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楽天モバイルが6月に予定していた5Gサービス開始を延期した本当の理由

2020.06.14

「Rakuten Link」、人材流出などの問題点

法林氏:ちなみに、MNOの楽天モバイルのウェブページを見ていたんだけど、動画コンテンツとかは、いわゆる通信業界でいうところの「最適化」が図られるので、まったく同じデータにはなりませんと書かれている。でも、これって、以前は表示されていなかった気がするんだけど、今は表示されるようになったんだね。これも突っ込まれたからなのかね。

石川氏:やってみたら相当、厳しかったんじゃないですか。無料だからと、みんながバカスカ使うから。

石野氏:約款と規約には書いてありました。速度制限については書いていなくて、初日に「帯域制御のガイドラインに違反しているんじゃないですか?」と電話で突っ込んだんですよ。そうしたら、「一律でやっているわけではなくて、あくまで混雑時に可変でやっているから」という言い訳をしていたんですけど、どう見ても一律で制限がかかっているようにしか思えなかった。それで、いろんなところから突っ込みがあって、そういう但し書きを入れたんだと思います。そういうことも含めて、徳永さん(先日、楽天モバイルを退職した副社長だった徳永順二氏)とかがいれば、ちゃんとしていたと思うというところもあって、人材が抜けてしまったところが本当に心配ですね。

石川氏:今後、いろんなところから刺されるんじゃないかなぁって気がしている。速度関連、Rakuten Linkにしても。Linkの仕組みだと音質の確保ができていないので。

石野氏:電話番号を割り振っていいのか問題もある。

石川氏:総務省的には、本当はアウトなんじゃないかなぁって気がする。5月にあったIIJmioのファンミーティングでも、「MVNOでもIP電話ベースで090/080番号の電話サービスをやらないのか」という質問があって、その回答に「音質を担保できないので」というようなことを言っていた。

石野氏:QoS(Quality of Service:サービス品質)をとれていないと03番号とか090/080番号は割り当てられないはず。Rakuten LinkはRCS(Rich Communication Services)を使ってはいるけれど、無線部分の制御まで本当にしているのかというと、ちょっと怪しいところがあり、そうするとVoLTEと同じ扱いで電話番号を割り当てていいのかという部分は、結構グレーな感じですね。緊急通報とかもできないし。

石川氏:緊急通報をかけるときには、普通の電話になるんでしょ?

法林氏:どうして総務省が何も言わないのか、結構不思議ですよね。かつて050番号のIP電話が始まったときに、散々、総務省は「ダメ」を言いまくったわけなので。

石野氏:たぶん、同じコアネットワークでVoLTEと自動で制御しているから、というような、いろんな理屈はあるんだろうなとは思うんですけど、ちょっと……。あと三木谷さんが、パートナーエリアでのデータ容量の上限を2GBから5GBにしたことが伝わっていないというのも、マーケティングを主導していた人(大尾嘉宏人氏)が抜けちゃったからじゃないですか、みたいなことはちょっと考えてしまいました。

石川氏:明らかに三木谷さんの思いつきで増やしているよね。

石野氏:たぶん、大尾嘉さんが残っていたら「サービスイン当日に容量を増やしても、誰にも伝わらないですよ」って言っていたと思うんですよ。

石川氏:そうだろうし、あれをやったら儲からないよね。

法林氏:収益的に大丈夫かとは、ずっと見ていて思うね。あのまま行ってお金が回るかどうか。「やってみたけれど、やっぱり回りませんでした、お金がないからやっぱり止めます」っていうのは、ユーザーとしてはたまらないので。

石川氏:KDDIもソフトバンクも、優良顧客を囲い込みつつ、安価なブランドを用意している。航空会社と一緒で、JALとかANAは、お金をたくさん払ってくれて、バンバン飛行機に乗ってくれる人がいる。一方で、安く旅行したい人向けにはLCCがある。その人たちも取り込まなきゃいけないからLCCに出資したり、自分たちで子会社を作っているという感じの二極化が、携帯電話業界でも起きている。現状、楽天はLCC部門しかできていない。この先、たくさんお金を払ってくれるユーザーをどう作っていくかが、長期的な課題なんだけど、そこは難しいだろうと思う。安さに群がるユーザーを集めると、後々厳しくなるというのは、携帯電話業界では何度もあること。なかなか大変だなと思いますね。

石野氏:逆にいうと、2980円で使い放題のプラン「Rakuten UN-LIMIT」は、インパクトはあるんですけどね、エリアさえ伴っていれば。インパクトはあるんだけど、インパクトだけでは食べていけない。

房野氏:同じように低料金を売りにしていたソフトバンクは、どうやって上昇できたのですか?

