お盆に実家に帰省する際に、親戚の子どもたちに『お盆玉』を渡すべきか、悩む人は少なくありません。また、それほど認知度が高くないため、お盆玉についてよく知らない人もいるでしょう。お盆玉の由来や風習・金額の相場などを紹介するので、参考にしましょう。
夏のお年玉? まだなじみのないお盆玉
お盆玉は、近年、急速に普及しつつある習慣です。古くからある習慣ではないため、お盆玉自体を知らない人もいるのではないでしょうか?お盆玉がどんな習慣なのか、由来を紹介します。
お盆玉の由来とは
お盆玉は、お盆の時期に帰省したときに、子どもにあげるお小遣いのことです。
お盆の帰省時に、親戚の子どもなどにお小遣いを渡したことがある人もいるのではないでしょうか?また、自分の子どもが、両親や祖父母などから、お小遣いをもらったことがある人もいるでしょう。つまり、お盆玉という言葉が普及しだしたのは最近ですが、以前から行われていたことなのです。
お盆玉という言葉が普及したきっかけは、2010年にある文具メーカーが『盆玉』というポチ袋を販売したことです。少子化が進む中で、お年玉などのポチ袋の需要が減り、日本の伝統文化になじんだ新商品を考えたのが始まりとされています。
その後、メディアで取り上げられ、郵便局でもお盆玉袋が販売されるようになり、徐々に認知され始めたのです。
山形の風習という説もある
お盆玉は、山形地方の古くからの風習という説もあります。江戸時代は、商家に奉公に出される子どもが多くいました。奉公人は住み込みで働いており、基本的にお盆とお正月のみ実家に帰ることが許されていたのです。
お盆に帰省するときに、奉公人にお小遣いをあげる風習があったとされています。当時は、お金ではなく、新しい着物や下駄などが贈られ、それが、昭和初期にお金を渡す形に変わったというものです。
専用のポチ袋まで
夏が近付いてくると、文具店や郵便局には、『お盆玉専用のポチ袋』が並びます。お盆玉の認知度が上がり需要が増えたことで、現在では多種多様なお盆玉袋が販売されています。そのため、子どの年齢や好みに合わせて選べます。
お盆玉袋は、子どもに渡す物なので、『おぼんだま』と平仮名で書かれた袋が多いですが、『おこづかい』や『夏のおこづかい』と書かれた物もあります。また、『好きなものでも』『ほんのきもち』『またあそびにきてね』『アイス代』など、個性的なタイプもあります。
年に数回しか孫に会えない祖父母などにとっては、お盆玉を渡したときの孫の喜ぶ顔を思い浮かべながら、お盆玉袋を選ぶのも楽しみの一つでしょう。
お盆玉を渡している人の割合
お盆玉を渡そうか悩んでいる人は、実際にどの程度の人が渡しているのか気になるのではないでしょうか?お盆玉の認知度や渡している人の割合を紹介します。
地域・年齢によってばらつきがある
2017年に大手損害保険会社がまとめたネットアンケートでは、お盆玉の認知率は4割弱だった一方で、実際にもらったことがある人は約1割にとどまりました。
実際のところでは、お盆玉と呼ばれていることを知らないだけで、お小遣いを渡したり、おもちゃや洋服を買ってあげたりしている人がいることも多いでしょう。
お盆玉を渡している人の割合は、地域や年齢によっても差があります。北海道・東北・関東・中部・近畿地方では、お盆玉を渡す人が多い傾向にあります。一方、中国・四国・九州・沖縄では、低い割合になっています。
また、年代別でみると、お盆玉を渡している人の割合が、20~50代では1割以下なのに対し、60代、70代では1割強〜2割と少し増加が見られました。
認知度自体も低め
金融機関やクレジットカード会社が行った調査でみても、お盆玉を知っている人の割合はおおむね40%前後です。認知度が低めの理由は、お盆玉という言葉自体が、まだ新しいためでしょう。ただし、女性に限っていえば、約47%と認知度が高めの傾向にあります。
お盆玉の認知度は、ここ数年で確実に上がっています。2016年では約16%だった認知度が、17年は約29%、18年は約37%です。数年で16%から40%前後に上昇したことを考えると、お盆玉が急速に世間に知られるようになってきているといえるでしょう。
