もとは商用車だったルノーの『カングー』が日本でも若者の間で根強い人気を誇っている。その牙城を崩すべく上陸したのが同じくフランスのシトロエン『ベルランゴ』。今回は2台の違いを徹底検証する。
クルマを道具として使うライフスタイルは日本だけでなく、アメリカやヨーロッパにも存在する。
しかし、道具として果たす役割が地域によって異なることはあまり知られていない。例えば、日本だと部屋代わりとして使われることが多く、アメリカ的な使い方に近い。そのため、カラフルなBOX系のミニバンやSUVなど室内空間に広さや快適性が求められる。
ところがドイツではアウトバーンを飛ばして長い距離を走る人が多いことから運転性能が重視され、セダンがベースのステーションワゴンが人気。またイタリアの場合、小型車が中心なので2BOXのハッチバックが主流だ。
一方、フランスはというと、庶民の生活の道具として使われることが多いため、室内の広さ、実用性、経済性をバランスよく満たしてないと受け入れられない。また、フランスもドイツに負けないぐらい高速道路中心の交通事情なので、当然クルマには運動性能が求められる。それがたとえ大衆車であったとしてもフランス人はアクティブに走る。排気量や出力の低さは気にしない。
そしてボディーも排気量に対して大きめで、1BOXやSUVのように着座位置は高くない。〈乗用車×ステーションワゴン×広い空間〉という形状が好まれた結果だ。日本の軽ハイトワゴンもこれにかなり影響を受けている。
フレンチハイトワゴンは、1960年代にルノーが発売したのが最初で、当時は貨物用だった。それを乗用車として造り替えたのが1997年にデビューしたルノー『カングー』だ。このクルマがヒットしたことでヨーロッパではシトロエンやプジョーをはじめ、フィアットやVWも類似車を発売した。だが日本には2002年になってようやく上陸。現行モデルは2007年に登場した2代目で初代より大きくなり、室内も広くなった。
一方のシトロエン『ベルランゴ』は1996年に商用車として登場。現行モデルは2018年のジュネーブショーで公開された3代目にあたる。今回、ルノー『カングー』の人気の高さ(※ユーザーの半分以上が30代)に注目し若年層のファン拡大を狙い、日本に投入された。ちなみに姉妹車のプジョー『リフター』もまもなく発売されるが、スタイリング以外はほぼ同じ。
人気不動の『カングー』にどこまで迫れるか。フランス車のバトルが楽しみだ。
家族や仲間がひとつになれるクルマ
シトロエン『ベルランゴ』
Specification
■全長×全幅×全高:4405×1855×1840mm
■ホイールベース:2785mm
■車両重量:1590kg
■排気量:1498cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
■最高出力:130PS/3750rpm
■最大トルク:300Nm/1750rpm
■変速機:8速AT
■燃費:非公表
■車両本体価格:325万円
※「デビューエディション」
ボンネット上部にエンブレムとポジションランプを配し、その下にヘッドライトをレイアウト。これがシトロエンの新世代デザインの特徴。フロントとサイドの白枠デザインもユニークだ。
ボディーサイド下にある黒い部分はゴム製でエアダンプと名づけられており、歩行者保護の機能を備えている。これもシトロエンの新世代コンパクトカーの特徴。ボディーカラーは3色。
全幅は1855mm、全高は1840mmもあるので大きく見えるが、運転してみると取り回しはラク。運転席からの見切りも良好。リアゲートは跳ね上げ式だがウインドウ部分の開閉ができる。