お中元には、贈る時期やのし・送り状など、さまざまなマナーがあります。そのため、会社の人や親戚にお中元を贈る予定の人は、正しいマナーを把握することが大切です。また、お中元に喜ばれるアイテムや、お返しについても知っておくと安心です。
そもそもお中元とは
社会人になると、お中元を贈ったり、贈られたりすることが増えます。お中元は、日ごろの感謝の気持ちを込めた贈り物です。お中元の由来や贈る理由をきちんと理解することで、心持ちも違ってきます。
まずは、お中元の由来や贈る理由、金額の相場について見ていきましょう。
お中元の由来
お中元の由来は、中国の三大宗教の一つとされる『道教』の行事にあります。道教では、上元(旧暦1月15日)・中元(7月15日)・下元(10月15日)と呼ばれる日があり、中元は罪が許される『贖罪(しょくざい)の日』とされていました。
その後、仏教の先祖の霊を供養する行事である『盂蘭盆会(うらぼんえ)』と結びつき、日本に伝わったといわれています。それが、もともと日本にあった、お盆に先祖供養をするために、親戚や近所の人にお供え物を配る習慣と重なったとされています。
親類縁者へ贈り物をする習慣が、現在のお中元の形へと変わっていったのです。
お中元を贈る理由
日本でのお中元は、先祖供養の風習に合わせて、親類縁者へお供え物を配る習慣として始まりました。
それが室町時代には、上級階層への贈り物をする習慣として広まったのです。江戸時代になると、庶民の間でも親類縁者や取引先など、日ごろお世話になった人へ贈り物するようになりました。
昔も今も、お中元の目的は、『日ごろお世話になっている人に、感謝の気持ちを込めて贈り物をする』ことです。普段、言葉では伝えづらい感謝の気持ちを形にして伝えるのが、お中元なのです。
金額の相場
お中元を贈る際に、どのくらいの金額の物を贈ればよいのか、悩む人は少なくありません。一般的に金額の相場は、3000~5000円程度とされています。仕事関係や特にお世話になった人に贈る場合は5000~1万円と、贈る相手や状況により変わることもあります。
ただし、あまり高額な贈り物をしてしまうと、もらう方も困惑する場合もあります。相手の負担にならないように考慮することも大切です。
また、お中元は、通常1度だけではなく、同じ相手に毎年贈り続けるものです。前年よりも大幅に低額の贈り物をするのは、マナーに反します。従って、良好な関係を長く続けるためにも、お中元の予算は無理のない範囲で設定しましょう。
お中元を贈る時期はいつ?
お中元を贈る時期についても、マナーに注意する必要があります。7~8月頃といっても、実際には地域により違いがあるためです。従って、贈る相手の地域に合わせて贈るのが、マナーとされています。
近年は、伝統にこだわらない人も増えています。しかし、年配者や伝統を重んじる風習がある地域の人へのお中元は、伝統に従ってマナーを守るのがよいでしょう。
地域別に最適な期間を紹介します。
北海道・東海・関西・中国・四国の場合
北海道・東海・関西・中国・四国では、7月15日から8月15日の期間に贈るのが一般的です。相手に届くのが8月15日を過ぎてしまうと、残暑見舞い扱いになってしまうため、注意しましょう。
近年は、お中元を贈る時期が早い地域の影響もあり、年々、早めに贈る傾向があるようです。うっかり贈り忘れてしまうのが心配な人は、配達日指定で7月15日頃に届くように手配すると安心です。
また、どこから発送するのかにもよりますが、北海道は他の地域に比べて、配送に日数が掛かります。贈るのに適した期間を過ぎてしまわないように、所要日数を考慮して手配することが大切です。
北陸の場合
北陸に住む人に贈る場合は、エリアにより最適な時期が異なるため、注意しましょう。石川県など、県内でも住む場所により異なるケースもあるため、事前にきちんと確認する必要があります。
石川県や富山県では、7月15日から8月15日の期間に贈るのが一般的です。また、新潟県や石川県でも金沢市などでは、7月1日から7月15日と早めになります。こちらの場合は、最適な期間が15日間と短いため、早めに準備するのがおすすめです。
また、どちらの期間に贈ればよいのかはっきりせず迷うときは、二つの期間のちょうど中間である、7月15日前後に届くように手配するとよいでしょう。
東北・関東の場合
東北や関東地方では、7月上旬から7月15日までの期間に贈るのが一般的です。近年、都心を中心に贈る時期が早まっており、6月下旬頃に贈る人もいるようです。
これは、贈るのに最適な期間が2週間程度と短いことが理由です。期間が短い理由は、もともとお中元は手渡しするのが一般的であったためといわれています。
現在は、お中元を配送するのが一般的です。2週間と短い間に配送が集中するため、遅れなどのトラブルも起こりやすくなります。デパートなどでは、贈答期間の早期化に伴い、6月に入る頃にはお中元の商品が店頭に並び始めるので、早めに手配するのがおすすめです。
