■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は楽天モバイルの赤字必至のサービスの是非について議論します。
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回線接続で端末の制限が多く、「iPhone SE」を扱えない不利がある
房野氏:楽天モバイルの携帯電話事業では、パートナー(au)回線エリアのデータ容量上限が月5GB、データ容量超過後の通信速度が最大1Mbpsとなりますが、みなさんどう思われますか?
石川氏:自分自身の記事で書きましたが、赤字覚悟だし捨て身だし。KDDI社長の髙橋誠氏が喜ぶだけのプランだって気がします。非常に心配ではありますね。
石野氏:ユーザーが思ったより集まっていないという話もあります。
石川氏:以前も話しましたが、ウィルコムやイー・モバイルが何年もかかってやっと400万ユーザーという人数に到達した。MVNOの楽天モバイルの300万人が、いきなりこぞってMNOの楽天に移行するかといったら、そうでもない。端末を何かしら用意しなくてはいけないこともある。その辺も楽天は見通しが甘いんじゃないかなという気がしています。
法林氏:指摘している同業のライターさんがいたけど、開通するにはMNOの楽天モバイルに対応した端末じゃなきゃいけない。みなさん、結構苦労していた。本当かどうか知らないけれど、安く買える「OPPO A5 2020」が、開通が終わって、ヤフオクやメルカリに新品同様として大量に出回っているって話。みんな開通に困ったようで、例えばドコモのXperiaは、auが楽天にローミングで提供しているBand18(26)に対応していない。au向け端末でもSIMロック解除しないと動かないということもあったりして、その辺もちょっと厳しいなということがありました。
石野氏:ドコモ向け端末は割と全滅で、楽天エリアでは使えるけれどローミングできない。結構ツライですよね。
法林氏:Facebookで石野君が指摘していて、あ、そっかと思った。
石野氏:房野さんも以前、他媒体の記事で書いていましたね。
房野氏:ドコモ版の「AQUOS R3」をSIMロック解除して、無料サポータープログラムで使っていたんですが、楽天のエリアだけでしか使えませんでした。楽天エリアの広がりを知るには良かったんですが、auエリアでは使えないので結構面倒でした。
法林氏:僕らは解決策を探り当てられるけれど、一般の人はブランドくらいでしか端末を判別しないから、ちょっと厳しいね。
石川氏:UN-LIMITといっている割には、端末制限がかなりかかっている。
石野氏:そうそう。
石川氏:今まで、MVNOの楽天ではいろんなキャリアで使った端末を使えた。時代はそちらに流れているのに、今度は「楽天で端末を買わないことには安定して動きません」ということになっている。そこは、なんとかしなくてはいけないんじゃないかって気がします。
石野氏:iPhoneの影響が結構大きいですよね。Rakuten Link アプリが使えないし、一応、動くは動くんですけれど、eSIMにすると、ちょっと挙動がおかしいと指摘されている。完璧じゃない。「iPhone SE」くらい安いiPhoneを楽天が扱えていないのは、結構痛いなと思いました。
法林氏:痛いねぇ。
石川氏:安いiPhoneと安い通信料金で、相性は良いはずなんだけどね。このタイミングでiPhoneを取り扱っていないことは、相当痛いんじゃないかなって気がします。
法林氏:厳しいよね。
石野氏:パートナーエリアで使える容量が5GBになっただけですからね。
法林氏:まぁ、そうね。でも5GBになったのは良かったよね。
石野氏:ユーザーにとっては、良いと思います。
通信速度制限1Mbpsは実用可能か?
石川氏:容量上限を超過したときの通信速度が1Mbpsは、なんとか使えるギリギリの線だと思うので、本当に使い勝手は上がった気がする。
石野氏:1Mbps制限は、MVNOの楽天モバイルと同じなんですよね。
法林氏:そうそう。
石野氏:速度の一致を知った時、実はMVNOの楽天からユーザーが全然動いてなかったんじゃないかなって一瞬思った。
石川氏:動かないでしょう。
石野氏:動くメリットがないですからね。
法林氏:ない。エリアが狭くなる上に端末が動くかどうかわからない。下手に動けない。
石野氏:ただ、5GBになると、端末は除いて、料金的には同じくらいの水準になって、まぁまぁ動きやすくはなりますね。