共同作業しているような感覚が楽しいMTモデル
1速ギヤで、まるでATのクリープ走行のような発進からアクセルを踏み込むと、15インチのタイヤがコロコロと転がり出し、2速→3速→4速、、、、1L 3気筒のエンジンは決して力強くはないが、必要ならローギヤを選べばいいし、実際のところ適当なギヤでアクセルを踏み込めば、「ブロロロ〜ン」と音をさせながら、感覚的には十分モリモリな加速をしてくれる。というやりとりが非力だからこそ、自らが性能を引き出して走らせる、共同作業感が楽しいのだ。
直線を走らせるだけでも軽々と走る「トゥインゴ」との作業が心地よい。その理由は、やはり乗り心地のいいサスペンション性能とボディーの剛性感の存在も欠かせない。コーナリングも不安を感じないばかりか、4輪の踏ん張りはこのボディーにして少々オーバークオリティーではないかと思えるほど、信頼性も満足度も高い。ガチガチに固められた感は皆無だ。
しなやかにタイトコーナーをキュンキュンと走る「トゥインゴ」が愛おしいとさえ思えてくるほど、タフで頼もしく思った。このしなやかさを伴う安定感こそがフランス車らしさであり、ルノーらしさでもある。そんなドライブフィールを街中の実用性を重視したミニマムな乗り物で体感できるのだ。しかも「トゥインゴS」ならMTで。
「トゥインゴ」を知る人、もしくはルノーのクルマづくりをご存じの方なら、「美味しい(楽しい)に決まってる!」と想像を掻き立てられるだろう。一方で、それらを知らない人でも、MTモデルだからと言って、スポ魂を気取る必要もない。純粋にこの小さなクルマに小さなエンジンを搭載するモデルとのコミュニケーションを、手元のシフト操作で楽しみたいと思う人には癒し系モデルにもなりうる存在だ。
「トゥインゴS」は想像通り、万人に優しい存在となれるであろう、マニュアルミッション車だった。
■関連情報
https://www.renault.jp/car_lineup/twingo/gps/index.html#S
文/飯田裕子(モータージャーナリスト) 撮影/雪岡直樹