多くの企業で禁煙化の動きが加速する中、禁煙推進企業コンソーシアムは、社内禁煙を強く推進し、喫煙率が低下している企業の事例をもとに「先進企業が喫煙率を下げている3つの理由」をまとめた。
今回は新規会員企業の声と会員企業の進捗情報(五十音順)も合わせて紹介しよう。
なぜ先進企業は喫煙率を下げているのか?考えられる3つの理由
会員企業の喫煙率低下理由①『経営層の見せる本気度』
禁煙推進をスタートする上でまず重要なことは、従業員の健康、そして社会的責任において、しっかりと禁煙を進めていくことを経営層が宣言をしていくことだ。
単に言葉として会社に宣言をするだけではなく、従業員に経営層が本気で「禁煙推進」に取り組んでいることが伝わる必要がある。
コンソーシアムの会員企業でも、社長からの直筆の手紙を全社員の自宅に郵送したり、毎月全社員にメールで「禁煙になぜ自社が取り組んでいるか」という理由を伝えたりしている企業では喫煙率が低下しているという。
また、経営層の中で喫煙者がいる企業は、喫煙率が下がりにくいというデータも出ており、まずは経営層が禁煙にチャレンジする姿勢を見せることも重要なカギとなる。
会員企業の喫煙率低下理由②『制度設計としての本気度』
禁煙推進をする上で、会社で定める「制度設計」も喫煙率を下げる鍵となる。敷地内禁煙や就業時間内の禁煙を規則として定める企業が増えている中、会社によっては制度の中に「罰則規定」を設けて徹底している。
しかしながら、就業時間内の禁煙を規則で定めていても、一部の従業員が規則を遵守出来ないような状況では、禁煙が推進されているとは言えない。
コンソーシアムでは、制度設計の際には、各社が徹底できる現実的な制度を推奨している。実現可能性のある各種制度の確実な遂行により、将来的には新卒・中途採用において喫煙者の採用を見送る制度や、部長職以上の役職へ喫煙者を昇格させることを見送る制度など、会社オリジナルの取り組みにも繋がるものと予想される。
会員企業の喫煙率低下理由③『社外に伝わる本気度』
現在、コンソーシアムで会員企業に推薦している取り組みは、社内だけではなく社外への伝え方の工夫だ。会員企業の中には、会社への来訪者へ禁煙推進をしていることを伝えるシールを配布したり、名刺に当コンソーシアムのロゴを入れたりして、社内だけでなく社外へ積極的に禁煙推進の情報発信をしている企業もある。
取引先など各種ステークホルダーに対し、従業員が自ら自社の禁煙の取り組みを説明できるようになることで責任感が生まれ、社内浸透の一助となっている。喫煙率を下げるには、経営者からのメッセージを、社内だけでなく社外にも伝えることが重要だ。
新規会員企業からのコメント
2019年11月加盟
株式会社エムステージホールディングス 代表取締役 杉田雄二
当社は企業向け産業保健サービスと医師人材総合サービスを提供しており、産業保健サービスでは産業医のご紹介から運用までワンストップでサポートをしています。企業の健康経営を支えるという立場よりみなさまのモデルとなることを目指し、従来健康経営には力をいれています。禁煙推進・サポートも健康増進の取り組みの1つで、2020年4月より全面禁煙とすることを宣言しました。本団体に加入することで禁煙推進・サポートのノウハウを学び、従業員とその家族を喫煙・受動喫煙による健康リスクから守っていくこと、ならびに、当社の取り組みを発信することでよりよい社会をつくっていくことに貢献していきたく思います。
2020年1月加盟
中外製薬株式会社 代表取締役社長 CEO 小坂達朗
中外製薬グループは、「中外製薬グループ健康宣言」において従業員一人ひとりが心身ともに健康で働きがいとやりがいを持って仕事に取り組める環境こそ成長の基盤であると捉え、「個人の健康」「組織の健康」の維持・向上に会社が積極的に取り組むことを社内外に表明しています。その一環として「中外製薬グループ禁煙宣言」を発信し、健康的な職場環境を実現する具体策の一つとして、受動喫煙を含む喫煙による健康被害をなくすことを宣言しています。本コンソーシアムに加盟することで、より一層の社内禁煙を推進していき、2030年末までにグループ会社従業員において喫煙ゼロを目指します。
2020年2月加盟
株式会社ダイアナ 代表取締役社長 徳田充孝