参考:新習慣「お盆玉」の平均額が“お年玉より控えめ”なワケ – MONEY PLUS
お盆玉に対しての本音
お盆玉に対しては、各家庭の方針や環境などによって、賛否両論があります。肯定派と否定派の主な意見を紹介します。
孫を喜ばせたい
核家族化が進み、孫と会えるのは、お盆とお正月だけという祖父母は少なくありません。そのため、「たまにしか会えないから、お盆玉をあげて喜んでもらいたい」と思う人は多いものです。
また、お盆玉という習慣ができる前から、お盆に帰省したときには、お小遣いをあげていたという人も少なくありません。中には、自分が子どもの頃にも、帰省時にお小遣いをもらっていた人もおり、お盆玉に全く抵抗を感じない人もいます。
子どもの年齢によりますが、お盆玉をお金のやりくりを学ぶよい機会と考える人もいるようです。何にどのくらい使うのか、どのくらい貯めて何に使うのか、などを実践しながら学べるためです。
迷惑だという親も
お盆玉は新習慣で、お年玉のように古くから伝わる伝統的な風習とは違うため、抵抗を感じる人もいるようです。また、お盆玉をもらうと、お礼やお返しを考えなければならず、ありがた迷惑に感じる人も少なくありません。
お盆玉をもらう子どもが増え、「なんで、うちだけもらえないの?」と子どもに言われ、困る親もいるでしょう。本来、お盆玉は、あくまでも好意による物で、あげなければいけないものではありません。それが、「あげないのはおかしい」「もらえて当たり前」といった風潮に変わってきている事実に、抵抗を感じる人も多いようです。
また、子どもの帰省に対する気持ちが「祖父母に会いたいから」ではなく、「お盆玉をもらえるから」になってしまうのではないかと心配する声もあります。
お盆玉の金額の相場
なじみのないお盆玉をあげる場合、どの程度の金額にすればよいのか悩む人もいるのではないでしょうか?お盆玉の金額の相場について紹介するので、参考にしましょう。
1人当たりの平均金額
お盆玉の1人当たりの相場は、3000円~1万円と幅があります。お年玉と比較すると、平均額は控えめの傾向にありますが、1~2万円以上という人の割合も少なくありません。
渡す子どもの人数が多ければ多いほど、金銭的負担も増えます。また、お盆の帰省に伴い交通費などの出費もあるでしょう。年始にも帰省し、お年玉を渡す予定の人は、さらに出費がかさみます。そのため、状況に合わせて無理のない範囲で、金額を設定するのがおすすめです。
また、前年よりも少ない金額にするのは、気が引けるものです。毎年のようにお盆玉を渡す人は、1度だけではないということも考慮することが大切です。
年齢別の金額
お盆玉の金額に迷ったときは、年齢別の平均金額を参考にするのも一つの方法です。特に年齢の異なる複数の子どもたちに渡すときは、未就学児・小学生・中学生など、ざっくりと分けると決めやすいです。
未就学児の目安は1000円以下、小学生は1000~3000円、中学生は3000~5000円、高校生は5000~1万円が一般的です。
大学生以上になると、アルバイトをしている人も増えますし、1人の大人のように扱われるため、渡さない家庭も少なくないようです。
現金以外のお盆玉
お盆玉は現金が主流ですが、現金以外の物を渡す場合もあります。具体的には、おもちゃ・お菓子・洋服・本・文房具などです。商品券や図書券などを渡す人もいます。
お盆とお正月程度しか孫に会えない祖父母は、できるだけ孫と多くの時間を過ごしたいと思うものです。孫と一緒に買い物に行って、好きな物を買ってあげるのを楽しみにしている人もいるでしょう。また、その方が現金をあげるよりも、思い出として心に残るというメリットもあります。
特に小さい子どもは、金額云々よりも『好きな物を買ってもらえた』という好意に喜ぶものです。時間的にゆとりがある場合は、子どもたちと一緒の時間を楽しみ、おもちゃやお菓子を買ってあげるのもよいのではないでしょうか?
構成/編集部