格が戻りました。今後マーケットにも実体経済の悪化が繁栄されれば大きく下落する可能性もあります。
金や銀に投資するなら、下落するリスクがあるもののいずれ希少価値が高まっていくと考え、長期で積立投資するのが良いでしょう。
文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。