1986年の創立以来30年以上、「女性美の原点はプロポーションの美しさにある」という理念のもと、プロポーションづくりの総合コンサルティング企業として全国に約750サロンを展開し、92万人以上にコンサルティングを実施。最近では、食事を中心としたインナービューティー事業、頭からつま先までを美しくを実現するため、ヘアサロン、フットケアなどのアウタービューティー事業も展開しております。このたび、禁煙推進企業コンソーシアムの入会をきっかけに、美と健康のトータルソリューションカンパニーの責務を果たすべく、特に「女性の禁煙推進」を社内外で推進・啓発していく所存です。関わる人全員が美しく、健やかな人生を送れるよう経営者・社員一同、力を合わせていきます。
会員企業の禁煙推進進捗ニュース
アフラック生命保険株式会社
当社は、日本で初めてがん保険を開発した保険会社として、がんに対する正しい理解の普及を社会的使命の一つと考えています。創業以来、がん啓発のためのセミナーや展示会等を全国で開催し、特にたばこががんの大きな危険因子であることを生活者の皆様に広くお伝えしてきました。社内においても、多様な社員がいきいきと活躍できる環境を目指す健康経営のもと、社員の禁煙を推進しています。「ビジネス禁煙365」と称した全営業日就業時間内の禁煙徹底や、受動喫煙を防ぐ宴席禁煙、喫煙者への卒煙サポートプログラムの導入など社員の禁煙推進を強化しており、今後も社員の喫煙率の低下と、社会全体の禁煙推進に取り組んでいきます。
株式会社オートバックスセブン
弊社は、ビジョンである「2050未来共創」を掲げ、共に働く仲間と明るく元気な未来を創っていきたいと考えております。その土台として従業員の心の健康と身体の健康があることから、経営・労働組合・健康保険組合・従業員とその家族が一体となって健康増進に努める健康経営を宣言しています。近年、健康経営における主要な取組として禁煙推進への取組を開始し、本コンソーシアム参加後には具体的な施策として経営者から喫煙者への手紙の発送や禁煙者による禁煙ストーリーの発信、就業規則の改定等を行いました。今後は効果検証を行い、各施策のブラッシュアップや新たな施策に取り組んでまいります。
オムロン ヘルスケア株式会社
当社は、高血圧に起因する脳・心血管疾患(イベント)の発症ゼロを目指す「ゼロイベント」を事業ビジョンに掲げています。喫煙習慣は高血圧の原因であると共に脳・心血管疾患の発症リスクを高めることが確認されており、事業ビジョン達成、健康経営推進の重点テーマとして受動喫煙防止、禁煙推進の取組みを行っています。
コンソーシアム参加後、就業時間禁煙の就業規則化・卒煙希望者とサポーターが一緒に卒煙に取組む「卒煙マラソン」や禁煙達成者表彰等を実行し、本年度の喫煙者率は目標の13%を達成しました。今後も社員の禁煙実践を通した高血圧症の予防・改善に取り組むと同時に、社会に禁煙の重要性を発信し続けていきます。
協和キリン株式会社
協和キリングループでは、経営トップの健康宣言に基づき、「従業員の健康で質の高い豊かな人生の実現」に向け取組んでいます。活動の焦点を絞り、健康上のリスク最小化と健康で安全な職場づくりのために、健康経営のKPIとして「Wellness Action 2020 GOALS」を定めており、KPIの1つに「喫煙率5%」があります。協和キリングループでは、「喫煙しないひとを含む全員の挑戦」と「丁寧なコミュニケーション」が重要と考えています。2019年10月時点では約800名の従業員が喫煙していますが、「喫煙者の禁煙宣言」を提出した一人ひとりとコミュニケーションを取り、組織として支援しています。
三京化成株式会社
当社は、たばこがその生産段階から消費、廃棄されるまでの各段階で環境破壊の原因となっているという側面に注目し、「公私の充実のために欠かせない“健康”の増進」及び「喫煙による環境破壊の低減」を目的に、環境ISO(14001)の取り組みとして、禁煙推進を開始致しました。専門家を招いての講演会や、禁煙推進のキャンペーンとして、会社が禁煙外来の費用を負担し、3か月間で禁煙に取り組む「禁煙チャレンジ」を毎年開催しており、昨年の喫煙率は15%となりました。また本年から、全社「敷地内禁煙」を実施しています。今後も禁煙を推進し、社員の健康と環境破壊の低減を目指します。
株式会社資生堂
当社では、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を実現するために、美と健康を活力の根源と捉え、社員やその家族が自ら美しく健やかに生活するための取り組みを推進しています。喫煙対策は当社グループにおける重要な健康課題であり、2019年には「労働時間内禁煙」をスタートさせるとともに、禁煙治療費を全額補助する「『0円禁煙』チャレンジプログラム」(資生堂健康保険組合主催)を展開しました。当社の喫煙率は年々着実に減少していますが、今後も禁煙推進に向けた取り組みを加速し、さらなる喫煙率低下を目指していきます。
