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説明できる?今さら聞けない梅雨前線の基礎知識

2020.06.07

日本では、毎年、梅雨の時期があります。梅雨は日本人にとってなじみの深いものですが、梅雨の仕組みや用語についてよく知らない人は少なくありません。子どもに聞かれても困らないように、梅雨や梅雨前線などに関する正しい知識を身に付けておきましょう。

梅雨に雨が多くなるのはなぜ?

梅雨は、気象現象の一つで『雨季』のことです。しかし、梅雨はどの地域でもみられる現象ではありません。まずは梅雨がみられる地域や、なぜ雨が多くなるのかなどについて簡単に紹介します。

東アジアの地域だけにみられる雨季

梅雨は、春から夏へ季節が変わるときに、日本をはじめ中国や韓国など東アジアの地域だけにみられる気象現象です。

梅雨に入る時期は、日本国内でも地域により異なります。沖縄など南西諸島では5月中旬頃、西日本から東北地方は6月上旬から中旬頃が一般的です。なお、気象庁の過去のデータによると、関東の梅雨入りは平年6月8日頃で、梅雨明けは平年7月21日頃とされています。

梅雨の期間は、関東地方で約40日前後、九州地方で43日前後です。梅雨の時期の降水量は、年間降水量のおよそ1/3を占めます。特に九州や四国・近畿・東北地方では、降水量が多くなります。

出典:気象庁|過去の梅雨入りと梅雨明け

風がぶつかり合い雲が発生

梅雨に雨がたくさん降る理由は、温度や湿度の異なる大気の集団が関係しています。一般的に、寒冷な大気の集団は『寒気団』、温暖な大気の集団は『暖気団』と呼び分けられています。

梅雨の時期には、北側のオホーツク海方面からの冷たく湿った寒気団の風と、南側からの暖かく湿った暖気団の風がぶつかり合います。二つの異なる性質の風が勢いよくぶつかり合うことで上昇気流が起こり、雲が発生します。この雲が多くの雨を降らせているのです。

なお、寒気団と暖気団の影響を受けるのは、梅雨に限ったことではありません。実は、日本の四季も寒気団と暖気団の動きや勢力により変わっているのです。

そもそも梅雨前線とは

天気予報などで耳にすることもあるため、『梅雨前線』という言葉を知っている人は多いでしょう。しかし、具体的にどんなものなのか説明できない人もいるのではないでしょうか?梅雨前線やその他の前線について紹介します。

悪天候を招く停滞前線のこと

先に述べた通り、梅雨は寒気団と暖気団という二つの性質が異なる気団が、激しく衝突することで起こります。夏に向けて、それまで優勢だった北側のオホーツク海方面からの寒気団に変わり、南側からの温暖な暖気団が押し寄せてくるためです。

この二つの気団は入り混じることがなく、双方の境目に前線ができます。これを『梅雨前線』と呼びます。

また、二つの気団の勢力はほぼ互角なため、梅雨前線がその場に留まります。そのため、梅雨の時期が40日前後続くのです。このように、その場に停滞し、雨や雷、強風など悪天候を招く前線は『停滞前線』と呼ばれます。

前線について

前線は、温度や湿度の異なる気団が勢いよくぶつかる場所に発現します。なお、ゆっくりと混ざり合うような動きであれば前線はできません。

前線は停滞前線だけではなく、特徴や性質により数種類に分かれています。どの前線ができても、雨・雷・風などの荒れ模様の天候になります。逆に前線ができなければ、穏やかな好天に恵まれます。

梅雨前線と秋雨前線の違い

『秋の長雨』といわれる通り、夏から秋にかけて雨が続くこともあります。これは気団の影響により、『秋雨前線』ができるためです。梅雨前線と秋雨前線は、どちらも雨などの悪天候を招きますが、どのような違いがあるのでしょうか?

