1時間に1分も遅れるので、歩度調整してみる
機械式時計は、時間が進んだり遅れたりする宿命にある。24時間で1分ぐらいなら、実用範囲内と言える。私の好きなロシアのVostokは自社製ムーブメントを使い、24時間で20秒ぐらいの誤差なのであまり気にならない。しかし、「8771G」はどこのムーブメントを使っているのか分からないが、1時間で1分も遅れるのだ。8時間で4分遅れるため、もはや不良品レベルなのだが、中国に送り返すのも面倒なので、ここは緩急針を使って調整してみよう。
まず、裏ブタを開ける必要がある。3気圧防水なので、裏ブタが防水仕様になっており、専用工具がないと開けられない。そこで大型腕時計対応三点支持オープナーをAmazonからゲット。固定台座も必要になるので持っていない人は合わせて注文しよう。固定台座は最大径40mmだとミリタリーウオッチが固定できないので、大型腕時計対応タイプを探して欲しい。
「8771G」は三点支持オープナーであっけなく開いた。機械式時計の調整にはマルチファンクション・タイムグラファーという測定器が必要になり、時計を置く姿勢によっても誤差が異なるため、平置き重視にするか、3時9時にするか、12時6時にするかも決めなければならない。片振り調整とか言い出すと面倒なので、今回はザックリと測定器なしで調整する。日差数秒を目指すわけでなく、1時間1分の遅れを調整するだけなので問題ないはずだ。
緩急針を動かして微調整完了
裏ブタを開ける前にハック機能で時計を止めておくべきだったが、忘れていたので、この時点でヒゲゼンマイの動きを止める。このゼンマイで動いているテンプと呼ばれる部分に緩急微調整機能がある。2つの部品に+と-の刻印があるで容易に探せるだろう。下記の画像のAがヒゲ持ち、Bがヒゲ棒で緩急針である。このムーブメントはヒゲ持ちの下に緩急針が配置されているようだ。
調整方法はAとBの距離を広げれば時計は進み、狭めれば遅くなる。動かすのはBの緩急針で、Aは片振りを調整するためにあるので今回は触らない。Bを動かすには突起の部分を細い針のようなもので押してやるしかない。通常は目盛の部分にも突起があって細かく調整できるはずだが、本機にはそのような仕掛けは見当たらない。Vostokにはあるのに全く不親切である。1時間に1分遅れる状態では、この間隔が非常に狭かったので分針が明らかにゆっくり動いていた。つまり、ムーブメントの不具合ではなく調整がいい加減だったようだ。動かす量は測定器がないので勘に頼るしかない。
何度か調整すると満足できるレベルになった。今度、AliExpressでセールがあったらタイムグラファーNo.1000を買おうと思っている。I&W「8771G」はなかなかユニークな機械式時計だが、当たり外れがあるため腕時計ビギナーにはオススメできない。トラブルも楽しめる方にオススメである。しかし、この価格で、こんなに複雑な機械式時計を作ってしまうとは中国恐るべし。
時計が遅れるならBを右側に、進むなら左側に動かして微調整する
写真・文/ゴン川野