数年前から耳にするようになった「筋膜リリース」。「全身を覆う筋膜を解きほぐす」ことだが、在宅勤務が増え、再び注目が集まっている。そこでいま一度、その効果と方法について解説する。
運動生理学者・理学療法士
竹井 仁さん
「筋膜博士」の愛称で知られる筋膜リリースのスペシャリスト。「筋膜博士の筋膜整体院」院長。著書に『DVDでわかる!筋膜リリースパーフェクトガイド』(自由国民社)など。
Q.そもそも「筋膜」って何?その役割は?
[A1]「筋膜」は筋肉を包む、ボディーカバー。
筋肉の保護や筋収縮時の滑りを助ける作用があります。
「筋膜」という言葉から、筋肉を包んでいる膜をイメージしやすいが、それだけではない。筋膜は、筋線維の一本一本まで入り込み、全身に張り巡らされているもの。浅筋膜、深筋膜、筋外膜、筋周膜、筋内膜という5つからなり、〝筋膜以外を取り除いてもカラダの形が残る〟といわれ、第2の骨格と呼ばれることもあるほどだ。
中でも特徴的なのが深筋膜。深筋膜は、縦、横、斜めが重なった3層構造になっていて、それぞれの層の間は、潤滑油として働くヒアルロン酸で満たされている。
筋膜自体は「コラーゲン線維」と「エラスチン線維」で構成され、カラダの動きに合わせて自由に形を変えることができる。コラーゲンはカラダの形を整えたり、動きに合わせてハンモックの網のように形を変えることができるのが特徴で、一方のエラスチンはゴムチューブのように伸縮し、カラダに加わる力に合わせることが可能。
この2つが互いに協力し合うことで、カラダに加わった緊張をコントロールしているのだ。
筋膜は筋肉のひとかたまりを包んでいるだけではなく、その内部にまで入り込み、筋原線維一本一本まで包み込んでいる。
皮膚のすぐ下に浅筋膜、その下に全身を覆う深筋膜がある。これらはヒアルロンがあることで自由に動くことができる。
筋膜の主な役割
●筋肉や内臓、血管など各組織を包み、カラダのバランスを保つ
●筋肉同士が擦れて生じる摩擦を保護し、滑りをよくする
●筋線維の動きを支え、力の伝達を行なう
取材・文/今 雄飛