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保育料の無償化で加速する保育所間競争と隠れ待機児童問題

2020.05.23

保育業界に関する2019年度の振り返りと2020年度の展望に関するレポートがこのほど、総合保育サービスを提供している株式会社明日香から発表された。

同社によると、2019年からの約1年間で起こった大きな動きは、「幼児教育・保育の無償化」「幼保一元化の副作用」「新型コロナウイルス感染症による不安」の三つであるとのこと。

それぞれがどのような影響をもたらしたのか、以下にて詳しく説明していきたい。

保育料無償化が加速させる保育所間競争と隠れ待機児童問題

2019年10月より、幼稚園、保育所(保育園)、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラス、また住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスの利用料が無償となった。この背景には、子育て世代の負担軽減、つまり共働き促進と少子化対策がある。

保育料の無償化により、今まで保育所に預けていなかった家庭でも子どもを預けたいと考える家庭が増えている一方で、受け入れるためには保育所や保育士の数を増やす必要がある。

また、無償化の裏側で存在する、「隠れ待機児童」問題についても考えないといけない。

待機児童問題は、2016年に全国的な話題となった。国や各自治体が対策に乗り出したことで解消が進み、厚生労働省が2019年9月に発表した「保育所等関連状況取りまとめ」によると前年比3,123人減少した16,772人となり、調査開始以来、過去最小の数字となっている。

他方、様々な理由で待機児童にカウントされない、いわゆる「隠れ待機児童」は全国で約7万人にのぼるとも言われる。

これは、保育料の無償化も無関係ではない。「隠れ待機児童」に該当する、つまり待機児童に当てはまらないものとして①特定の保育所を希望している②保護者が求職活動を休止している③自治体が補助する保育サービスを利用している、ことが挙げられる。

つまり、例えば(1)きょうだいで同じ保育所に通わせたいができない(2)保育所に預けられないため求職活動を休止せざるを得ない(3)認証保育所や自治体の補助がある保育サービスなどにやむを得ず通わせているという状態であっても、「待機児童」としてはカウントされない。保育料の無償化により、「隠れ待機児童」はますます増えると考えている。

具体的に、人口の多い東京都を例に挙げる。東京都では2018年の待機児童数が約5,000人だったのに対し、2019年4月時点では約3,600人と一年で大きく改善されている。

これは、認可保育所の急速な増設と併せて、東京都による「認証保育所」という独自制度の効果だ。認証保育所は認可保育所に比べ多少の設置条件の緩和があるとは言え、駅から近くの設置や13時間以上の開所を原則とするなど、都会で働く保護者にとって利便性の高い施設と言える。

しかし、「無償化の対象」の観点で見ると、認可保育所が3歳から5歳児クラスが全額無償なのに対し、認証保育所は上限額が定められており、完全無償ではない。

結果、認可保育所に希望者が流れるケースが起きており、なかには定員割れして廃業に至る認証保育所も出ている。

都内のある区では、区内の待機児童数は前年比で大幅に改善した一方で、隠れ待機児童数は依然として数百名いる。特徴として、認証保育所・幼稚園などの利用者が前年比で約30%減少しており、認可保育園の利用者流入が加速していることを示している。

上述した通り、希望する保育所に入れないことで「隠れ待機児童」が出てしまうケースがある一方、選ばれなくなることで閉園する施設もある。認可保育所の希望はますます増し、また、新たな希望者として今まで家で育児を行っていた家庭も保育所を希望するようとなり、保育所争いはさらに激化する。

しかし、家から近い場所やきょうだいと同じ保育所を希望するとそれは「特定の保育所」扱いとなり、その認可保育所に入れなかったとしても待機児童にはカウントされない。認可への希望が増す一方で、認証保育所が廃業すれば、保護者にとって選択肢が狭まる。そうなると、仕事を休業し、家庭で育児を行う可能性が高まる。