石川氏:ソフトバンクは、ホワイトプランを作ったときに、それこそ安く使いたいユーザーしか集まらなくて結構厳しかったんだけど、そこにiPhoneという神風が吹いた。当初はiPhoneを安くばら撒いたけど、そのiPhoneを高くてもみんな使うようになった。iPhoneを使い放題的に使うというロイヤルカスタマーができたので、結果として良かった。そして今、iPhoneユーザーのソフトバンクとY!mobileという棲み分けができた。

房野氏:ホワイトプランができた当時は、ソフトバンクはいわゆるプラチナバンドは持っていなかったですよね?

石野氏:なかったです。

房野氏:では、ハンデを背負いながら価格勝負をしたんだけど、iPhoneのおかげで優良顧客を得られたという感じなんですね。

法林氏:それと、あの当時は端末で結構稼げた部分もあった。何十色のカラバリを持つ端末も出したし、商売としてはマズくないし、顧客は増やしたけれど、本当に稼げたのかは微妙なところもあった。

石川氏:ソフトバンクは、「新スーパーボーナス」という、ユーザーに割賦で端末を買わせることによって、それを集めて債権化して、お金を借りたり売ったりという、見えないところでお金を借りる、稼ぐというスキームを作った。あれはあれで素晴らしいビジネスモデルだったと思います。今は端末代金が安くなっていて、そういう買い方もなかなかしないので、違うやり方を見つけなくてはいけないんだろうなと思います。

房野氏:楽天の端末施策は難しいんですか?

法林氏:安く売っているよね。ラインアップ数はそんなに多いわけではないけれど、「Galaxy S10」とかも安売りしている……結局、そこもポイントで返すんだよね。

Galaxy S10

石野氏:楽天は確かにポイントが付きます。先日、靴を買ったら3000ポイントも付いた。

石川氏:自分も、無料サポータープログラムで端末を買ったり移行したりで、2万とか3万もポイントが付いたので、それで温泉に行きましたからね。

法林氏:すごいですね。

5Gはこれからどうなる? 課題は?

房野氏:開始は延期されましたが、楽天が5Gを始めるにあたってアドバンテージはありますか?

石野氏:ゼロベースでできるところは、アドバンテージといえばアドバンテージ。5Gに限っていえば、スタート地点は他キャリアとほぼ同じなので、だからこそ本当は6月にスタートしているべきだった。

房野氏:9月はあまりよろしくないと。

石野氏:他社は3月下旬に5Gを始めているので、ゼロベースでスタートするんだったら同じ時期から始めた方が、基地局数でも競争できたし、スタンドアロンの5G(5G SA)のローンチも早くできる可能性がある。遅れて良いことは1つもない。

房野氏:3社の5Gユーザーはどんなイメージですか?

石川氏:ドコモは決算発表の時点で4万契約と言っていた。KDDIとソフトバンクは数を濁している。だから、数万に行っていればいいかなレベルだとは思います。

法林氏:KDDIはドコモと変わらない感じだよね。

石川氏:「傾向としては変わらない」という言い方をしていた。

石野氏:傾向ってなんだよって思いましたけど(笑)

石川氏:ドコモのユーザーは5Gの契約にすると、使い放題になって明らかに使い方を変えることができる。ドコモユーザーは5Gに乗り換えるメリットがある。ソフトバンクとKDDIは、4G向けの料金プランとほぼ変わらないので、5Gに変えてもあまり意味がないというか。まぁ、KDDIはテザリングの容量の上限が変わるけど、それ以外は4G向けプランでも良かったりする。たぶん、ドコモほど乗り換えていない感じがする。楽天に関しては、大手3社が4Gの周波数帯で5Gを始めるようになると、全国に5Gエリアが一気に広がっちゃうので、楽天にとってみても差が広がってしまう。KDDIは楽天に対して5Gネットワークは貸さないみたいな言い方をしているので、そうなると見劣りしちゃうんじゃないかなと思いますね。

石野氏:4Gの周波数帯を5Gにも転用するDSSって、早ければ秋に始まるから、楽天が5Gをスタートした段階でソフトバンクとかの5Gエリアがドーンと広がったりする可能性が無きにしも非ずですよね。

房野氏:DSSを導入すると、通信速度は変わりますか?