梅雨前線よりも短期間

秋が近づいてくると、秋の冷たい気団が南へ移動し、夏の間、勢力を保っていた暖かい気団とぶつかります。この境目にできるのが、停滞前線の一種である秋雨前線です。

気団がぶつかり合い、大気が留まることで前線ができ、大雨などを引き起こす点は梅雨前線と同じです。ただし、梅雨時のように暖気団の勢力が活発ではないため、停滞する期間は短くなります。

また、地域による降水量の違いもあります。梅雨前線の影響を受け、梅雨時に降水量が多いのが西日本なのに対し、秋雨前線の影響で降水量が多いのは東日本になります。東日本では、梅雨時よりも多くの雨が降るケースが少なくありません。

秋雨前線の時期

秋雨前線は、夏から秋への季節の変わり目に起こります。一般的には8月下旬から10月上旬に現れるとされており、地域により異なります。秋雨前線は、北日本から南下しながら進むことが多いです。

また、雨が多く降る時期も地域により異なります。北日本では8月下旬や9月上旬が多く、東日本は9月中旬、西日本は9月中旬から下旬にかけて多くなります。

梅雨の場合は梅雨入りと梅雨明けが比較的明確ですが、秋雨ははっきりしないことが多いのも特徴です。

台風への注意が必要

秋雨前線が現れる時期は、台風が日本に接近しやすい時期でもあります。南から発生した台風の暖かく湿った大気が秋雨前線を刺激し、大雨などを引き起こすことも珍しくありません。

もともと秋雨前線は、動きがほとんどない停滞前線です。そのため、台風により刺激された秋雨前線が停滞することで、悪天候が続くこともあります。土砂災害や河川の氾濫などの被害を引き起こすケースも少なくありません。

なお、台風が遠くで発生していも、前線が刺激されて大雨になることもあるため安心はできません。特に旅行などの予定がある人は、滞在先で立ち往生になってしまうことも考えらえるため、前線と台風の動きに注意しましょう。

前線には種類がある

前線は、寒気団と暖気団の動きや構造などにより、4種類に分かれています。停滞前線・寒冷前線・温暖前線・閉鎖前線のそれぞれの特徴などを紹介します。

停滞前線

停滞前線は、勢力がほぼ互角の二つの気団が衝突し、動かなくなり停滞してしまうことでできる前線です。春から夏の変わり目に現れる梅雨前線や夏から秋の変わり目に現れる秋雨前線は、どちらも停滞前線の一種になります。

その他にも『菜種(なたね)梅雨の停滞前線(春雨前線)』や『山茶花(さざんか)梅雨の停滞前線』もあります。3月中旬から4月上旬にかけて、春雨前線が停滞することで、降り続く雨が菜種梅雨です。しかし、春雨前線の停滞期間は数日なので、気が付かない人も多いでしょう。

また、山茶花梅雨の時期は、11月下旬から12月上旬にかけて現れます。こちらも期間が数日と短いのが特徴です。

寒冷前線

寒冷前線は、寒気団が広がりながら、暖気団側に押し寄せてくるときにできる前線です。暖気団よりも寒気団の勢力が勝っている状態になります。

暖気団の下に寒気団が押し広がり、押された暖気団が急上昇します。急上昇することで、狭い範囲に積乱雲ができ、一時的に強い雨が降るのです。

突風や雷雨を伴うことも珍しくありません。なお、寒冷前線が通過後は、北寄りの風が吹き、気温も低下します。

温暖前線

温暖前線は寒冷前線とは逆で、暖気団が広がりながら寒気団側に押し寄せてくるときにできる前線です。つまり、暖気団が寒気団より勝っている状態になります。

暖気団が寒気団の上を昇るように広がっていき、上昇気流が発生します。これにより、広い範囲に乱層雲ができ、穏やかな雨が絶え間なく続きます。

温暖前線が通過した後は、南寄りの風が吹き、暖かさが増します。

閉塞前線

寒冷前線が温暖前線に追い付いたときにできる前線が閉塞前線です。これは、寒冷前線が温暖前線よりも速い速度で動くという特徴があるために、起こる現象です。

なお、閉塞前線には、『寒冷型閉塞前線』と『温暖型閉塞前線』があります。追い付いた寒冷前線の後方の寒気が、温暖前線の前方にある寒気よりも低い温度の場合は寒冷型で、高ければ温暖型になります。

日本付近で起こりやすいのは、寒冷型です。逆にヨーロッパなどでは、温暖型が起こりやすいとされています。

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