はるか昔から古今東西の人間を魅了し、数え切れないほどの争いを引き起こしてきたもの。
……そう、それは権力だ。
一度でも絶大な権力を握ると、その快感がヤミツキになるのかもしれない。
だが力量を超える権力は、持つ人間を必ず破滅させるもの。
Amazon Prime Videoオリジナルの『エル・プレシデンテ ~南米・チリ サッカー界の闇を知る男~』も、そんな権力を巡る物語のひとつ。
今年6月5日から、世界同時配信がスタートした。
2015年に起こった“FIFA(国際サッカー連盟)汚職事件”を題材とする本作は、サッカーを金儲けの手段としてしか考えない魑魅魍魎たちの生臭いやり取りを、赤裸々に描いている。
主人公セルヒオ・ハドゥエ役は、『パブロ・エスコバル 悪魔に守られた男』で麻薬王パブロ・エスコバルを演じたアンドレス・パラ。
主人公の妻ネネ役は、Netflix オリジナルドラマシリーズ『ナルコス』でパブロ・エスコバルの妻役を演じたパウリナ・ガイタン。
あらすじ
南米チリの小さな町で無名のBリーグ・チリサッカークラブを率いていたセルヒオ・ハドゥエは、南米サッカー連盟の陰謀によって、ある日チリサッカー協会の会長に担ぎ上げられる。
セルヒオ以上に野心家で切れ者の妻ネネは、彼の大出世を大喜び。
ネネは更なる権力の獲得に燃え、ポカン顔のセルヒオにあの手この手でハッパをかける。
一方南米サッカー連盟の汚職事件を捜査しているFBI捜査官ハリスは、セルヒオにロックオン。司法取引(密告を行う見返りとして罪を免れるというもの)を持ち掛ける。
追い詰められたセルヒオは、次第に罪悪感に苛まれるようになるが……。
見どころ
神聖な優勝カップをセルヒオがサワサワと撫でまわすシーンは、まさに権力の上にあぐらをかいた人間の不遜さを象徴している。
利害関係の一致した邪悪な古狸たちが私利私欲を満たすために結託し、本当に才能と人望のある善良な人間を追い出す……。
本作に描かれているのは、どんな国のどんな集団においても高確率で起こり得る、普遍的な人間模様ではないだろうか。
サッカーファン以外の人が見ても、共感できるところが多いはずだ。
『エル・プレシデンテ ~南米・チリ サッカー界の闇を知る男~』シーズン1
Amazon Prime Videoで独占配信中
文/吉野潤子