石川氏:たぶん4Gと変わらないんじゃないかな。

房野氏:5G SAの導入はいつですか?

石野氏:ソフトバンクは決算でそれを発表していて、2021年度中みたいな感じだったかな。

石川氏:各社、だいぶ早まって2021年くらいになる。

房野氏:では、楽天は今年中に5Gで追いかけていないと、危ないですかね。

石川氏:5G用の周波数の1つである3.7GHz帯は屋外で使うのが難しい、屋内で5G対応しましょうかという話になっています。とはいえ楽天は屋内のエリア化はほとんどやっていないので、そうなると3.7GHz帯を持っていてもあまり使えないんじゃないか、みたいな感じになっちゃうなぁ……という気がする。

石野氏:楽天の5Gの延期は、本当にロックダウンのせいだけなのかっていうのは、若干、気になるところ。

房野氏:4Gでの通信障害が、5Gでも影響するってことはありますか?

石野氏:楽天モバイルが原因を全然発表しないので分からない。しかも、障害が起きているポイントが、毎回違ったりするので、どうなのか分からない。三木谷さんは、サービスを始める前は「ウチは完全仮想化だからソフトバンクのような通信障害は起きない」って言っていたけれど、全然。仮想化のポイントで起きているじゃん、ソフトウェアの不具合じゃんっていうような障害が起きている。

石川氏:あんなことを言っちゃう段階で、もうアウトだよね。

法林氏:楽天のダメなところはそこ。他社に対してどうこう言う暇があったら、自分たちの足下を固めろってところが、あまりにも多すぎる。

石川氏:そうなんですよねぇ。

法林氏:それを改めない限りは、たぶん無理だと思うんだなぁ。

石野氏:なんですかね。あと、三木谷さんの発言は技術を分かっていない感じで心配になる。

法林氏:決算や発表会に登壇して話す人の中に、タレック・アミン氏以外に技術の分かる人がいない。ソフトバンクCTOの宮川さんはまた別としても、大手はある程度の下地がある人がいるじゃない。KDDIの髙橋社長もその昔、基地局を建てていたわけだから、一応分かっているわけですよ。

石野氏:ドコモの吉澤社長もそうですよね。

法林氏:吉澤さんもそうだし、みんなそうなんだけど、三木谷さんも山田さんも分かっていないのが、ちょっと痛いなというか、質問に対する回答が全部抽象的で、本当に言わなきゃいけないことを言えていない。よっぽど昔の孫さんの方が殊勝だった気がする。「ウチはチャレンジャーだから、こうやってモノを揃えてやります」という言い方をしていたのが良かった。

石川氏:楽天モバイルは、アミン氏が推す「Rakuten Communications Platform (RCP)」を、海外に売っていく方向がメインになるのかなと。5Gをやりますといっているけれど、国内でやりたいことについて楽天は何も言っていない。でも、RCPに関しては毎回言及していることを考えると、とにかく自分たちのシステムをプラットフォーム化して世界に売っていきたいというのが楽天のモチベーションとしてあるんだろうなという気がします。でも、安定した実績を作らないことには、誰も買ってくれないよねって感じもするしなぁ。

石野氏:そう、あれ、本当に買う人がいるのかなというのが心配。

石川氏:シンガポールのキャリアに5Gの技術を提供する話があったけれど、結局、そのキャリアは5Gの免許がもらえなかった、とかだったよね。

石野氏:そうです……三木谷さんはPCR検査キットを売りさばこうとして失敗し、アミン氏はRCPを売りさばこうとしていますが……。あまり3文字略語は使わない方がいいんじゃないかな(笑)

……続く!

次回は、続々登場する最新のアップル、Microsoftの製品について話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘

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