九州の場合
全国で最も贈る時期が遅いのが九州で、早い地方と比べると1カ月も差があります。九州では、8月1日から8月15日の期間に贈るのが一般的になります。
ただし、他の地方同様に、早い時期に贈る地方に合わせて、贈る時期が早まっている傾向にあります。7月中に届くように手配する人も増えているようです。
九州の各地方では、異なるさまざまな風習がありますが、お中元の時期に関しては共通しているため、迷うこともないでしょう。贈るのに最適な時期が15日間しかないことや、お盆の時期でバタバタしていることで、うっかり贈り忘れてしまうこともあり得るため、注意が必要です。
お中元ののしについて
お中元を贈る際に欠かせないのが、『のし』です。のしにも基本的なマナーがあります。お中元を気持ちよく受け取ってもらうためにも、マナーを把握しておきましょう。
のしの書き方
一般的には、濃い目の墨を使った毛筆で書くのが基本です。書体は、フォーマルなイメージの『楷書体』がよいとされています。しかし近年は、毛筆の代わりに誰でも簡単に毛筆風に書ける筆ペンを使う人が多いです。また、サインペンなどで書いても、マナーに反することにはなりません。
まず、水引の上の中央には、『お中元』もしくは『御中元』と贈る目的を書きましょう。次に、水引の下に、お中元の文字よりも小さめに、自分の名前を記載します。
通常はフルネームを記載しますが、目下の人への贈り物の場合は、名字だけでも問題ありません。また、連名で贈る場合は、右から年齢や地位の高い人の順で記載し、3名までに留めましょう。3名以上になるときは、代表者の名前のみを記載し、『他一同』と左下部分に記載するのが一般的です。
のしの選び方
通常使用されるのしは、『紅白の蝶結び(花結び)』です。紅白の5本、もしくは7本の蝶結びが付いているのしです。水引の結び方には数種類あり、お中元に限らず、お歳暮などには、蝶結びが使われます。
これは、蝶結びは結び直すことが簡単なため、繰り返してもよいという意味があります。逆に繰り返さない方がよい結婚祝いなどは、結び目がほどけにくい『結び切り』ののしが使われます。
なお、お中元には、のしを付けるのが基本ですが、例外もあります。お中元を贈る側、または贈られる側が喪中の場合です。お中元の贈り合いはできますが、水引などが印刷されていない無地を使うのがマナーです。
内のし・外のしの違い
のしの付け方は『内のし』と『外のし』の2通りがあります。内のしは、贈り物の箱にのしを付けて、包装紙でラッピングする方法です。外のしは、贈り物を包装紙でラッピングした上に、のしを付ける方法になります。
内のし・外のしの、はっきりとした使い分けのマナーはありませんが、地方の風習や贈り方によっても変わってくるでしょう。近年は、手渡しではなく配送するのが一般的です。配送途中でのしに傷が付いたり、破れたりするリスクも考えられるため、内のしにする人が多いようです。
直接手渡しする場合は、外のしが使われることが多いですが、「控えめにしたい」という思いから、内のしを選ぶ人もいます。
送り状を送る時期や内容
お中元のマナーの中で、見落とされがちなのが『送り状』です。送り状の意味や送る時期・内容を紹介します。
送り状は品物よりも先に送る
送り状は、相手に贈り物が届くことを知らせる役割があります。そのため、実際に贈り物が届くよりも先に相手に届くように送りましょう。
贈り物が届く何日前までに送るといったルールはありません。しかし、あまり早すぎると、「なかなか届かないな…」と余計な心配をかけてしまう可能性もあります。従って、贈り物が届く数日前が無難でしょう。
近年は、お中元を配送するのが一般的です。いきなり先方に贈り物だけが届くというのは、失礼になる場合もあります。親戚など親しい間柄であれば、電話やメールで知らせるだけで済むこともありますが、仕事関係や目上の人へは送り状を送るのがマナーです。
お中元の送り状の内容
送り状に記載するのは、一般的な挨拶やいつ何を贈ったのかだけではありません。贈り物をする理由は、日ごろの感謝の気持ちを形にして伝えることです。きちんと感謝の気持ちを添えることが、大切なポイントです。
送り状は、はがきでも問題ありませんが、目上の人や重要な仕事関係の人などには、封書で送ると丁寧な印象になります。また、近年は、手書きではなくパソコンで作成する人も増えています。手書きでなくても失礼になりませんが、宛名や自分の名前だけでも手書きにすると、親しみや温かみが増し好印象になるでしょう。
贈る相手に合わせて送付状の内容を変えるのが好ましいですが、たくさん贈る人は難しい場合もあるでしょう。仕事とプライベートなど、大まかに分けて定型文を用意しておくと便利です。