在宅勤務中、肩こりや首こりに悩まされていたり、猫背になっていたり、座った感じがなんとなく窮屈に感じていたりしないだろうか? もしかしたら、椅子や机の環境や、座っている姿勢に問題があるかもしれない。
そこで今回は、猫背矯正マイスターや柔道整復師などの肩書を持つ姿勢の専門家、小林篤史さんに、在宅勤務中におすすめの椅子や机選びのポイントや、疲れない座り方、猫背対策ストレッチなどを教えてもらった。
長時間、姿勢よく座っているコツは?
仕事中、座っているときの姿勢が悪いと、肩こりや首こり、腰痛など、さまざまな不具合が出てくることは、経験からわかる。在宅勤務で、長時間、姿勢よく座っているためにはどうすればいいか。小林さんに聞いてみると…?
「まずは環境が大切です。つまり椅子選びです。そして椅子の高さに合った机もしくはテーブルを使うことが大切です。ある程度、意識がけで良い姿勢を作ることができますが、環境が整っていれば、楽に長時間良い姿勢を作ることが可能です。
またパソコンについては、ノートパソコンの場合、画面の角度や高さも大切です。パソコン画面を見るときに、画面の高さに顔を合わせて覗き込むように見ると猫背の原因となります」
在宅勤務中の椅子選びのポイント
在宅勤務で姿勢をよく保つには、まずは環境作りから。早速、椅子選びのポイントを小林さんに教えてもらった。
1.座面
・座面がすべらないもの
木製でツルツルの椅子では、お尻がすべってしまい、良い姿勢がキープできない。
・座面が地面と水平であるもの
例えば座面の背もたれ側が沈んでいると、極端に姿勢が悪くなる。
・座面が長すぎないもの
椅子の座面の背面(背もたれの部分)までの長さが長いと、座ったときに腰を下ろしている位置と背もたれまでの距離が長くなるので、背もたれにもたれかかったときに背中が丸まってしまい、猫背になりやすくなります。
・座面の材質がかたすぎず、やわらかすぎないもの
かたすぎるとお尻が痛くなり、やわらかすぎると沈むため、いい姿勢をキープしづらい。
・高さが調節できるもの、もしくは自分の高さに合っているいるもの
骨盤を立てた良い姿勢で座ったときに、足の裏がしっかりつく高さが理想。
2.背もたれ
・背もたれに寄りかかったときに、弾力性が極力ないもの
弾力がありすぎるものだと、姿勢が崩れる。
・背もたれの角度の理想は90度
・かたすぎず、やわらかすぎない素材
・背もたれに寄りかかった瞬間、良い姿勢を作ることができるものが理想
●椅子に合った机の選び方
小林さんによれば、椅子が良くても机との高さバランスが合っていないと姿勢が崩れるという。机の選び方も押さえておこう。
「座って腕をダランとたらしたときに、ひじの線より数センチ低い高さに机の面がくるのが理想です。デスクワークのとき、ひじを机につくケースが多いのですが、このつき方を最適にすると、良い姿勢がキープできます。時々、机やテーブルを使わずに、太ももの上などでノートパソコンを使用する方がいますが、良い姿勢のためには使う必要があるのです」
疲れにくい座り方
椅子と机などの環境が整ったら、早速、疲れにくい座り方を実践してみよう。
「疲れにくい基本の座り方は『骨盤を立てた状態で座る』ことです。骨盤を立てるというとイメージが湧かない人もいるかもしれませんが、『お尻の穴が真下にくる』ことと『坐骨で座る』ことを意識すると、それができると思います。
しかし、姿勢が悪い人にとって、この骨盤を立てた座り方は疲れるかもしれません。なぜなら、姿勢が悪い状態が普通になっていて、その悪い姿勢で座ったほうが楽だからです。ただ、ずっとその悪い姿勢での座り方をしていると、だんだん背中が丸まってきて、肩こりや首の痛みなどがひどくなってきます。よって、今のうちから『骨盤を立てた座り方』をマスターしておいたほうが賢明です」
在宅勤務中にできる猫背対策ストレッチ
もし在宅勤務中、猫背ぎみになっているのに気づいたら、小林さん直伝の猫背対策ストレッチを実践してみよう。
1.「ねこ首ケア」
「猫背の状態に気付いたら、そのまま上を向いてみてください。顎だけを上げるので、頭が十分に上がらないはずです。このようなときには、首を曲げるだけでなく、背中から動かして上を向いてみてください。背中でも上背部といわれる肩甲骨の内側を使って動かすのです。こうすると楽に上を向くことができます。そして自然と猫背から解放され、首ケアにもつながります」
2.「肩回し」
「猫背になると肩甲骨の動きが固まるので、時折、意図的に動かしましょう。肩に両手の指先をつけながら、肩甲骨を意識してぐるりと数回、前に回します。そして必ず後ろ回しも行ってください。前回しで終わりにすると、肩が前に出て猫背の状態で終わってしまうので、猫背のままになります。ですから、必ず後ろ回しで終わってください。そうすれば、肩回しが終わったときに正しい姿勢を作ることができます」
まずは椅子や机などの環境を見直し、整えること。その上で、基本の座り方を実践することが、肩こりなどの不具合を減らすポイントといえそうだ。また仕事中、意識して姿勢を正したり、ストレッチを行ったりして調整も行おう。
【取材協力】
小林 篤史さん
猫背矯正マイスター(R)、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。
猫背矯正専門治療院V-Styleを開院。著書に「ねこ背は10秒で治せる!」(マキノ出版)
「ねこ背が治る!寝たまま『耳ピタ』ポーズ」(KADOKAWA)など累計15万部。
https://www.v-style.me
取材・文/石原亜香利