新型コロナの影響下でマスク不足に陥ったなか、各社が業界問わずマスク開発に乗り出し た。そんな中、独自の技術をマスクに活かせないかと名乗りを挙げた会社がある。それは、ヤマシンフィルタという油圧フィルタを開発する会社だ。
フィルタの会社がマスクを開発というとあまり具体的なイメージが湧きづらいが、マスクの性能としては他のマスク以上といわれる。
そこで、マスク開発のきっかけや性能について探るべく、担当者にインタビューした内容を紹介する。
ナノファイバーでウイルスをキャッチ
ヤマシンフィルタ株式会社の開発した「ヤマシン・フィルタマスク」は、一見、普通の不織布マスクに似ているが、その素材が異なる。超極細繊維の小さな孔でウイルス等の異物を キャッチし、高性能が長く続く。
その素材は、ヤマシンフィルタが開発した合成高分子系ナノファイバー「YAMASHIN NANO FILTER(TM)」という特殊な素材。
そもそも、ヤマシンフィルタは工事現場で使われる機械の油をこす、油圧フィルタを開発する会社である。そのフィルタ会社がなぜマスクを?
ヤマシンフィルタ株式会社 経営企画室の綿貫祥子氏に開発経緯などを聞いた。
「もともと当社は、60年以上にわたってフィルタの製造開発を行ってきた会社です。汚れた油を濾すための革新的なろ材の開発に長年取り組んできた中、数年前、3次元立体構造を持つナノファイバーの量産化技術(国内特許取得済)を確立しました。
そのナノファイバーは、ナノレベルの超極細繊維が複雑に絡み合ってヘチマタワシのような立体構造を形成し、繊維径よりもさらに微細な無数の空隙を有しています。この空隙によって液体中のゴミ(マイクロレベル)を取る、空気中のウイルス(ナノレベル)を取る、光、熱、音を取るなどの特性を、建機用油圧フィルタ以外にも応用できないかと考えていたときに、マスクもフィルタの一種ではない?と思いつきました」
N95マスク同等の効果を実証
マイクロレベル、ナノレベルでさまざまなものをキャッチするというこのフィルタ技術が活かされたヤマシン・フィルタマスクは、医療従事者によって使用されている、あのN95マスクと同等の効果も実証されているという。
ヤマシン・フィルタマスクと、N95マスクや一般的な使い捨て不織布マスク、布マスクとの性能比較試験を実施したところ、一般的な使い捨て不織布マスクと布マスクは、粉塵(直径1μm)を容易に通してしまうが、ヤマシン・フィルタマスクやN95対応品は通さないことが分かった。
また長時間着用時の捕集性能の低下率も低い。一般的なマスクは、静電気の力に頼って、チリをこぼさないようにしているが、ヤマシン・フィルタマスクは静電気ではなくナノレベルの高密度な素材自身で捕集するため、24時間後も捕集性能の低下9%に留まっている。
このナノフィルタを使用したマスクシートも別途、作られている。その「ヤマシン・フィルタシート」を市販の布マスクに重ねて使えば、ヤマシン・フィルタマスクの高性能なマスクへと変化する。
何度洗っても劣化しない
市販の使い捨て不織布マスクなどは、繰り返し使用することが推奨されていない。
一方で、ヤマシン・フィルタマスクとマスクフィルタシートは押し洗いを 5 回行っても捕集性能の低下がほとんどないことを社内試験によって立証されたそうだ。
「当社のナノフィルタは、原則、何度洗っても性能の落ちは軽微です」水洗いするほか、アルコール除菌でも繰り返し対応可能だそうだ。
価格設定の背景
ヤマシン・フィルタマスクは5枚入りで825円(税込)で販売されている。1枚165円ですが、他の不織布マスクと比べて価格は高い。価格設定はどのようにして決まったのだろうか。
「当社初の一般消費者向け製品ということで、価格設定には、社内でも色々と議論がありました。
他の市販の使い捨て不織布マスクと比較して、高い捕集性と持続性という高付加価値、日本製という安心安全、押し洗い可、といった点も勘案し、現在の価格設定に至りました。
ただ、経験効果でコストダウンの目途も立って参りましたので、より多くの方にお使いいただきたいという観点から、今後販路拡大と並行して、商品ラインの充実や割引優待等の施策を現在、鋭意検討しております。詳細は決まり次第、公式サイトからのリリース等によって適宜告知いたします」
今後もマスク生活が続くと見られるなか、高性能のマスクに衣替えしてみるのもいいかもしれない。
【取材協力】
ヤマシンフィルタ株式会社
ヤマシン・フィルタマスク
http://www.yamashin-filter.co.jp/ja/business/nano_mask.html
取材・文/石原亜香利