けれども、繰り返しになるが、この場合でも待機児童扱いにはならない。このように、保育無償化により保育所間の競争は激化する一方で、認可保育所と保育士の数が不足しているため、受け皿がなく、保育所を本当に必要としている人に届きづらくなっていることが保育の実情、つまり現在地だ。

複雑化・高度化する保育士・保育所へのニーズ

2つめの「幼保一元化の副作用」とは、福祉施設の「保育所」と教育施設の「幼稚園」で元来わかれていた役割を一元化し、幼稚園やこども園と同様に保育所が「幼児教育を行う施設」と明確化され、小学校教育との接続・連携を重要視されたもの。

根本には、2017年に改訂され2018年に施行された「保育所保育指針」があり、2019年は現場の理解度を深め実践強化を目指す年となった。

その先には2020年より実施される小学校の「新学習指導要領」が関係しており、「子どもの「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」を保育士等と小学校の教員の間で共有化し、幼児教育と小学校教育との接続の一層の強化を目指そうとするものだ。

ただ、幼児教育とは言っても、もともと福祉施設としての役割を持つ保育所は、認知能力を高めるといった、いわゆる「学問」を学ぶ場ではなく、生きるうえで必要な、自ら考えて問題を解決する力(非認知能力)を育成し人格形成を培う場であるということが、改めて認識すべき重要な点。

現在では多くの保育所が独自の教育カリキュラムを導入しているが、保育士にとっては、昨今で大きく変わったポイントといっていいだろう。

前述した無償化に加え、保育所での教育要素が追加されることにより、認可保育所への人気に拍車をかけている。その裏側では、上述した内容と重なるが、教育的要素を強みとしていた幼稚園の魅力が弱まり、預かり人数が少なくなっている、中には廃業となる場合もある。

これらは、幼保一元化によって起きた副作用と言えるのではないだろうか。

休園による保育士と子ども・保護者コミュニケーション不安の高まり

3つめは、新型コロナウイルス感染症に伴う保育士・保護者双方の不安の高まりだ。

2020年4月には緊急事態宣言が発令され、対象地域が全国に広がった。

各保育所では、休園などの措置が取られている。4月は新年度となり、新しく入ってくる子や、年次が上がる子との関係性を構築する時期。この関係構築を通じて、保育士は保育所での1日のリズムを作る。

保育士の側面からは、子どもたちとのコミュニケーションが長期で取れない場合、関係構築に時間がかかるという不安、保護者からは、当社が2020年4月22日〜23日に実施されたアンケート調査(n=110)によると、「Q:保育園を一定期間休園することによるお子様への不安な点はありますか?以下の項目から一番該当するものをお選びください。」との質問に対し、同率でもっとも多い回答は、「お昼寝など保育園のリズムが崩れてしまう」で、31.8%となった。

保育が再開した際にスムーズに生活リズムを構築できるか、保育士と子ども・保護者とのコミュニケーション不安が存在している。

2019年度は激動の年。2020年度は「共創力」が試される

無償化に加えて幼保一元化の取り組みもあり、保育所はいっそう多様化し、複雑化している。保育士への負担は増加し、さらに保護者のニーズが多様になることによるプレッシャーも存在する。

一方で、複雑となる保育所のあり方について、保護者間での理解度の差も存在する。無償化の条件などに対して熱心に調べている人もいれば、幼保一元化に対して誤った認識をしている人もいる。

たとえば、保育所では英語や計算ができるようになるといった達成を目指す幼児教育は行わないが、これが幼保一元化により教育対象だと誤った認識をしている人が少なくない。

そうは言っても、理解の差は保護者の責任とは一概に言い切ることはできない。正しい情報を得る機会がないことや、わかりやすく伝えられていない発信側の責任もある。

前述したように、幼児教育と保育の社会的意義を高めるとともに、わかりやすい情報発信をすること、また施設と行政が一体となり、説明会や保護者面談を通じて、伝える場を設けていくことがさらに大切になることだろう。

出典元:株式会社 明日香
https://www.g-asuka.co.jp

構成/こじへい

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