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ
当社は、経営理念『我が信条(Our Credo)』に基づき、人々や地域社会の健康や幸福に貢献するため、従業員が個人のベストを発揮できるよう、世界で最も健康的な従業員が働く企業になることを目指しています。社員一人一人が健康的に働けるよう、様々な取組みの一つとして、全世界共通で、職場内・敷地内の禁煙を徹底しています。日本では、2019年1月から昼休みを含む所定労働時間内禁煙ポリシーも施行しました。社員の禁煙を支援するために、オンライン診療、アプリを使用した遠隔指導やカウンセリングによる心理的サポートも受けることができます。企業による禁煙の先進的な動きを通じて、社会全体に禁煙の重要性を発信していきます。
SOMPOひまわり生命保険株式会社
当社は、お客さまが健康になることを応援する「健康応援企業」への変革を目指しており、そのためには、社員とその家族の健康維持・増進が不可欠であるという考えのもと健康経営を実践しております。その中でも禁煙の取組みは特に注力をしており、2019年度より全社員就業時間内禁煙を導入しました。また、2020年4月以降の新入社員は入社時点で非喫煙者であることを採用条件としております。現在は、既存の施策に加え、社内の喫煙者向けに禁煙状況の進捗確認や保健師による個別相談等のサポートを実施しております。
取組み前は20%台であった喫煙率も現在18.3%と改善傾向にあり、当社の目標値「2020年度までに喫煙率12%」へ向け各種施策を加速させます。
公益社団法人東京都医師会
東京都医師会は、日本医師会及び郡市区等医師会との連携のもと、医道を昂揚し、医学技術の発達普及と公衆衛生の向上を図り、もって社会の福祉を増進することを目的とする公益社団法人です。
東京都医師会は2011年10月にタバコ対策委員会を立ち上げ、さらに2013年4月に禁煙宣言を行いました。今後、2020年4月の東京都受動喫煙防止条例の全面施行後にタバコ対策は飛躍的に進んでいくと思われます。東京都医師会としては、受動喫煙防止の徹底はもちろんですが、禁煙を希望する方におけるニコチン依存症治療についても積極的に推進します。なお、東京都医師会役員及び事務局職員は全員非喫煙者です。
公益財団法人日本対がん協会
日本対がん協会は、①科学的根拠のあるがん予防・がん検診推進②がん患者・家族の支援③がんの正しい知識の普及啓発を三本の柱として、全国の協会グループの支部とともに様々な公益活動を行ってきました。タバコはがんの最大の原因であることから、2003年には「禁煙宣言」を公表し、創立60周年を機に2018年には「タバコゼロ宣言」を発表しました。喫煙者ゼロ、受動喫煙ゼロ、喫煙開始ゼロ、タバコ産業との利益相反ゼロ、新型タバコゼロ、という5つのゼロを達成すべく、人材育成や政策提言、地域支援、国内外の関係機関との連携強化を行ってまいります。もちろん協会職員は全員非喫煙者です。
ファイザー株式会社
当社は、「患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす:Breakthroughs that change patients’ lives」という企業目的のもと、研究開発型の医薬品企業として患者さんの生活を大きく変える医薬品とワクチンを生みだし、患者さんのQOL向上と健康寿命増進に貢献しています。その企業目的を達成するために、全社員の健康も非常に重要と考えています。当社では2015年に「喫煙者ゼロ最終宣言」の取り組みを開始し、さまざまな活動により社内禁煙を推進して参りました。
その結果として、2019年10月時点での喫煙率を1.6%まで低下させることが出来ました。今後も、「2020年終了時の喫煙率0%」の目標達成を目指し、引き続き取り組んで参ります。
ロート製薬株式会社
当社は、健康経営=健康人財と捉え、1996年に本社分煙、2005年に全社禁煙を実施するなど、卒煙推進には古くから積極的に取り組んできました。直近では、社員が企画した喫煙者・非喫煙者が一体となって禁煙に取り組む「卒煙ダービー」や毎朝煙草に関する健康クイズを全社で実施するなど、社員が自発的に煙草の害について考える機会を提供しています。また遠隔禁煙外来の全額補助やCHOから卒煙応援の手紙を送るなど企業側のバックアップ体制も整えました。その結果、2019年12月末には喫煙率が1.3%に下がっています。目標の『2020年4月喫煙率ゼロ%』を目指し、現在全社一丸となって卒煙活動に取り組んでおります。
構成/ino.