ふと「ちょっと飲みたいな」と思ったとき、開封後もしばらくはキープしておけるウイスキーは強い味方。ウイスキーを自宅で楽しみたいけれど、ロックとハイボールしか飲み方を知らないから、1本飲み終わるのに時間がかかりそう…。
そんな人におすすめしたい飲み方を教えてくれるのは、キリンビール チーフブレンダーの鬼頭英明さん。ログハウス風のご自宅の一室からのオンライン講座で使われるのは、5月19日に発売されたばかりのウイスキー「陸」です。
陸は「自分に合う飲み方が発見できる、国産ウイスキー」をコンセプトに、ウイスキーの可能性・楽しさを広げる商品として開発されました。
香りは、完熟オレンジ、リンゴのコンポート、バニラ、スパイス、甘い麦芽様の香り。
味わいは柔らかく、オレンジピールの香りと心地よい苦味。樽由来の味わいがしっかりと感じられるように。そして余韻は、麦芽由来の甘み、オレンジ、シナモンの香り、華やかな香りが舞う、キレのよい後味を実現しています。
「冷却ろ過をしていないので美味しい飲み口でありながら、後味の余韻は長い。あるところでアジがすっとキレる。キレがあると、また次が飲みたくなる」(鬼頭さん)
「自分に合う飲み方が発見できる」というコンセプトの思いは、パッケージにも隠されています。右側面にはおすすめのレシピ、左側面には3つの注意事項が、いずれも英語で書かれています。
左側の3つの日本語訳は
① 色々な飲み方をお楽しみください(ハイボール以外もお楽しみください)。
② 一人だけでなく、仲間ともお楽しみください。
③ より豊かで、自由なウイスキーライフをお楽しみください。
さぁ、いよいよ陸を飲んでみます!
美味しいハイボールを作る!
まずは、ブレンダー割りから。陸1に対して水は1から2の割合でグラスに入れ、数回グラスを回して混ぜます。これが陸そのものの味を一番感じられる飲み方だそうです。
そして、いよいよハイボール。陸1に対し、ソーダ水を4から8をお好みで。ここで大切なのが、順番とそのお作法。まずは、グラスに氷を入れます。次に陸を適量注ぎ、マドラーで 10回くらいよく混ぜます。そして、ソーダを静かに注ぎ入れる。「静かに」というのがポイントの1つで、ここでそっと入れることで炭酸が弱まることなく長く楽しめます。そして、マドラーを入れ、下からゆっくりと下から上にあげるように混ぜると完成です。陸の割合が少なくとも、炭酸に乗って味があがってくるので、おすすめの飲み方だそうです。
鬼頭さんによると、陸のハイボールはどちらかというと、脂っこくて味がしっかりしたものとのペアリングがおすすめ。メニューでいうと揚げ物が特におすすめだとか。また、ソーダを入れる前に、青いレモンや、かぼす、ライムを搾って加えると、また格別の美味しさに出会えるそうです。
意外な組み合わせの牛乳割に挑戦
そして、今回提案されたのが、なんとミルクで割る飲み方。
ウイスキーのカクテルを飲んだことはありますが、シンプルにミルクだけって初めてです。
その名も「陸 ウイズ ミルク」(なんかおしゃれ!)は、陸1に対し、ミルク4~7を入れるだけ。まずはグラスに氷を入れ、陸とミルクを適量注ぎます。
この組み合わせにより、陸の心地よい香りとミルクが合わさって、陸の香味を活かした大人のミルクセーキになるとか。
「ガムシロップが入ると、甘く嗜好性が増します。ホットミルクでも、砂糖とごく少量のシナモンを加えても美味しく楽しめますよ」(鬼頭さん)
実際に飲んでみると、本当に口当たりがよく飲みやすいし、でもしっかりとお酒。ミルクを入れても香りはしっかり出ています。冬にホットミルクと合わせるのは、ぜひ試してみたい。ただ、本当に見た目は変わりがないので、お酒だってことを忘れて飲みすぎないように注意が必要ですね。ほかにも、コーラを合わせるのありだそうです。
飲み残しをテーブルに置いておくのは危険。パパのグラスでもお子様が飲んじゃうので、飲み干してきちんとグラスは洗っておきましょう。
ホットでの飲み方としては、「ホットシナモン ウイスキー」もいけるのだとか。陸1に砂糖をティースプーン1杯程度、お湯3~6、アクセントにシナモンごく少量いれます。
「陸本来の香りとシナモンが調和して、一味変わった心地よい香味が楽しめます。飲み進めるのにしたがって砂糖が溶けて甘みが増してスイーツ的なおいしさになりますよ。先ほどの陸 ウイズ ミルクにもシナモンを入れるとまた違った味わいになっておすすめです」(鬼頭さん)
500ml㎖サイズの理由は手頃な価格帯に抑えるため
今回の陸を手にしてまず思うのが、同社のウイスキーに比べるとボトルが一回り小さいこと。内容量で比較すると、「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」が700mlなのに対し、陸は500 ml。一方で、アルコール度数は50%と富士よりも4%高くなっています。
50%になっている理由は、製造過程での冷却ろ過の必要がなくなることにあります。
「一般的にウイスキーの度数は40%程度ですが、もともとウイスキーは60%前後の度数で熟成させます。ここでは60%で溶ける味・香りの成分が入っていますが、40%の度数にする場合、20%分度数が下がることにより溶けなくなった香味の成分を除去しなくてはいけなくなります。これが「冷却ろ過」という工程になります。ウイスキーの香味成分はルコールに溶けるものが多いためです。。“陸”の場合は成分の析出が起こらない度数の50%にしたため、除去する必要がありません。つまり熟成していた時の濃い味をそのまま製品の中に入れるために50%という度数にしています。また、アルコール度数が高いと酒税が高くなってしまう。美味しさは妥協せず、同じ700mlで商品を発売してしまうと、値段が高くなってしまう。サイズを変えて新たなウイスキーのチャレンジにしてみたいと思っています」
そんな思いから選ばれたサイズなのです。
3種のグレーンウイスキーを中心にブレンドしていますが、そこに少しだけモルトを使用。モルトを使うことで、味の厚み・バランスが出てくるものの、モルトというのが明らかにわからない程度に入れているといいます。
世界の大陸を見回し、良質な原酒を探し当て、作り上げたことから名付けられた「陸」。ラベルデザインもウイスキーのラベルに多い抜き文字や漢字の場合の筆文字など、重厚感の演出とは対局のホワイトでシンプルなものに。とはいいつつも20代などのエントリー向けではなく、あくまでもウイスキーを好んで自宅で飲む30代から40代の男性がメインターゲットです。
キリン 陸
https://www.kirin.co.jp/products/whisky_brandy/riku/
取材・文/北本祐子