新型コロナウイルスの影響で休館がやむなくされていた京都鉄道博物館が2020年6月15日、感染予防対策を講じた上で営業を再開した。一部展示やSL列車に乗車体験できる「SLスチーム号」などは運転を取り止めているが、人気のあの展示車両の特別仕様が期間を大幅に延長して公開中だ!
新駅開業でアクセスが大幅向上!
それまで同じ場所にあった梅小路蒸気機関車館とともに、息づかいの伝わる車両展示と体験に特化した博物館として2016年に開館した京都鉄道博物館。
開館からしばらくは、京都駅から15分程度歩くか、バスを利用してのアクセスだったが、2019年には山陰本線に「梅小路京都西駅」が開業し、この駅からなら徒歩すぐと劇的にアクセスが改善された。
あいにく現在では新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、ボタンなどを押したり、一定箇所に滞留することが予想される展示の一部が見学、体験できない。それでも梅小路蒸気機関車庫のエリアでは、ただ展示されているだけのSLではなく、実際に走行できる状態のSLの息づかいを感じることができるし、トレインビューなレストランも座席数を減らしながら営業中だ。
展示施設ながら実際にSLのメンテを行っている扇状車庫。京都鉄道博物館の特徴的施設のひとつ
京都鉄道博物館ってこんなところ
京都鉄道博物館はJR西日本や西日本地域にゆかりの深い車両が多く展示されているが、可能な限り多くの車両が「トップナンバー」(同じ形の車両でも最初に作られた車両)の収蔵にこだわっているのことも、隠された魅力となっている。また、つい最近まで走行していた豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の機関車や食堂車、客車なども保存されている。引退まで人気の高かった列車だけに、鉄道ファンだけでなく多くの来場者の注目を集めている。
大人気寝台列車だったトワイライトエクスプレスが保存されている「トワイライトプラザ」
そんな京都鉄道博物館だが、0系新幹線などが展示されているプロムナードを抜け本館に入ると、JR西日本を代表する3つの車両が来場者を出迎えてくれる。
一番手前の車両は、当時日本最速の時速300kmを達成した500系新幹線だ。500系は現在でも8両編成で新大阪〜博多間のこだまで運行され、そのスタイリッシュなフォルムからとても人気の高い車両だ。
筆者自身、小さいことから鉄道が好きで、よく東京は万世橋にあった「交通博物館」に親といっしょに行っていた経験がある。しかし、当時幼心ながらに「今、実際に活躍している車両が見たい」という思いがあった。
博物館という存在を考えると、往年の名車を末長く保存することに大きな意味があるのだから、基本的に現役車両が展示されることはほぼない。しかしながら京都鉄道博物館では、まだまだ山陽新幹線で現役バリバリの500系が博物館で間近に、しかも好きなだけ見学することができるということもあって大きな話題になった。
この500系は8両編成の「V編成」と呼ばれている編成の先頭車でなく、「のぞみ」として東京まで乗り入れていた時代の16両編成(W編成)の先頭車、521形の1号車(トップナンバー)だ。博多にある「博多総合車両所」に保存されていたが、本館1Fの奥に展示されている100系新幹線とともに、博多から神戸まで航送され、神戸からここ京都までは陸送を経てはるばるやってきた。
あまり知られていないが、この時航送された船の名前がなんと「のぞみ」で、500系自身が再び「のぞみ」に乗って博多からやってきたというトリビアもある。
本館に展示されているJR西日本を代表する3車両。現在、489系は国鉄色に戻され、500系についてはちょっと特別なラッピングがされているぞ!? 「変わる展示」が京都鉄道博物館の最大の魅力だ!
500系の隣には583系クハネ581形35号車が展示されている。いわゆる「国鉄形」車両だが、最大の特徴はその大きさと車内だ。顔つきこそ、当時主流だった特急車両のそれとそっくりだが、大きさは一回りも二回りも違う。
実はこの583系、昼は座席、夜は寝台と二つのシートアレンジができるという特徴がある。そのため、昼夜問わず一日中運用することが可能で効率がよい車両として重宝された。
JR西日本では大阪〜新潟間を走っていた「急行きたぐに」という夜行列車で最後まで定期列車として運行され、583系の特徴を最大限に生かし、通常の座席タイプの自由席、グリーン席、寝台タイプのB寝台、A寝台とバリエーション豊富なサービスを提供していた。
最後に並ぶのが489系クハ489形1号車だ。ボンネットタイプの国鉄形特急車両で、こちらの車両は特急「白山」などで運行され、JR西日本の車両でありながら上野駅まで足を伸ばしていた車両だ。
その時経由していた信越本線は軽井沢〜横川間に碓氷峠という難所があり、ここを通過する際に489系は電気機関車の力を借りていた。この電気機関車と協力して走る特別な機構を持っているのが489系最大の特徴だ。
変わる展示が魅力の京都鉄博
鉄道の博物館というと一度展示車両を搬入してしまうと、基本的には展示車両の変更は行わない(行えない)のが基本だが、京都鉄博の場合はそうではない。本館奥には「展示引込線」と呼ばれる、今でも日本中の線路とつながっている線路があり、適時展示車両が入れ替えられるようになっているのだ。
過去にも北海道で活躍するJR貨物の機関車などがやってきたこともあり、実際にお客さんを乗せて走っている列車や仕事についている車両が普通に展示されている。先ほど挙げた489系もクリーム色に赤いラインの「国鉄色」から、かつて塗装されていた白色の「白山色」というカラーリングにラッピングで変更されていたこともあり、こうした「変わる展示」を行っているのも楽しいポイントだ。
アンケートをとって実施された489系白山色ラッピング。今では通常の塗装に戻っている。
館内の「展示引込線」。理論上、日本のJR在来線ならどの車両を入れられる設計だ。