外で単独生活をしていた猫が飼い猫になると人間になつく理由

猫が人間になつくのは、“錯覚”のせいだった！？

先日、猫の日めくりカレンダーで、

「家に来て15年たちますが、いまだに人を警戒して、あまり近づいてくれません」

という飼い主コメントがついた投稿写真を見ました。

わが家の猫も保護猫で、最初に保護してくれた方がひと冬かけて慣らした後に譲っていただいたのですが、最初の2か月ほどはまったく姿を見せず、ごはんとトイレだけで生存確認をしていたほど。それでも精神的にきつかったのに、15年とは…！

猫は野性では、生後6か月くらいで親元から離れ、独立して、単独で行動をするようになります。ですから外での生活が長い猫は家で飼われても、なかなか人間に慣れてくれない場合もあります。一方、そういう猫ほど、いったんなつくとベタベタの甘えん坊になるというのもよく聞く話です（わが家の猫がまさにそうです）。

そもそも野生では単独生活を送っている猫が、なぜ飼い猫になると人間になつくようになるのでしょう？

飼い猫とは、“一生、大人にならない猫”

子猫が独り立ちする生後6か月は、人間でいえば10歳前後。まだまだ子供のような気がしますが、野生の母猫は年に2～3回は出産をするため、次の出産に備えて子猫を早く独立させなければならないという事情があります。ですから外で暮らす猫はごく早い段階で大人になり、自分で狩りをして食料を得たり、自分で敵から身を守ったりしなければならないのです。

でも飼い猫は違います。一度は外で単独生活を送っていたとしても、人間の家の飼い猫になったとたん、赤ん坊の時に母親がお乳を与え、敵から守ってくれたのと同じ生活スタイルに戻ります。

そのため、最初は人間を警戒していても、しだいにメンタルが赤ちゃん返りし、、飼い主を母親だと思って甘えるようになるのです。その証拠に、飼い猫は大人になっても、以下のような子猫特有のしぐさをします。

1　尻尾を立てて近づく

飼い猫が飼い主に甘えたい気分の時、尻尾を垂直にピン！と立てます。この行動は本来、子猫が母親の世話を求めて近づくときのしぐさ。母猫は、子猫の全身をなめて清潔を保ちますが、この時尻尾が立っていると、お尻をなめやすくなります。お尻をなめて刺激をあたえ、排便や排尿をうながすのは母猫の大事な役目なのです。この記憶が呼び戻されるため、飼い猫は大人になっても甘えたい気分の時は、尻尾を立てて飼い主に近づくのです。

2　毛布や衣服をモミモミする

また人の衣服や毛布などを両手で交互にモミモミするのも、典型的な幼児行動です。子猫は母猫からお乳をもらう時、母親のおなかを交互にもむ習性があります。そうすることで母親のお乳の出がよくなることを、本能的に知っているのです。

飼われている猫は大人になっても、飼い主に抱かれて嬉しい時や、やわらかい毛布にくるまれて安らぎを感じている時などに、このしぐさをします。母親からお乳をもらった時のようにお腹が満たされて幸せな気持ちになっているのでしょうね。

3　人の顔や体におでこをくっつける

飼い猫は時々、飼い主におでこをくっつけたまま眠ってしまうことがあります。子猫は母猫のお乳を飲んでいる時、おでこが母猫の体にくっついています。そして満腹になると、幸福な気持ちのまま眠ってしまいます。飼い猫は大人になっても赤ちゃん気分が残っているため、おでこに何かが密着していると、安らぎを感じるのです。

4　にゃーにゃ―鳴く

猫は「にゃー」と鳴くのがあたりまえ、と思っている人が多いのですが、この鳴き方は、子猫が親を呼ぶ時限定。つまり赤ちゃん言葉なのです。ですから外で暮らす猫は大人になると、「にゃあ」とは鳴きません。このことも、飼い猫が一生、甘えんぼの赤ちゃん気分で暮らしていることの証といえます。

文・桑原恵美子（PETomorrow編集部）

参考資料／「猫好きが気になる50の疑問」（加藤由子著・サイエンス・アイ編集部編・ソフトバンク　クリエイティブ刊）「ネコに遊んでもらう本」（博学こだわり倶楽部、河出書房新社）